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スプーン × エイドリアン・シャーウッドのダブをめぐる対談!

 スプーンが今年の2月にリリースした最新作『Lucifer On The Sofa』のダブ盤が登場! UKダブの鬼才、エイドリアン・シャーウッドがアルバム全曲を再構築した本作は、最高にチルかつトリッピーな一枚に仕上がっています。このリリースを記念して、スプーンのブリット・ダニエルとシャーウッドの対談を実施しました!

SPOON 『Lucifer On The Moon』 Matador/BEAT(2022)

 

――エイドリアンさんがロック・バンドのアルバムを一枚まるごと手掛けたダブ作といえば、やはりプライマル・スクリームの『Echo Dek』(97年)が思い浮かびます。

ブリット・ダニエル「あのアルバムはリリースされた頃から大好き。あれでエイドリアンやOn-Uのことを知ったんじゃないかな。スプーンの連中とは昔からよくダブについて話していた。『Ga Ga Ga Ga Ga』(2007年)は、キング・タビーのコンピ『King Tubby’s In Fine Style』からの影響が強いしね。スタジオそのものをひとつの〈楽器〉として用いるというダブの発想に、俺は強く惹かれているんだ」

――エイドリアンさんは彼らからリミックスをお願いされたときはどう思いましたか?

エイドリアン・シャーウッド「スプーンのことは、友人たちから〈本当に良いバンドだよ〉と聞いていた。俺はすごく詳しいわけではなかったけれど、リミックスを依頼されて音源を聴いたとき、ブリットは素晴らしいソングライターだと思ったよ。ただ俺はあまり転調の多い楽曲に取り組んだことがなかったから、これはチャレンジになるとも感じた。それと同時に、自分はこの作品に良い貢献ができるだろうという手応えもあったんだ」

ブリット「エイドリアンには、こちらからいくつか希望を伝えたんだよね。〈送った音源からの素材だけにこだわらず、好きなように音を足して構わない〉と。あと、追加パートはすべてアナログで録ってほしい、できるだけテープを使って編集してほしい、という話もしたね」

――当初はアルバム全体のダブ盤を作るというという構想ではなく、エイドリアンさんがやりやすい曲をリミックスしてくれというオファーだったそうですね。そうしたら“The Devil & Mister Jones”と“Astral Jacket”の2曲のリミックスが送られてきたと。

ブリット「そう。とても興奮したよ。違うドラムやリズムが加わっていて、オリジナルとはまったく異なる解釈だったけど、とても正しいものだと感じられた。あと送ったマルチ・トラック群のなかから、俺たちがふざけて喋っているだけのパートをアウトロで抜き出して使っていたよね。そういう丹念なアプローチにも感心させられた」

エイドリアン「2曲を仕上げたときは、俺も満足したよ。で、〈じゃあ他の仕事に取り掛かろう〉という感じだったけど、どういうわけかこのアルバムにもっとのめり込んで作業することになった。で、進めていくうちに、〈これはブリットたちの作品であるのと同じくらい、俺のレコードでもあるな〉と感じはじめた(笑)」

ブリット「いや、まさにその通りだよ(笑)!」

エイドリアン「というのは冗談だけど、それくらいマジに心を込めて取り組んでいた。本作に貢献してくれた俺の仲間たちもみんな同じ気持ちだったしね」

――ブリットさんが特におもしろいと感じたリミックスはどれですか?

ブリット「まず“On The Radio”は絶対に挙げたいね。というのも、オリジナル盤に収録したヴァージョンにバンドとしても納得がいっていなかったんだ。いや、もちろん好きなんだけど、少し思い通りにはいかなかったというか。だけど、エイドリアンはあの曲を正しい形に導いてくれた気がする。彼は、原曲の短い箇所を抜き出して反復させ、まったく新たなコーラスを作り出したんだよね。いやいや、ホントに曲をひとつ上のレヴェルに引き上げてくれたよね」

エイドリアン「そう言ってもらえて嬉しいよ。あのリミックスは制作の終盤に出来たものだった。作業を進めていくにつれて、俺も君の歌に慣れていったし、それらをどう脱構築すればいいかを掴めてきたんだよね」

ブリット「あと“My Babe”も素晴らしいよね。彼がフルートとチェロを足してくれて、ホントに驚いた。だからとても穏やかでピースフルな美しいトラックになった」

エイドリアン「ビートルズを参照したんだよ。オリジナル版を聴いたとき、俺の頭の中にはビートルズ的な要素がずっと浮かんでいたんだ。インド音楽との戯れだったりストリングスだったり、彼らとジョージ・マーティンのやった諸々がね。つまり、俺は素晴らしいソングライティングに耳を傾けていたってことだし、俺たちのヴァージョンに関しては、そこにちょっとした愛嬌ときらめきを足そうとしたんだ」

ブリット「〈愛嬌ときらめき〉か。うん、言い得て妙だな」