インタビュー

METAFIVEからTESTSETへ――砂原良徳とLEO今井が語る『1STST』という新天地

EXOTIC GRAMMAR 87-3

METAFIVEから新天地へ向かうTESTSETという名の電車
砂原良徳、LEO今井が語る1st『1STST』

 正式な結成は2022年だが、TESTSETにはプロトタイプが存在する。いうまでもなく前年のフジロックフェスティバル出演時のことで、彼らはまだMETAFIVEと名乗っていた――。高橋幸宏、小山田圭吾、砂原良徳、テイ・トウワ、ゴンドウトモヒコ、LEO今井からなるMETAFIVEの活動は2021年夏、中心となる高橋幸宏の病気療養で暗雲がたれこめ、東京五輪に端を発する小山田圭吾のいじめ問題の再燃で暗礁にのりあげつつあった。そこにコロナ禍が追い打ちをかける。2021年7月にリリースを予定していた2作目『METAATEM』は発売を中止(のちに同年11月の無観客ライヴの特典として発表)し、同月末の自主企画ライヴは中止となった。出演が決まっていたフジロックは特別編成で臨むとの周知もあり、METAFIVE総体がこのまま自粛モードへ収斂していくのかという漠とした不安があったればこそ、開催の是非を問う声をふまえてもなお、(私はPCの画面越しの視聴ではあったが、それでも)のっぴきならない思いを伝え来る、決然たる面持ちがうかがえたのである。

 舞台のうえにいた砂原良徳、LEO今井、白根賢一、永井聖一の4名、特別編成のMETAFIVEは翌22年、TESTSETに生まれかわる。後身の活動を本格的に開始した理由について、砂原良徳はリハーサルの時点で手応えを感じていたこと、METAFIVEの第2シーズンが(結果として)消化不良に終わってしまい、余力がのこっていたことをあげてながら、ことの顛末の以下のように喩えている。

 「海外旅行に行こうと思って、スーツケースのなかにいろいろ詰めこんで、さあ行こうか、という段階でやっぱり止めたとなってしまった。じゃあ目的地をちょっと変えてみようということですよね」

 新たな目的地はロックなのかエレクトロニックミュージックか、それとも人跡未踏の未聴の領域なのかはわからない。とまれGREAT3からソロプロジェクト、プロデュースや楽曲提供と多彩きわまりないドラマーの白根賢一、相対性理論のギタリストにして幾多の音楽的な抽出をもつ永井聖一と砂原+今井の布陣にはかつて耳にしたことのない化学変化を期待するに充分な潜勢力を秘めているかにみえた。白根、永井と砂原は高橋と鈴木慶一によるビートニクスのサポートなどで共演歴があり、手の内はいくらかみえていたとはいえ、平時でこの4人でやってみようということにはおそらくならなかった、と砂原は述懐する。いわば特殊な状況と事故のようななりゆきで生まれた非常時のグループがTESTSETであり、それにより彼らは存在としては流動性に、サウンドとしては例外性にひらかれていく。ところが作品がもたらす印象はMETAFIVEよりTESTSETのほうがよりバンドらしい。一体感が高まっているのである。そのことはアルバムという厚みのある形態においては疑うべくもない。

TESTSET 『1STST』 ワーナー(2023)

 ファーストアルバム『1STST』の制作がスタートしたのは2023年初頭。ゆっくりはじまり、途中サクサクすすみ、後半詰まった、と砂原は制作過程をふりかえる。とはいえ各自が楽曲をもちより、個々のメンバーの手を経て完成にいたるプロセスはMETAFIVEとほとんど変わらない。他方、楽曲のイニシアチヴを作者がとっていたMETAFIVEにたいしてTESTSETでは砂原がサウンドの最終的な調整役をうけもったという。しからばTESTSETのリーダーはまりん氏なのか。

 「TESTSETにはリーダーというものが存在しなきゃいけないとは考えてないんですけど、制作の後半はスタジオ作業になっていくので私の作業の比重が大きくなるんですね。(音の)バランスをみるのも自分の仕事だと思っている部分もあります。基本的に運転手はLEOくんで私が車掌みたいな感じなのかもしれません」

 ふたりのあいだに白根、永井両名をはさんだ電車ごっこの図が不意にうかんで眩暈がしたが、運転手のLEO今井は高橋幸宏とともにフロントに立っていたMETAFIVE時代に較べて、負担を感じないのだろうか。

 「TESTSETでは歌うパートがちょっと増えた感じはありますけど、METAFIVEでも、この曲はギター、この曲はシンセという曲があったかと思えば、カウベルに命をかけるような曲もあったので、けっこう忙しかったんですね。これからは曲によってはヴォーカルに専念したり、演奏するのもシンセにとどめたり、もうちょっと平等に、ビジーさをちょっと解消させようかなと思っています」

 今井の回答はグループ内での自身の立ち位置ばかりか関係性の変化をほのめかしている。「平等」の弁は砂原の発言における序列の不在ともかさなりあう。明確な記名性の合算から分業体制による諸力の乗算へ。先に述べたバンド的な一体感もこのような変化に由来するのだろうし、『1STST』はその最初のまとまった報告といっていい。