さあさあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。2008年の設立以来、世界中の良質なアイリッシュ/フォーク・パンクを日本に紹介し続けるUNCLEOWENがタワレコとタッグを組み、このたびコンピ『Folk Rock』を発表しましたよ。まずは、タイトルに掲げた〈Folk Rock〉とは何ぞや……みたいなことを簡単に整理しておきましょうか。ここで言う〈Folk Rock〉とは、バグパイプやフィドル、バンジョーにマンドリン、ブズーキ、バウロン、アコーディオンなどなど、各地のフォークロア楽器をパンキッシュに活用し、その土地土地の伝承音楽をモダンに継承するロック・サウンドのことを指しています。早い話、異国情緒をたっぷり感じながら、めちゃくちゃ踊れて、めちゃくちゃ騒げる楽曲がまとめられた一枚というわけですね。
〈フジロック〉の会場で並みいる大物アクトを押さえてCDのセールス記録を更新したレーヴェンをはじめ、オンダ・ヴァガやスキニー・リスター、フィドラーズ・グリーンといったレーベルの顔役はもちろんのこと、年内にUNCLEOWENより日本デビューを予定している注目のアーティスト(バスティアン・ベイカーやバーバレラス・バン・バン、ヤルタ・クラブ)がいち早くチェックできちゃうところも本作の大きなポイント。過去の流れを踏まえると、近い将来、このなかから日本の大型フェスを荒らす輩が登場することはまず間違いないでしょう。
とにもかくにも、合計14曲に参加したメンバーは100名以上、9つの国を跨ぎ、使われている楽器の種類は80種類超え!──数字だけ見ても賑やかな様子は伝わるかと思いますが、百聞は一見にしかず。あなたはこのパーティーを遠くから眺めているだけで満足できますか!? *山西絵美
▼関連作品
左から、レーヴェンの2011年作『Svensk Kultur』(Rafven)、オンダ・ヴァガの2013年作『Magma Elemental』(Onda Vaga)、スキニー・リスターの2013年作『Forge & Flagon』(Sunday Best)、フィドラーズ・グリーンの2013年作『Winners & Boozers』(Deaf Shepherd)
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コンピ『Folk Rock』に収録された全14曲の魅力を一気に紹介しよう!
文/吾郎メモ
1. ALLY BAND “The Clumsy Lovers”
女性バグパイプ奏者のALLYを中心とした日本人インスト・バンド。本場スコットランドで学んだというバグパイプの超絶テクニックが聴きどころで、パンク的な雰囲気のあるバック演奏がそうさせるのか、スピード感と勢いと楽しさがあり、〈これから何か始まるぞ〉というオープニングの雰囲気にピッタリ。
2. SKINNY LISTER “Merry Old Dance”
昨年の〈フジロック〉に連日出演したことで日本でも知名度を上げた、〈UKでもっとも忙しいバンド〉との異名を持つ彼ら。場所を選ばずいつでもライヴを演っちゃう気軽さと、初期ポーグスのような素朴なパンク感&サビのシンガロングな感じが素晴らしい。最近ドラマーが加入し、さらにパワーアップしている模様。
3. BASTIAN BAKER “79 Clinton Street”
2月の来日も記憶に新しいスイスのシンガー・ソングライター。ヨーロッパではすでに高い支持を集めていて、本コンピをきっかけに日本でもファンが増えるといいな。ポップなメロディーを、少しトラッド感のある演奏で展開。ソロ名義だけど、ライヴは本人のアコギを中心としたバンド編成で行っている。
4. FIDDLER'S GREEN “The More The Merrier”
90年代初頭から20年以上に渡って活動しているドイツのヴェテラン・バンド。みずからの音楽を〈スピード・フォーク〉と形容しているだけあって、ハードなギターを軸にしたスピード感溢れる爽快な演奏と、みんなで歌えるドラマティックなメロディーが熱い! そんなアイリッシュ・トラッド・パンクはライヴ映えも必至だ。
5. BARBARELLA'S BANG BANG “Here And Now”
ロンドン発、女性シンガーのバーバラを中心に結成された、アコーディオン、アコギ、ウッドベース、カホンという構成の5人組だ。同曲はジプシー・ミュージック色が濃く、路地裏の酒場に似合いそうな雰囲気。まだ情報解禁前だけど、近いうちに来日の知らせが届くはず。さらに、年内には待望のアルバムも!?
6. ONDA VAGA “Vayan A Ser”
前夜祭を含む9つのステージに出演し、2012年の〈フジロック〉で多くの人がベスト・アクトに選んだアルゼンチンのバンド。アコギ、クアトロ(南米の4弦楽器)、トランペット、トロンボーンという編成で、フォルクローレの現代的な解釈とも言える楽曲を披露している。もともとマヌー・チャオに見い出され、世界的にも人気者だ。
7. CRASH NOMADA “Drar Harifran”
日本人の女性ベーシストも在籍している、スウェーデンはストックホルムのジプシー・パンク・バンド。ここではゴーゴル・ボルデロに通じるようなロックを鳴らしているんだけど、彼らよりも多様なサウンド要素が混ざっていて奥深い。でも難しいことは抜きに、〈楽しく踊ってもらう〉というのがモットーらしいです。
8. RAFVEN “Kajutan Blues”
ライヴの上手さは2009年の〈フジロック〉でも証明済みの、スウェーデンが生んだジプシー・パンクス集団。フィドル、アコーディオンに加えてブラスが大きくフィーチャーされているのが印象的で、このコンピ収録曲はファンファーレ・チョカリーアがフォーク化したような仕上がりに。
9. Mr. HARIS PILTON & GYPSY SOUND SYSTEM “Scat Woman”
スイスのDJ/クリエイター・ユニット。バルカン・ビート系のサウンドを得意とし、ヨーロッパではDJクリックと肩を並べるほどの人気なんだとか。今回のナンバーではブラスバンドのトラクトルケスターをフィーチャー。音圧が高めで、パンチも効いていて、めちゃくちゃゴキゲンです。
10. YALTA CLUB “What's Comin' After”
さまざまな国の音楽がクロスオーヴァーするパリに在住。ごく普通のバンド形式で演奏することもあれば、民俗楽器やトイ楽器を用いることもあり、電気のあるなしに関わらず、環境に合わせて編成を変えながら身軽にライヴ活動を展開している。本コンピには大コーラスと手拍子に心が和む牧歌的なレゲエを提供。
11. PERHAPS CONTRAPTION “Cousin / Grandma”
ロンドンで活動する男女混合8人組。中世ヨーロッパを思わせるレトロな衣装に身を包み、旅楽団のイメージでジプシー・ブラスを基調にしたサウンドを鳴らしている。路上演奏も得意とするところで、その見た目の楽しさとお祭り的な雰囲気から〈グラストンベリー〉などの巨大フェスにも呼ばれる注目株だ。
12. SIR REG “'Til The Dead Come Alive”
アイリッシュ・パンク・シーンでは常に高い人気を誇るスウェーデンのバンド。ヴォーカルはダブリン出身で、生粋のアイリッシュなのだが、バンドを組むため同地に渡ったという。本作では勢い任せのストレートなパンク・ロックをブチかましているが、郷愁感のあるフィドルがそこに個性をプラス。
13. HAPPY OL' McWEASEL “Hairy Grizzly”
スロヴェニアの7人組。ドロップキック・マーフィーズやフロッギング・モリー直系とも言えるサウンドを身上とし、カラッとした男臭さのある雰囲気がカッコイイ。パンキッシュなエレキ・ギターにバンジョーやフィドルといったアコースティック楽器が絡み、毎度ライヴ会場はモッシュ大会と化してしまう。
14. DREAM CATCHER “Nanana”
アコーディオンやフィドルを駆使し、アイリッシュ・フォークやドイツ民謡をロッキンに鳴らすルクセンブルグ在住のバンド。歌声は一聴するとソフトだが、内に秘めた熱さがじわじわ伝わってくる。ちなみに、この曲は地元のアスリートたちへ捧げた応援歌だそう。