新作『Heavy Rain』はパーフェクトなダブ・アルバム
――そして、『Heavy Rain』は単なる『Rainford』のダブ・ミックス・アルバムではなく、ブライアン・イーノを交えたり、『Rainford』の未発表曲も収録するなど、さらなる発展形となっているアルバムです。どのようにアルバム作りを進めましたか?
「『Rainford』は完全なレゲエではなく、ダブの要素を含んだものとなったけど、それぞれの収録ナンバーがひとつの曲として完結するものとなっていた。でも、『Heavy Rain』に入れた“Mind Worker”や“Hooligan Hank”“Dreams Come True”は、『Rainford』のときに既に出来ていたけれど、曲と言うよりもリディムみたいな感じで、『Rainford』全体のカラーにはちょっと合わなかったんだ。だから入れずに、『Heavy Rain』で初めて陽の目を浴びたというわけさ。
そういった具合に『Heavy Rain』はインストのリディムを軸に作ったもので、そこへトロンボーンやトランペットのホーンから、シンセやギターの音、亡くなったスタイル・スコットのドラム音源とか、イーノとのミックスを加えていったんだ。
クラシックなスタイルのダブ・アルバムで、自分の中ではパーフェクトと言える作品に仕上がったと思うよ。ヴィンテージなダブと2020年に向けての自分とリー・ペリーが組み合わさっていて、とても面白いアルバムになっている。
『Rainford』は音がずっと鳴っている状態にあるけど、『Heavy Rain』には音の隙間があって、呼吸しているような感じに聴こえるんじゃないかな」
――“Here Comes The Warm Dreads”はイーノのアルバム名(74年作『Here Come the Warm Jets』)を捩った曲ですが、彼も非常に楽しんでミックスに参加しているように思います。どんないきさつから彼は参加したのですか?
「ブライアンは昔からの知り合いだけど、実はマネージャーが一緒なんだ(笑)。そのマネージャーを通じてブライアンに訊いてみたら、〈ぜひ参加させてくれよ〉と言ってくれてね。いつもブライアンとは一緒に作業をしたいなと思っていたから、それが実現できて本当に嬉しかったよ」
――トロンボーン奏者のヴィン・ゴードンやダブ・シンジケートのメンバーなど、On-Uやブラック・アークなどで活躍してきたヴェテランのミュージシャンもいろいろ参加しています。〈過去の傑作にたとえるならこれは『Super Ape』なんだ〉とも述べていますが、これはリーとあなたの今までの総括であると共に、新たな冒険をしたアルバムと言えるものですか?
「メディアなどで『Rainford』が2019年におけるリー・ペリーの『Roast Fish, Collie Weed & Corn Bread』(78年)だと評価されていたので、『Heavy Rain』は2019年の『Super Ape』(76年)と例えたわけなんだけど、100パーセント冒険したアルバムだね。古臭いサウンドには聴こえなくて、とてもフレッシュなアルバムだよ。
60年代から70年代、80年代からやっているミュージシャンたちが演奏しているけれど、彼らが現代の新鮮なサウンドにも対応してやっていて、それは今の若い人たちが聴いてもとても楽しめるものになっているんじゃないかな。ミュージシャンシップとミックス・ワークが満足いく形で混じり合って、このアルバムに関わることができたのは本当に誇りに思っている」
ダブとは〈Less Is More〉を理解すること
――改めてあなたにとってダブとはどんなものでしょうか?
「サウンドを作るプロセスがダブなんだけど、その中で〈Less Is More〉ということをより理解することができるんだ。余計な音を加えるんじゃなくて削っていくこと、そこからより大きくて深みのある音が出来上がるんだ」
――〈Less Is More〉の精神に基づいて、これまでのキャリアの中であなたのフェイヴァリット・ワークを選ぶなら何ですか?
「『Heavy Rain』だね(笑)。いや誇りに思ってるレコードは一杯あって、19歳で初めてのレコードを作って、On-Uを作ってクリエイション・レベルの『Starship Africa』(80年)を出したり、マーク・スチュワート&マフィアやアフリカン・ヘッド・チャージをプロデュースしたり、プリンス・ファー・アイ、マイキー・ドレッド、ビム・シャーマンたちのシンガーズ&プレイヤーズと素晴らしいレコードを作ったりしてきた。リー・ペリーとダブ・シンジケートでやった『Time Boom X De Devil Dead』も誇りだし、ファースト・ソロ・アルバムの『Never Trust A Hippy』(2003年)もそうだね。
でも、今は『Heavy Rain』なんだ。今までやった作品はもう過去の歴史になっていて、それを振り返ることよりも、今やっていることに集中して、それをどれだけ満足のいくものにできるかが重要なんだよ」
――このあと予定している作品はありますか?
「来年にホレス・アンディのアルバムをプロデュースして出す予定で、それと自分のソロ・アルバムも作ろうと思っている。
――最後に今回の来日公演を前に、ファンへのメッセージをお願いします。
「日本のファンとは長い間いい関係を続けてこれて、これまでずっとサポートしてくれてとてもありがたく思っているよ。そんな皆とこのライヴを一緒に楽しみたいね」

LIVE INFORMATION
ADRIAN SHERWOOD
Time Boom X The Upsetter Dub Sessions
2019年11月22日(金)東京・渋谷 WWW X
開場/開演:18:00/18:30
前売り:5,800円(税抜)
MIX 1:EXOTICO DE LAGO - Live Dub Mixed by ADRIAN SHERWOOD
MIX 2:ADRIAN SHERWOOD: Diving into Original Multi-Tracks
MIX 3:ROOTS OF BEAT plays LEE “SCRATCH” PERRY Classics - Live Dub Mixed by ADRIAN SHERWOOD
DJ:Likkle Mai/Ao Inoue
■チケット
BEATINK:https://beatink.zaiko.
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