キャリアのリカヴァリー

 2017年には引き続きドレー&ルービンがエグゼクティヴ・プロデューサーを担当する形で、約4年強ぶりのアルバム『Revival』をリリース。ビヨンセやエド・シーラン、アリシア・キーズら人気シンガーたちの参加も話題となって一定の商業的な成功を収めるも、ポップ~ロック寄りのアプローチと時流を意識した政治的な内容もあって賛否を呼び、否定的なレヴューに対してエミネム自身が反論するという異例の事態まで起きた。気分の収まらぬエミネムは8か月強という短いスパンで前述の『Kamikaze』(2018年)をサプライズ発表。ドレーと共にスリム・シェイディ(エミネムのオルターエゴ)がエグゼクティヴ・プロデューサーにクレジットされた同作では、前作を酷評した面々のみならずミーゴスら人気のいわゆるマンブル・ラッパーたちも口撃するなど、勢い任せで作った感もあってこちらも賛否を呼んだものの、かつての悪童エミネムを彷彿とさせる作風に感嘆する意見も多く、またまたキャリアを〈リカヴァリー〉させたのだった。

 一方のシェイディでは15周年コンピ『Shady XV』(2014年)やサントラ『Sou­thpaw』(2015年)が続いた後、スローターハウスは解散し、コンスタントに作品をリリースしていたアラバマのイェラウルフが離脱するも、新たにコンプトン出身のブギーやバッファローのクルー/レーベル=グリセルダ・レコーズとサイン。特にウェストサイド・ガン、ベニー・ザ・ブッチャー、コンウェイ・ザ・マシーンといったアンダーグラウンド界隈で注目のハードコアな実力派MCたちを擁する後者との契約は、エミネムの目利きの鋭さが衰えていないことを証明した。グリセルダ勢は2019年末に契約第1弾として超強力なクルー・アルバム『WWCD』をリリースしている。