BeatleDNA~ビートルズの遺伝子を受け継ぐビートリーな楽曲で至福の時を

 日本公開もされた話題の映画「イエスタディ」は、ビートルズの存在しないパラレルワールドで、売れないミュージシャンが彼らの曲を歌ったら、たちまち世界的なスーパースターとなるという話。つまり、その映画を成立させているのは、ポップ音楽は常に時代と密接につながっているが、ビートルズは20世紀とか60年代とかいうコンテクストを取り去っても、世界中の人びとの心をとらえる魅力が、その曲自体にあるという映画の制作者から観衆までが共有する認識だ。

 そんなビートルズの曲の魔法を解明しようとすることで、自分の音楽を発展させていった数多くのバンドやアーティストは、その過程で無意識に、時に意識的に「ビートリー」な曲を残してきた。「BeatleDNA」は、そういったビートルズのポップな遺伝子を引き継ぐアーティストやバンドを紹介していくシリーズ。ビートルズの大ファンながら、彼らのいないソニーに勤めてしまった担当A&R氏が入社以来温めてきた情熱と執念の企画でもある。第一弾のスウェーデンのザ・ミスティーズのような新人の紹介、名作の再プッシュ、そして、知る人ぞ知るアーティストの日本企画盤といった多彩なラインアップの発売予定が組まれている。

VARIOUS ARTISTS Power To The Pop ソニー(2019)

 『Power To The Pop』はそのシリーズを紹介するような編集盤で、CD2枚に彼らの遺伝子を引き継ぐ作品がレーベルを超えて41曲も詰め込まれている。

 ディスク1は主に70年代からで、良く知られた名前も多く、おなじみのヒット曲を幾つも含む内容だ。ポールとの共作であるエルヴィス・コステロの〈ヴェロニカ〉、ポールの共作相手となった時期もあるエリック・スチュアートのいた10㏄、アビー・ロード・スタジオのエンジニアだったアラン・パーソンズと彼がプロデュースしたパイロット、ジョージのコラボ相手となったジェフ・リン率いるELO、アップル・レコードからデビューしたバッドフィンガー、ジョージが親しかったモンティ・パイソンから生まれたラトルズと、本家と直接つながる人たちもいる。

 それに対し、ディスク2は90年代以降の録音で、オアシスが締め括るにせよ、大半はメジャーから作品を発表したことはあっても、主にインディで活動しているような人たちだ。一般的なファンには初めて聞く名前も多いだろうが、だからこそ、嬉しい発見をたくさんするはずで、こちらにこそ注目してほしい。次から次へと魅惑的なメロディとハーモニーが登場することに驚くと思う。ビートルズ・ファンならずとも至福の時間を過ごせると保証しておく。そして、その中から、順次単独アルバムも紹介されていく予定で、まずはザ・ナインズとマイク・ヴァイオラの日本企画盤が届く。

 


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