拠点をポートランドに移して作られた前作『Boo Boo』(2017年)は、自己喪失に陥ったチャズ・ベアーがセラピーで聴いていたアンビエントからの影響を反映させたもので、内省的と言える感触が確かにあった。それに対し、慣れ親しんだオークランドへ戻って制作されたこのアルバムは、気持ちを外に向けて作られたことがあきらか。2013年作『Anything In Return』の頃のディスコ/ブギー方向に回帰した部分があり、そのうえメロディアスな曲も多いとあって、非常にポップな印象だ。チャズのヴォーカル自体がいままでよりも力強く、オープナーではMJよろしく〈アオッ〉とシャウトしてみせたりも。女性R&B歌手のアブラやエレポップ・ユニットのウェットらとのコラボも功を奏した会心作である。