さまざまな〈タッチ〉から生まれた新作

 TOWA TEIの新作『TOUCH』には、様々な〈タッチ〉が秘められている。まずアルバムの出発点は、TEIの日々の生活には欠かせない〈タッチ〉だった。

 「この2~3年は外出を控えて、家で毎日レコードを注文して、一日中、レコードに〈タッチ〉していました。レコードを聴くことが創作に繋がるんです」

TOWA TEI 『TOUCH』 コロムビア(2023)

 そして、世界中から取り寄せたレコードを聴きこんだことが、新作に様々な形で反映されている。例えば清水靖晃がサックスで参加した“HOLD ON!”では、サックスがエキゾチックな旋律を奏で、ゲストの細野晴臣が「Hold on! Wait a minute」と呟く。

 「この曲を作っていた時は、エチオピアの音楽にハマっていて、それを清水さんに伝えて自由に吹いてもらったんです。そして、最近の世の中は〈ちょっと待ってよ〉と思う出来事が多いので、細野さんに〈Hold on!〉と言ってもらったんです」

 また、TUCKERが鍵盤を弾きまくる“AKASAKA”は、オルガンものを集中して聴いていた頃に時に作った曲だという。そんな風にレコードから受けた刺激を独自に昇華。「パンデミックでライヴやDJができないなか、曲を書くことだけがリスナーと〈タッチ〉できることでした」と振り返る。そして、曲作りに集中したことで『TOUCH』はこれまで以上にTEIの独創的な音のコラージュ・センスがじっくり味わえる作品になった。

 「自分の作品の〈タッチ〉を追求した作品になったと思います。絵でいうと〈筆致〉。いろんなレコードから刺激を受けて、どこにもない、自分が聴きたい音楽を作ることが僕にとって作曲の醍醐味なんです。こんな音のバランスでできたアルバムは他にはない、という自負はありますね」

 またアルバムには、高橋幸宏が歌う“RADIO”の新ヴァージョンが収録されているが、今年に入って高橋や坂本龍一といったTEIがリスペクトする先輩が相次いでこの世を去った。そんななかで発表された新作の充実ぶりを聴くと、TEIが先輩たちから「後はよろしく」と〈タッチ〉されたようにも思えた。

 「アルバムが完成した後、お2人が亡くなってしまって。これから自分の音楽が大きく変わっていくような気がします」と語るTEI。YMOから受け継いだテクノ・ポップの魅力と可能性をアップデートさせた面白さも感じさせる本作は、新たな代表作になりそうだ。

 


LIVE INFORMATION
TOWA TEI TOUCH RELEASE PARTY

2023年9月8日(金)東京・ZERO TOKYO

EPOCHS~Music&Art Collective~
2023年10月1日(日)長野・ライジングフィールド軽井沢

TTTB
2023年10月21日(土)京都・KYOTO METRO