音楽ライターの南波一海がタワーレコード内に設立したアイドル専門レーベル、PENGUIN DISCの看板4人娘=RYUTistが、ニュー・シングル“センシティブサイン”を4月23日にリリースした。表題曲は21歳のシンガー・ソングライター、シンリズムが作詞・作編曲を担当。さらに、カップリングの“素敵にあこがれて”はカメラ=万年筆/Orangeadeの佐藤望が作詞・作編曲、“バ・バ・バカンス!”はmicrostarとWack Wack Rhythm Bandが共作と、ポップ・ファン垂涎の3曲を収めたCDになっている。

RYUTist センシティブサイン PENGUIN DISC(2019)

Mikikiでは同シングルのリリースを記念し、プロインタヴュアーの吉田豪がメンバーひとりひとりに個別インタヴュー! 横山実郁編宇野友恵編に続く第3回は、リーダーである佐藤乃々子編を掲載する。アイドルを始めたきっかけから、高橋みなみや℃-ute・矢島舞美、ももいろクローバーZ・百田夏菜子ら佐藤の思う理想のリーダー像にRYUTistの今後の展望まで、グループを率いる最年長メンバーが心の内を明かしている。 *Mikiki編集部

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(左から)RYUTistの五十嵐夢羽、宇野友恵、インタヴュアーの吉田豪、横山実郁、佐藤乃々子

 


 

〈よくアイドルできたね〉って言われます

――緊張してますか?

「もう3時間くらいずっと緊張してます……」

――長い! まず自分の性格を分析すると、どんな感じですか?

「何を考えてるか自分でもよくわからないのと、ちょっとまじめすぎる。私は悪い意味でまじめすぎるところがあるなって思います」

――悪い意味なんですね。

「はい。振りとか歌もキッチリしようとしすぎちゃって固くなったり、面白味が出にくいなって思ってて。もうちょっと柔らかく大雑把に考えられたらいいなって」

――その性格の人がリーダーをやった結果、RYUTistがまじめでちゃんとしたグループにはなってるけど、もうちょっとパンチが欲しいみたいな思いがあるんですかね。

「そうです、それがすっごくあります」

――子供の頃はどんな人でした?

「とにかく戦隊ものさんとかウルトラマンさんが大好きで。幼稚園のときも、どうしてもウルトラマンさんの鞄がよくて。でも、お母さんが〈キティちゃんにしなさい〉って言ってて、すごい泣いたのを覚えてます。部屋も全部ウルトラマンさんで揃えてて、どちらかというと男の子っぽい感じ。あと、お遊戯会でもぜんぜん笑わない。『ねずみの嫁入り』のねずみ役で主役だったんですけど、1回も笑わなかったです」

――それはなんでまた? 

「うまく笑えなかったんですよね。練習のときも先生に毎日〈笑わないと出られないよ〉って怒られてたんですけど笑えなくて」

――ステージで笑顔を出せないのって、アイドルとしては致命的ですよ!

「そうなんですよ、ホントに……。だから(幼稚園の)先生に会うと、〈よくアイドルできたね〉って言われます。小っちゃい頃からの写真を見ていくと、小学校2年生くらいでちゃんと笑えるようになってて、笑えるようになれてよかったです」

RYUTistのニュー・シングル“センシティブサイン”

 

とりあえず踊りたかった

――この仕事を始めようと思ったきっかけはなんだったんですか?

「ダンスがやりたかったんです。姉がダンスをやってて、姉が踊ってるDVDとか観て私も踊りたいなって思ってたんですけど、そのときは高校に入ったばっかりでバイトもできなかったので、レッスン代も払えなくて。だから高校卒業してからかなと思ってたら、新潟のお祭りでフライヤーをもらって。アイドル・アーティストのオーディションでダンス・レッスンが無料って描いてあったので、〈これだ〉と思ってダンスに興味がある友達と一緒に受けました」

――そしたら友達は?

「落ちちゃって私だけ受かって。半分受からないと思ってたんですけど、じゃあやってみようと思って始めました」

――アイドルをやりたいわけじゃなかったんですね。

「やりたくないわけでもなかったんですけど、とりあえず踊りたくて。始まりはなんでもいいかなと思って入りました」

――それで最初のメンバーが5人揃って。

「けっこう年齢が離れてるじゃないですか。むぅたん(五十嵐夢羽)とは5つ離れてて。最初に呼ばれたのがむぅたんとともちぃ(宇野友恵)とわっかー(大石若奈、2016年に卒業)の小っちゃい子組だったので、もう絶対に呼ばれないと思ったんですよ。その後に呼ばれたので、こんな小っちゃい子とやっていけるのかなって思いました。妹より下だったので。でも、最初は同い年の優里(木村優里、結成翌年の2012年に卒業)もいて、子供たちとワチャワチャしながら優里とお話ししたり、うまくやっていけたと思います」

――5人時代、いいバランスだったと思うんですよ。

「はい、同い年の優里がいたのでやりやすかったです」

――ところが、そのゆりり(優里)がすぐにいなくなっちゃうわけで。

「はい、いきなりでビックリしました。ぜんぜん考えてなかったというか、誰かが卒業するって頭にかけらもなかったので。話も何も聞いてなかったので動揺しましたね」

――相談とかもぜんぜんなかったんですね。

「なかったです。優里がいろいろ考えてるときに、私は修学旅行かどっか行ってたんですよね。で、連絡も取れなくて、帰ってきたら卒業が決まってて。レコーディングの前に私はマネージャーさんから話を聞いちゃってたから、ショックでレコーディングの記憶がないですね」

――同い年の子がいるから成立してるようなバランスだったのが、〈これからは子供3人と一緒にやってください〉ってことになって。

「やっぱり優里と私と子供組っていう感じだったので心配でしたね、これからどうやっていけばいいんだろうって。むぅたんも優里のことすごく慕ってたので、それも心配でしたし。むぅたんがやりにくかったらどうしよう、とかもありましたけど、誰かが卒業するとその子のぶんを補おうとするのか、みんながどんどん大人っぽくなって成長していったので、やりにくいなっていうのは意外とあんまりなかったですね」

――ゆりりは話しやすかった印象があります。

「そう、みんな言ってました。フレンドリーでイケてる感じの(笑)。優里は1人だけ違う感じがしましたね、元気な感じで」

 

RYUTistは謙虚で抑え気味なところが新潟っぽい

――その結果、大人な乃々子さんがリーダーとしてまとめていかなきゃいけなくなって、悩んだりはしたんですか?

「しましたね……。いまは悩んでないんですけど、リーダーってやったことがなかったので、みんなにもっと怒ったほうがいいのかなとかすごい考えて。私はあんまり言えないのでどうしようと思ったんですけど、スタッフさんが〈無理に怒らなくていい〉って言ってくださって、それでちょっと肩の荷が下りた感じがしました。怒らなくてもちゃんとしっかり言えば伝わるし、怒ったから伝わるってわけじゃないから、私なりの口調で伝えることは伝えて、あとは穏やかに進んでいこうかなって」

――ボクの持論で、アイドル・グループはリーダーのキャラクターがグループの空気を作るっていうのがあって。RYUTistのこの空気感は、乃々子さんのそういう姿勢で作られたものだと思うんですよ。

「へーっ、あんまり思ったことないです」

――その結果、この平和なグループになったってことで。

「平和ですね、よかったです」

――RYUTistはなぜこの平和な空気を保ててるのかが、ホント不思議なんですよ。運営の安部(博明)さんとか比較的アウトロー寄りな人じゃないですか。

「フフフフ、そうですね」

――配信を観慣れてる人はいいですけど、初見だとハラハラすると思うんですよね。

「フフフフ、アーカイヴ残せないのがいっぱいある(笑)」

――それでなぜこの空気が保ててるんだろうって。

「なんでだろう? 我が我がって人があんまりいないからかな? ともちぃはちょっとあるかもしれないですけど、みんな譲り合ったり、メンバーの周りの子のことを優先して考えたり、ホントいい子たちなので。だから平和なんじゃないですかね。前に出なさすぎてよくないことはあったんですけど、みんな謙虚というか抑え気味なところが新潟っぽくて平和なのかなと思います」

――ただ、抑え気味なままでいいのかなという思いもある。

「ありましたね。ステージでトークしててもどんどんうしろに行っちゃったりとかよくあるので、もっと前に前にっていう精神も大事だなって思います」

――新潟の県民性なんですかね? Negiccoさんも比較的うしろに下がりがちなタイプなので。

「そうなんですか? (新潟・The)PLANETさんでライヴしてたときも、アップアップガールズ(仮)さんが……」

――あの人たちは前に前に出る人たちですね(笑)。

「ホントにギリギリで前まで出られるので、それを観て私たちももっとギリギリまで出ようってことになったんですけど、いつの間にかまた下がるようになってて。〈前へ前へ精神〉はちょっと持ちたいですね」

――アプガはハロプロ(ハロー!プロジェクト)から一度見放された人たちだから、黙ってたら埋もれちゃうし、とにかく何かするしかないってことなんでしょうね。

「そっか……。私たちは4人がそういう感じだから」

――誰かが1人だけ〈はーいはーい!〉って前に出ることもなく、〈これでいっかー〉と。

「そうなっちゃうんだと思います」

みくちゃんが入ってくれたのは、すごく救われました

――結果、それがいいほうに出てるとは思いますよ。RYUTistで一番の波乱は、わっかーの卒業なんですか?

「そうですね。それもホントにビックリしました、何も聞いてなかったので。私より年下の子が先にいなくなると思ってなかったのでビックリして。それと同時にみくちゃん(横山実郁)の加入も聞いたので複雑で。わっかーの卒業ってだけだったら、私はもう悲しみにふけってそのままズーンだったんですけど……」

――〈私がもうちょっとリーダーとしてちゃんとしてたら、こんなことにはならなかったかもしれない〉とか。

「それは思いましたね。でも、みくちゃんの加入もあるって話をすぐ聞いて、それで希望が持てたというか。ソロでやってたみくちゃんも見てて、明るいしすっごいかわいいしキラキラしてるし、全国レベルの子だなって思ってたので」

――全国レベル!

「私たちはちょっと田舎な感じというか素朴な感じ? それが自分たちでもわかってたんですけど、みくちゃんがソロでやってるときは都会っ子のイメージがあって。そんなキラキラした子が入ってくるんだと思うと、もしかしたらRYUTistもパワーアップするんじゃないかなっていう希望もあって。なので、みくちゃんが入ってくれたのはすごい救われましたね」

――うまいやり方だったと思いますよ。

「そうですね、フォーメーションも4人そのままできたし。みくちゃんは覚えるのすごいたいへんだったと思うんですけど、入ってくれてよかったなって思います」

――グループとしてもいい空気になってきたというか。

「変わりましたね。すごい元気だし。ホントに最初だけ遠慮してたんですけど、1か月後ぐらいにはどんどん(こっちに)来る感じになっていっぱい話してくれたし、ずっと笑ってるし。私たち、前は楽屋にいてもあんまりしゃべらないでおとなしくしてたんですけど、みくちゃんが入ったら〈マジカルバナナしよう〉とか、とにかくゲームしたがるようになって。会話も増えたし笑うことも前よりさらに増えたなと思って、メンバー内の雰囲気も明るくなりましたね」

――何がプラスに転がるかわからないもんですよね。

「そうですね。みくちゃん、よかったです。トークもだんだん柔らかくなってきましたね。もともとトークが得意だったのか、みくちゃんはソロのときMCですごいしゃべってたんですよね。怒られるくらい長く。そういう経験もあったせいか、どんどんしゃべってくれるのでMCでも助かりました」

――その結果、メンバーの関係性も変わっていって。

「はい、変わりました。とにかく明るくなりました」