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ワールドワイドな作家陣が参加した挿入歌アルバムの第2弾も登場! 楽曲を寄せたアーティストからのコメントも!

 スタイリッシュな音楽使いに定評のある渡辺信一郎監督が、17歳の女の子によるアコースティック・デュオ、キャロル&チューズデイを中心に〈音楽〉そのものを題材として制作したTVアニメ「キャロル&チューズデイ」。その挿入歌コンピの第2弾『CAROLE & TUESDAY VOCAL COLLECTION Vol.2』がいよいよ登場。第1弾と同じく錚々たる面々が劇中のミュージシャンに楽曲を寄せている。

VARIOUS ARTISTS TV animation CAROLE & TUESDAY VOCAL COLLECTION Vol.2 FlyingDog(2019)

 まずキャロル(歌唱:ナイ・ブリックス)とチューズデイ(歌唱:セレイナ・アン)の好敵手であるアンジェラ(歌唱:Alisa)の歌う楽曲としては、アリソン・ワンダーランドやスティーヴ・アオキ、モグアイらが送ったEDMポップ“Breathe Again”“LIGHTS GO OUT”が。いずれもキュート&昂揚感たっぷりにスターへの階段を駆け上がる彼女の姿を感じ取れる楽曲だが、その一方で、D.A.N.やヴァクシーンズのジャスティン・ヤングらはアトモスフェリックに沈む“Endless”、神聖な雰囲気を湛えたミディアム“The Tower”で当人の脆い一面も垣間見せる。強さと弱さを繊細に表現するAlisaの歌唱も素晴らしい。

 さらに、かつて絶大な人気を誇った歌姫のフローラ(歌唱:ジェシカ・カルポフ)のソウルフルなヴォーカルに惹き込まれる“Give You The World”やbanvox製のフューチャー・ベースがアーティガンの華々しいDJスタイルを体現する“Take Me Now”などが各キャラクターを際立たせるなか、ひときわ強い個性を放っているのが、マーカー・スターリングがヴォーカルを担うデズモンドの2曲だ。ジェンダーレスな魅力を湛える伝説的なアーティストが歌うのは、作詞をLEO今井、作/編曲を梅林太郎(milk)、ミックスをzAkを担当した“Miserere mei, Deus”とyahyelが手掛けた“All I See”で、前者は柔らかな響きをたなびかせる静謐なピアノの弾き語り、後者は内なるエモーションを厳かに解き放つスモーキーなエレクトロニック・ソウル。いずれもデズモンドの持つ神秘性を如実に映し出している。

 そして、主役のキャロル&チューズデイ。アンデイ・プラッツ(ママズ・ガン/ヤング・ガン・シルヴァー・フォックス)、エヴァン・ボガート&ジャスティン・グレイによるプロデューサー・コンビ、cero、アイリック・ボー(キングス・オブ・コンビニエンス)、アトランタを拠点とするクリエイターのセンセイ・ブエノ、アイザック・グレイシー、ティム・ライス・オクスリー(キーン)……と、多くの作家陣が彼女たちのナチュラルな佇まいとフレッシュな歌声を活かした楽曲を提供。とびきりサニーなギター・ポップ“Beautiful Breakdown”から、〈祈り〉を音楽として鳴らしたスロウ“Lay It All On Me”まで、ヴァリエーション豊かなナンバーが二人のさまざまな表情を引き出している。

 そうした全19曲を締め括るのは、舞台となる火星の政情の大きなうねりのなかで〈音楽の在り方〉を改めて示すゴスペルの如きアンセム“Mother”。VOICES FROM MARS名義である同曲は、物語の冒頭から言及されていた〈奇跡の7分間〉を表現した一曲で、歌い手として〈第1クール〉を含めた火星の主要シンガーたちが集結。その壮麗なマイク回しと、大いなる安らぎに包み込むような慈愛に満ちた歌世界には、物語を知らずとも心が震えること必至だろう。通して聴いた後には淡い幸福感が残る、〈アルバム〉として堪能してほしい一枚だ。 *土田真弓