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スティーヴ・レイシー『Apollo XXI』 インターネットのギタリストがプロデュース活動の傍らで作り上げた才気漲るソロ・デビュー・アルバム

Photo by Alan Lear

ジ・インターネットのギタリストがプロデュース活動の傍らで作り上げた才気漲るソロ・デビュー・アルバム

 ジ・インターネットのギタリストでケンドリック・ラマーやソランジュなどの革命的なアルバムに関与し、iPhoneにギターを繋いでビート・メイクをするという新世代感が強調される21歳の若き才能。そんな謳い文句も魅力だが、そうした情報がなくても、2017年のEPに続くこの初フル・アルバムは、フィールドを超えて活躍する尖鋭的なポップ・メイカーとしての才気を感じさせてくれる。

STEVE LACY Apollo XXI 3qtr/BEAT(2019)

 妹の部屋をスタジオ代わりにして、多忙の合間を縫って録音したという楽曲は、リズム・ボックスを用いたスロウ・ジャムの先行カット“N Side”を含めて、音数の少ないビートにドライなギターとアンニュイなヴォーカルを乗せたもの。エレキ・シタールの音を鳴らした“Only If”を筆頭に、直情的なギター・ソロを披露する“Love 2 Fast”やローファイな質感の“In Lust We Trust”などに漂うサイケな音像はインディ・ロック~サーフ・ロック的で、歌詞にはバイセクシュアルである彼の孤独や優しさも滲む。ギターがグルーヴする“Playground”やミッド・スロウの“Lay Me Down”、ファレル・ウィリアムズを思わせるアップの“Guide”など、裏声を交えた甘美なヴォーカルも際立つ。これらを含めてアルバムは、打ち込みを導入し始めた頃のアイズレー・ブラザーズとフランク・オーシャンが出会ったような趣もあり、密室的な音の中に開放感を持ち込んだ楽曲はベッドルーム・ファンクとでも呼びたくなる。“Hate CD”を聴いてプリンスのポップ・バラードを連想するのも、そうしたムードに誘引されているせいなのだろう。また、自身のセクシュアリティに触れた“Like Me”はLAのバンド=デイジーとの共演だが、9分に及ぶ組曲風のこれは、特にケンドリック・ラマー風情の前半部で、ドクター・ドレーが顔役となるコンプトンに生まれた者ならではのルーツとプライドを示しているようにも感じられる。ジ・インターネット『Ego Death』以降の音楽的な充実ぶりとカラフルなポップネスは、この人がいてこそと思わせる好盤だ。

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