できることすべてを出し切ったアルバム

――そこでようやくアルバム『CARROTS and STiCKS』の話ですが、これは一言にまとめるとどういう作品でしょう。

アユニ・D「〈これがBiSHの全て〉……って資料に書いてある。この説明はチッチができます」

チッチ「投げられた(笑)。でも、まさにその通りで、いままでBiSHが身に付けてきたBiSHができることすべてを出し切ったアルバムだと思ってます。音楽の歴史の中でいろいろ当たり前なものがたくさんあって、それを壊してきた人が凄い伝説になるじゃないですか? ブルーハーツとかHi-STANDARDとか。そういう人たちみたいな存在にBiSHもなれたらいいなって思ってるんですけど、今回のアルバムは〈BiSHの当たり前〉をブチ壊した一枚になってて、〈BiSHってこういうものだ〉っていま抱かれてるイメージもそうだし、いまの音楽、ロックの世界とかフェスの中の状況とか、すべてをブチ壊せる一枚だと思ってて、“遂に死”もそうだし、“FREEZE DRY THE PASTS”もそうだし、気味悪い部分を持ちながらも、同じ作品の中に凄く優しい曲もあったりとか、ちょっと懐かしい気持ちになる曲もあったりとか、こんなに振り幅が広い曲を一枚に入れられる人ってなかなかおらんのじゃないのかな?って」

――確かにEP2作の振り幅もデカかったけど、アルバム全体ではさらにそうなってますね。

アイナ「ジェットコースターみたい(笑)」

チッチ「聴く人もついていくの大変かもしれないけど、いまBiSHができることを詰め込んだ、最強なアルバムだと思ってます」

――はい。現時点での集大成ということですね。ではアルバムの新曲についてですが、まず、オープニングの“DiSTANCE”がMVもあるリード曲ということで。

アイナ「『CARROTS and STiCKS』の14曲の中ではラスボス感があって、私は凄い好きなんですけど、たぶん全曲を聴いた人はこれがラスボスだって思うんじゃないかな。誰もが認めるリード曲だと思います」

――この曲を筆頭に、JxSxKさんの作詞が凄く多いというか、前作『THE GUERRiLLA BiSH』と比べて今回は皆さんの作詞が減りましたね。

アイナ「本気のアルバムなので、JxSxKさんも気合いがモリモリで」

チッチ「書きたくなっちゃったんだと思います」

モモコ「うん。書きたくなっちゃったっていう気持ちが凄い出てる気がする(笑)」

アイナ「メンバーも書いたんですけど、やっぱり渡辺さんには敵わんくて、全員書いたけど不採用になった曲とかもあります」

――今回はどこか作詞した方の寂しさが伝わってくるような雰囲気を感じました。

アイナ「ああ、凄いですよね」

チッチ「渡辺さんってその時の感情で書くこともあれば、曲の世界に寄り添って誰かになりきって歌詞を書くのも凄い上手なんですよ。それが今回凄い活かされてるんじゃないかなって思うんですけど、すべてを通して、何か、光を掴みきれてない感じが渡辺さんっぽいし、BiSHっぽいなって思いましたね」

――そうですね。TVアニメ「FAIRY TALE」のオープニングテーマになる“MORE THAN LiKE”もめちゃくちゃキャッチーで良い曲ですけど、やっぱりちょっと寂しそうで。

チッチ「何か切ないですよね。オケだけでも切ないのに、歌詞が混ざるとそれが凄く増して、ズサズサ刺さりそうな歌だなって思うし、ライヴでやったらまた変わるんじゃないかなって。これはまだ歌詞が付いてないデモを聴いた時に、初めて“オーケストラ”のメロディーをもらった時の感覚になったんですよ。“オーケストラ”みたいに愛される曲になったらいいなって凄い思ってます」

――そんななかでモモコさんは“CHOP”を作詞されています。

モモコ「“CHOP”はデモを聴いて、これならスラスラ書けるって思って、頼まれてないのに締め切りより前に送っちゃって、それで決まりました。曲調的には『STiCKS』に入りそうなディストーションのかかった感じですけど、そこまで鋭いとか暗いイメージでもないから、中間みたいな位置というか」

――デモの段階から、こういうデジロックみたいな感じだったんですね。

モモコ「そうです、ガチャガチャしたうるさいオモチャ箱みたいな感じで、〈あ、何かBiSHの楽屋っぽいな〉って思ったんですよ(笑)。あの、カラフルで楽しそうでポップな感じもあるので、テーマ的にはBiSHの楽屋って感じになりました。6人がいて、好き勝手やってて、周りは敵ばっかりのような気がして、息しづらいな、傍から見たら楽しそうなんだろうな、でも最後みんな一緒に笑えたらいいな……みたいな願いも込めております。凄い楽しい曲になったと思います」

――さらにリンリンさんが“O・S”を作詞されています。これは〈オー・エス〉?

リンリン「〈オーバーソウル〉です。『シャーマンキング』っていうマンガの術?みたいなものなんですけど。そのマンガのキャラクターがめっちゃ良い人ばっかだから自分のダメなところがいっぱい見えてきて、そこで感じたことを書きました。前に“S・H・i・T”の時にも、同じようなことを伝えたい歌詞を書いてダメだったんですけど、でもいまいちばん書きたいことだったんで、また書きました」

――こだわりのテーマだったんですね。で、さらには“アイデンティティ”です。

アツコ「アメでもなければムチでもない、アルバムではちょうど中間、色で言うと灰色な曲かなって思ってます」

アイナ「歌詞が凄い好き。〈クソみたいな世界 素手でなんとか壊してみたい〉って、作り上げてきた世界を壊すのって勇気のいることだけど、そうしないと新しいものが見えなかったりするから、この歌を歌ってる時とかは自分が自分に勇気もらってる感覚になります」

チッチ「私これ、〈タラララッ、タラララッ〉って音の入るアレンジがめっちゃ好きで、凄い好きだからがんばって歌ったけど、思ったようにできなかった(笑)。実はこの曲だけ少し前に録ってたんですよ」

アツコ「去年とかだったかな?」

――そうなんですね。で、ラストに問題作というか、渡辺さんが初めて作曲もされた“GRUNGE WORLD”ですね。

チッチ「問題作(笑)」

モモコ「そんな位置付け」

チッチ「“GRUNGE WORLD”は歌うのが凄い難しくて、1番と2番でAメロが全然違うんですよ。その2番の部分を渡辺さんが凄いこだわって作ってたので、自信作というか特にお気に入りみたいなんですけど、難しかったぶん凄いカッコイイ曲になって。“Life is beautiful”でもやったシャッフル・ビートで、ラップみたいな歌い方を初めてちゃんと本格的にやれて、これもBiSHの新しい表情になったかなって思います。懐かしい感じもあるので、この曲はおじさんとかもたぶん好きだと思うんですよ。おじさんって言ったらアレですけど(笑)」

――(笑)BiSHのアルバムは毎回ラストの曲が特に大事な印象ですけど、これが最後にあることによって良い後味がします。

チッチ「はい。ちょっと力の抜けた感じが他の曲にはないので、そこが良いポイントになってるなって。夏にピッタリの感じもするので、このアルバムが出て夏を共に過ごしてくれたらいいなって思います」