砂原良徳 × LEO今井 × 白根賢一 × 永井聖一――説明不要な4人が試運転を経てついにアルバムを完成! マシーンと肉体を接続した強靭なグルーヴが独自の空間を創出する!

4人が共通して持つ熱量

 初めは〈TEST〉だった。METAFIVEの特別編成〈METAFIVE(砂原良徳×LEO今井)〉として、ドラムスに白根賢一(GREAT3)、ギターに永井聖一(相対性理論)を迎えてステージに立ったのが、一昨年の〈FUJI ROCK FESTIVAL ’21〉。そもそもMETAFIVEが、高橋幸宏のアイデアから始まった一時的なユニットのはずだったように、この特別編成もそう。ところが、当日のリアクションもさることながら、その後にフェスやイヴェントの出演オファーが相次ぎ、〈TEST〉を繰り返す機会を得た。

 「〈フジロック〉に出たときから、 やっぱりMETAFIVEとはちょっと違う感じになったんで、〈4人でやるんだったらもっとこういうことができそうだな〉みたいなのは、あの時に感じてはいました」(砂原良徳)。

 リアクションに応えていくなかでTESTSETへと名を改め、4人で作るオリジナル楽曲の必要性を感じた彼らは、昨夏にファーストEP『EP1 TSTST』を配信リリース。

 「あの時はね、オリジナルが1曲もないのはヤバいだろうって、急いでたから。とりあえず冷蔵庫にあるもので作れるものを作ろうぜっていう感じでしたけど、今回はちゃんと買い出しからやったという感じですね」(砂原)。

TESTSET 『1STST』 ワーナー(2023)

 その〈今回〉こそ、ファースト・アルバム『1STSET』だ。EPリリース後もステージを重ねながら、もはや〈TEST〉ではない意識で結束し、編み上げられた全10曲。砂原が織り成すエレクトロ・ビートと今井のエモーショナルなヴォーカルが個性の中心になりつつも、4人の感性、それぞれの見せ場がちゃんとあり、セッションでサムシングを共有したグルーヴは、聴き手を引き込む独特の空間を生み出している。

 「4人で共有してるものってなんだろうね。具体的に言語化するとなると、まだわかんない(笑)。でも、それがアルバムの形として出てるとも言える、とは思います。例えば、METAFIVEの時だったら〈YMO〉みたいなキーワードはあったけど、いまはそういう具体的なものって……ある?」(砂原)。

 「全体を通して共通するもの……そうですね、熱量みたいなものは感じますよ。それは全員が持ってる。みんな積極的に曲も書くし、こういうのもやりたい、っていうのが4人全員にある。みんなすごくノリノリな感じなのはね、あります」(LEO今井)。

 「あんまりそういうふうには見えない4人だけど(笑)。METAFIVEの場合は〈熱い〉っていうよりは、何でもパッとできちゃうみたいなところがあって」(砂原)。

 「あと、METAFIVEは人数も多かったから。そういう意味でTESTSETは、よりバンドらしいと思いますね。そうです、ロックです、ロック。これはこれでロック。そう思います」(今井)。

 

身体が動く楽曲

 そのロックな佇まいのなか、サウンドの筋として真ん中にドンと通っているのが、ファンク的な要素だ。

 「METAFIVEをやるときにも、ちょっと身体が動くような感じのことやろうよってすごく言ってたんですけど、 今回もわりとそうですね」(砂原)。

 「それは砂原さんの打ち込むビートとか、砂原さんの作るベースラインから来てる」(今井)。

 「そう? でも、いわゆるファンクとかファンキーとかっていう感じは、僕がそんなに深く関わってない曲でも出てる。“Over Your Self”(作曲は今井)とか、なんかドラムとギター録ってきたら、めっちゃファンクになってて。あっ、こうなるんだ!って感じだった。なんとなくそういうのもあるし、僕らはレコーディングだけやってればいいっていう感じじゃなくて、ライヴもやりたいので、やっぱり身体が動く楽曲のほうが適してるかなって思いますね」(砂原)。

 その“Over Your Self”は、本作中で唯一、いわゆる〈冷蔵庫にあったもの〉を有効活用してこしらえた曲だという。その後、アルバムを作ると決まってから最初に上がってきたデモが、ラストに置かれている永井の曲“A Natural Life”。やる気満々の永井は、さらにみずからヴォーカルを取る“Stranger”も書き上げた。

 「僕はアルバムを作りはじめる前から、永井くんがメイン・ヴォーカルを取る曲があったらいいなと思ってたんですよ。で、具体的に彼とそういう話はしてなかったんですけれども、自発的に、自分で歌いたいやつがあるからって。アルバムの中で唯一ロウテンポだし、日本語詞も入って、すごくいいアクセントになってる曲ですね」(今井)。

 TESTSETが備えているファンクネスは、いわゆる源流である70年代のソウル/ファンクというよりは、80年代の、ニューウェイヴ以降に現れた青い目のファンク(砂原や白根はリアルタイムで触れたであろう)に通じるものだ。

 「永井くんのギター聴くと、デュラン・デュランっぽいって思うときある。嫌いじゃないね」(砂原)。

 「あー、わかる。デュラン・デュランっぽいって言われても、悪い気はしないですよ」(今井)。

 「僕はスクリッティ・ポリッティとかすごく好きだから、全然意識はしてないんだけど、ひょっとしたら自動的にそれっぽいのが出ちゃってるところがあるかもしれないですね」(砂原)。

 

アルバムっぽいアルバム

 とは言っても、わかりやすくネタを放り込んでいるわけでもなく。もしこのアルバムに当時的な感覚があるとすれば、それはとてつもなく〈アルバムっぽい〉ということだろうか。静かな導入から徐々に高まっていく冒頭曲“El Hop”からぐっと世界が開けていく“Moneyman”への流れ、白根が書いたミディアム・ファンク“Dreamtalk”はLPでいうA面のラストに位置し、B面へと向かう前の息継ぎのような感覚の曲だし……しかもトータル時間が46分っていう、カセットテープのスタンダードな尺!

 「僕もそう思いました。アルバムの収録曲を決めるときは、野球の打順を決める感じにすごく近くて。ホームランバッターばかり9人いてもダメだし、とかね。 時間もびっくりしましたけど、カセットテープにぴったり。これはもうまったく何も意識してなかったですけど……もっと短くてもよかった?」(砂原)。

 「いや、ちょうどいいと思いますよ。曲を作っているときは、どの曲も濃い感じになってきたと思ったんですけど、アルバムになるとサクッと聴けちゃいました。聴きやすさは音圧も過剰に突っ込んでないっていうミックスの具合にもよると思うんですけれども、この長さもあると思います」(今井)。

 「普段は出来上がったらね、あんまり自分が作ったものって聴かないんだけど、今回はけっこう聴くかな。珍しいですね。マスタリングを納品した後もずっと何回も聴いてて」(砂原)。

 アルバム、46分……そうした往年のマナーが現代の感覚とミスマッチかと言えば、そんなことはない。

 「そうなんですよね。例えば、20代の人がTESTSETを聴いて、古いと思うかっていったら、たぶんそうは思わないでしょ。だって、何が古いかもよくわからないと思うから。古いと思われてしまうものって、リズムとか熱量の強弱とか、そういうところじゃないですか。20代の人とか、TESTSETをまったく聴かないってわけじゃないだろうし、そんなに難解なものでもないですから、深いとこまでわからなくても、これいいね!っていう感じで聴いてくれればいいですね」(砂原)。

 


PROFILE: 
永井聖一

ギター/ヴォーカル/プログラミングを担当。相対性理論のギタリストで、GREAT3やTHE BEATNIKSのサポートも務める。2023年よりQUBITに参加。

LEO今井
ヴォーカル/プログラミングを担当。シンガー・ソングライターとしてソロ作品を発表するほか、KIMONOS、METAFIVEなどのユニットに参加。

砂原良徳
シンセサイザー/プログラミングを担当。O/S/Tを経て2014年よりMETAFIVEで活動。プロデューサーとして活動するほか、近年はマスタリング・エンジニアとしても活躍している。

白根賢一
ドラムス/ヴォーカル/プログラミングを担当。90年代から活動するGREAT3をはじめ、LEO今井やTHE BEATNIKS、METAFIVEらのサポートも務める。manmancer名義でのソロ作も発表。

左から、相対性理論の2019年のライヴ盤『調べる相対性理論』(みらいレコーズ)、永井聖一が参加した吉澤嘉代子の2021年作『赤星青星』(ビクター)、Awesome City Clubの2021年作『Grower』(cutting edge)

左から、LEO今井の2018年のソロ作『VLP』、今井が参加した2021年のサントラ『Towako’s Diary -from 大豆田とわ子と三人の元夫』(共にコロムビア)、METAFIVEの2016年作『META』、同2022年作『METAATEM(Deluxe Edition)』(共にワーナー)

左から、砂原良徳の2001年作の新装リマスター盤『LOVEBEAT 2021 Optimized Re-Master』(キューン)、砂原が参加したTOWA TEIの2021年作『LP』(コロムビア)、砂原と今井が参加した藤井隆の2022年作『Music Restaurant Royal Host』(よしもとミュージック)、砂原がリマスターした山口美央子の83年作『月姫 40th Anniversary Edition』(ソニー)

左から、GREAT3の2014年作『愛の関係』(ユニバーサル)、白根賢一が手掛けたギャランティーク和恵の2022年作『5 CECCU』(モアモアラヴ)、砂原と白根と永井が参加したTHE BEATNIKSの2019年のライヴ盤『NIGHT OF THE BEAT GENERATION』(BETTER DAYS)