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TOWA TEIの94年をビームス青野賢一が振り返る。クラブから『Future Listening!』への歩み

TOWA TEIの94年をビームス青野賢一が振り返る。クラブから『Future Listening!』への歩み

次の一歩に期待が膨らむ、TOWA TEIの25周年

 DJ、プロデューサー、アーティストのTOWA TEIが、ソロ活動25周年を記念してアルバム2タイトルをリリースする。一つは『Future Listening!』のアナログ重量盤2枚組。『Future Listening!』は1994年にリリースされたアルバムで、TOWA TEIのソロ・アーティストとしてのキャリアの第一歩となった作品だ。

TOWA TEI Future Listening! コロムビア(1994)

 1990年のシングル「Groove Is In The Heart」とそれを含むアルバム『World Clique』が大ヒットを記録したニューヨークのグループDeeee-Liteの一員であったTOWA TEIだが、『World Clique』リリース直後、ライヴ中にステージから落ちて負傷、マッサージをはじめとするリハビリテーションを余儀なくされた。1992年のセカンドアルバム 『Infinity Within』リリース後の漫画家・岡崎京子との対談(初出は1993年『クイック・ジャパン』創刊準備号「’90年代“楽勝”宣言」、2015年岡崎京子『レアリティーズ』に再録)では「最近は、気持ち的にすごく楽で、『楽勝!』って感じですね。いま、アルバムをつくったら『楽勝!』ってタイトルになるんじゃないかな(笑)」と楽観的な印象の発言も見られるが、怪我とそこから来る音楽の聴き方の変化──クラブミュージックからリスニングミュージックへ──、そしてそうした変化とDeeee-Liteに求められる音楽とのギャップなども相まって、TOWA TEIは3作目『Dewdrops In The Garden』(1994)をもってDeeee-Liteを離れることとなった。

 『Future Listening!』は「クラブミュージックからリスニングミュージックへ」というTOWA TEIのスタンスを楽曲として明確に提示したアルバムである。リリース当時の音楽シーンについて少し触れておくと、まずアンダーグラウンド・クラブ出自のハウスミュージックがポピュラーミュージックのフィールドに取り入れられるようになった。チャカ・カーンの《I’m Every Woman》をホイットニー・ヒューストンがカヴァーした12インチ・シングル(1993)や、ジャネット・ジャクソン《That’s The Way Love Goes》の12インチ・シングルなどがわかりやすいところだろうか。また、ヒップホップやR&Bといったブラックミュージックがメインストリームにのし上がったのもこの頃の特徴といえるだろう。そんな中、TOWA TEIが提案した『Future Listening!』は、時代のトレンドと距離を取りつつ、クラブミュージックの先進的な精神性やテクノロジーをしっかりと組み込み、どこか懐かしさもありながらその懐かしさがパラレルワールドからやってきたかのような印象を醸す作品で、実に新鮮に響いたものだ。これまで『Future Listening!』は何度かリイシューされているが、今回はMETAFIVEの盟友、砂原良徳がリマスタリングを担当。ボトムのスピード感が向上し、今の耳に心地よいサウンドに仕上がっている。

TOWA TEI Arbeit Columbia(2019)

 もう一つのリリース作品である『Arbeit』は、TOWA TEIが手がけたプロデュース作やリミックスワークを30曲セレクトし、2枚組CDにまとめたもの。YMO《BE A SUPERMAN》、GEISHA GIRLS《Kick & Loud》、今田耕司がKOJI12000名義でリリースした《ナウロマンティック》、Björk《Hyper-ballad》などTOWA TEIワークの代表作から、CHARA、nokko、小泉今日子といったポップスフィールドのアーティストとの仕事も収められており、「外仕事の集大成」と呼ぶにふさわしい内容である。

 また、このアルバム2タイトルリリースに加えて、11月9日より5年ぶりとなる個展『GLUE SCISSORS』が南青山の「hpgrp GALLERY tokyo」で開催される。7インチ・12インチのアナログレコードの中袋を用いたコラージュ作品が並ぶということで、TOWA TEIらしさが存分に詰まった展示になりそうだ。四半世紀という節目を経て、これからの活動に期待を膨らませずにはおけない、この秋のTOWA TEIである。

 


テイ・トウワ(Towa Tei)
1990年にDeee-Liteのメンバーとして、アルバム『World Clique』で全米デビュー。現在、9枚のソロアルバム、3枚のSweet Robots Against the Machine 名義、METAFIVEのファースト・アルバム等がある。その他に、2013年9月から現在に到るまで、東京・青山にあるINTERSECT BY LEXUS -TOKYOの店内音楽監修。2017年、オリジナルアルバム『EMO』をリリース。NHKドキュメンタリー番組「草間彌生 わが永遠の魂」の音楽を担当。2018年、YMO結成40周年アルバム「ノイエ・タンツ」企画監修デザインなど。

 


EXHIBITION INFO

テイ・トウワ個展「GLUE SCISSORS」
○11/9(土)~11/30(土)12:00~20:00
【定休日】日曜・月曜 (11/10(日)を除く)
【場所】hpgrp GALLERY Tokyo
〒107-0062 東京都港区南青山5丁目7-17 小原流会館 B1F
https://hpgrpgallery.com/tokyo/

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