Page 2 / 3 1ページ目から読む

 この充実したオーケストラ・サウンドを支えているのが、テレビや映画の音楽でお馴染みの作曲家、山下康介を中心とするアレンジャー陣だ。

 「私なりの言い方でいえば、無駄のない〈風通しの良いスコア〉ですね。玉置さんがブレスをする間、アレンジャーの方々の発想でオケがふわっと出てくるところに非常に美しい瞬間が多いですし、オケならではの分厚いフォルテッシモが味わえる巧みな編曲です」

 こうした見事な編曲のなかでも、とりわけ公演を盛り上げていたのは97年の6thアルバムのタイトル・チューン“JUNK LAND”である。

 「それまではスローでリリカルな曲が多かったんですけど、“JUNK LAND”で早めのテンポになって、オケでもヴィオラがノリの良いフレーズを繰り返しながら、玉置さんとギブ・アンド・テイクしながら歌いやすいテンポをつくっていくんです」

 どちらかが合わせるのではなく、互いを高め合う最上の関係を発揮できていることが、湯浅の言葉から伝わってくる。もちろん他にも、バンド安全地帯での代表曲である“ワインレッドの心”や、ソロのヒット曲“行かないで”など、玉置のこれまで手がけてきた数々の名曲が、新鮮に生まれ変わっていくのだから、ファンならずともたまらない。玉置自身「音楽の宿命的出会い」と語っているのは決して大袈裟ではないのだ。