Photo by Parker Day

『Drunk』から3年、プロデューサー・センスが光る待望の最新アルバムをリリース!

 これまでライヴで見たサンダーキャットのプレイで、特に印象深かったのは、2016年にカナダのモントリオールで行われたレッドブル・ミュージック・アカデミー(RBMA)だった。サンダーキャットはRBMAに参加した若いクリエーターの講師役を務めていたのだが、夜に行われたライヴ・イヴェントにも出演した。『Round Robin』というイヴェントは、ステージ上に2人のミュージシャンが代わる代わる登場して5分間の即興セッションをおこなうものだった。サンダーキャットはお馴染みの6弦ベースを持ってステージに登場したが、ランダムに選ばれた演奏相手とのリズムのないフリー寄りのプレイで見せたのは、ソリッドでファンキーなスラッピングしたベースではなく、相手の音をしっかり聴いて反応し、繊細にスケールをなぞって一音一音を丁寧に響かせるものだった。

 そのプレイを見たときに、サンダーキャットの出自には確かにジャズ・ベースがあることを強烈に感じたのだが、翌年リリースの、各方面で話題となって高い評価を受けたアルバム『Drunk』ではそんな出自をナイーヴに見せることは微塵もなく、ケンドリック・ラマーやマック・ミラーからマイケル・マクドナルドやケニー・ロギンスまでフィーチャーして、LAの音楽史を溯行し、大胆に更新する姿勢を見せた。それは、かつてフュージョンからブラジル音楽、ロックやディスコまで自在にスタイルを変化させ、拡げてきたスタンリー・クラークを彷彿させるものだった。サンダーキャットやカマシ・ワシントンたちはLAジャズの象徴であるビリー・ヒギンズやホレス・タプスコットと同じく、クラークや朋友ジョージ・デュークをリスペクトしてきた。ジャズの系譜から見れば、まったく違う立ち位置にあったミュージシャンとその音楽に対して、フラットな視点で接することができるのが、サンダーキャットたちの特徴でもあった。