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INTERVIEW

ポジティヴに弾けたiriの新作。より自由な表現にトライできる環境を得ての新境地とは?

iri『Sparkle』

ポジティヴに弾けたiriの新作。より自由な表現にトライできる環境を得ての新境地とは?

より自由な表現にトライできる環境に触発され、ポジティヴに弾けたマインド。
ハッとした輝きに彩られた新作に映る彼女の新境地とは……?

ポジティヴなマインドで

 陰影に富んだ心象風景をありのままに描き出した前作『Shade』から約1年。同作の収録曲“Won­der­land”のMVが980万回を超える再生回数を記録するなど、しなやかなグルーヴと共にその深い歌声が広く浸透し続けているiri。取り巻く状況の変化がもたらした冒険心と大胆さを糧に制作を行った新作『Sparkle』は、文字通り明るい音と言葉が弾ける会心のアルバムとなった。

 「何が弾けているかというと、それは間違いなく自分のマインドですね。リスナーの方がだんだん増えてきて、新しく出す曲を認めてくれるようになってきた状況が今の自分に大きな影響を及ぼしているというか。万人受けを意識せずに曲を作れるようになりましたし、人目を気にせず自分のことを表現できるようになりました」。

 〈納得がいかないことを自分でクリアにしていきたい〉という思いが込められているという“Clear color”で幕開ける本作は、Tokyo RecordingsのYaffleが紡ぐビートと、その予想外の展開が示唆するように、冒頭から次々に繰り出されるクリエイティヴな発想が既存のイメージを鮮やかに塗り替え、瑞々しいなサウンドスケープを浮かび上がらせる。

 「3曲目の“Sparkle”でサウンド・プロデュースをお願いしたKan Sanoさんとはこれまでに“飛行”や“mirror”のようなゆったりした曲を作ってきたので、逆に今回はアップテンポな曲を作ってみたかったんです。そして、この曲は、生音の比重を増した今作を象徴するアルバム・タイトル曲なので、Kan Sanoさんが得意とする生音と電子音のハイブリッドなアレンジをお願いしました」。

 スペーシーなシンセサイザーとファンク・ビートが溶け合った“Sp­arkle”は、夜のメランコリックなムードを残しつつも、これからまさに一日が始まろうとしている真っさらな早朝の心象風景を描き出してゆく。

 「このアルバムにおける私のマインドは、基本的にポジティヴだと思います。曲を書く時は夜の景色がイメージしやすいし、実際、夜に曲を書くことが多かったりするんですけど、夜は悩みや不安がどうしても頭をよぎったりする。だから、私の曲にはどうしても抜けきらないネガティヴさがあったりするんですけど、夜に書いたこの曲では間もなくやってくる早朝の色彩やムードをイメージしました」。

 

誰もがハッとする曲を

 夜から朝、そして、静から動へ。生楽器の比重が高まったことで、その楽曲は飛躍的に躍動感を増し、アクティヴな印象を受ける。

 「“Runaway”はTAARくんと制作を進めていくなかで、もっと、ブラック・ミュージックの要素が欲しいという話になり、ペトロールズの(三浦)淳悟さんにベースを弾いてもらった曲です。私と淳悟さんは地元が近くて、以前から親交があり、TAARくんもLeyonaさんの楽曲制作で淳悟さんと一緒にお仕事していて、この曲は3人が一堂に会した初めての機会になりました」。

 ドライヴするベースのグルーヴ感が楽曲を引っ張る“Runaway ”は、音楽活動を続けていくなかでiriとプロデューサー/プレイヤーの関係性が深まり、有機的に機能していることを象徴するダンス・トラック。WONKの荒田洸と紡がれる甘美なソウル・バラード“miracle”と、SANABAGUN.の澤村一平とOKAMOTO'Sのハマ・オカモトが旗振り役を務めた“Coaster”では、プロデューサー/プレイヤーから誘われる形で行った自然発生的なレコーディングも経験している。

 「プレイヤーの方たちとスタジオに集まって、みんなでワイワイ話しながら、セッション的に曲を作りたいと思っていたところに、一平くんとハマくんから〈一緒に曲を作ろう〉というお誘いがあったんです。ただ、そこまで時間がなかったので、LINEのグループで〈低音の鳴りがナチュラルな曲をやりたいねって〉っていう話をしながら、みんなでアイデアのやり取りをしました。そして、雛形となるトラックをもとにスタジオで楽器を入れていったんですけど、トラックに入ってる音を生音に差し替えると音質やバランスが変わって、曲の印象もガラッと変わってしまうんですよ。だからギリギリまで作業して、その仕上がりには満足していますし、それ以上にいい経験になりましたね」。

 枠組みにとらわれず、実践と実験を重ねたことでもたらされたiriの新境地。その充実した成果は、ケンモチヒデフミによるトラップ・ビートにReiのハードでファンキーなギターをフィーチャーした“Freaking”に渦巻く混沌としたエナジーが物語っている。

 「これまで〈ストイックでクール〉とか〈チルでエモい〉みたいに言われたりもして、自分としては違和感があったんです。そんな時に、曲名は今もわからないんですけど、メタルとトラップを組み合わせたトラックで女の子がラップしている曲を聴いて、今までのイメージとはまったく関係ない、誰もがハッとする曲を私も作ってみたいと思ったんです。そこでパンチの利いた歪み系のギターを同世代の誰かにお願いしようと考えたとき、真っ先に思い浮かんだ事務所の1個上の先輩でもあるReiちゃんをはじめ、私とそれぞれ繋がりのあるケンモチ(ヒデフミ)さんと(三浦)淳悟さんが加わったらおもしろいだろうなって。レコーディングでは落としどころがどうなるかわからない実験を存分に楽しみましたし、歌詞もサウンドの勢いを借りて、自分がいつも隠しているところ、自分のダメな一日を思わず見せてしまったという(笑)」。

 

音楽がますます楽しい

 今年1月にリリースしたシングルに収録されたゴスペル・テイストの“24-25”やメロウネスが極まった“SUMMER END”を経て、アルバムは終盤へ。SIRUPや向井太一らの楽曲制作を手掛けるShin Sakiuraと初顔合わせとなった“COME BACK TO MY CITY”は、サウンド面においてホープ・タラやロザリアらに触発された彼女なりのラテン・アーバン、ボサノヴァとヒップホップのクロスオーヴァーを具現化しつつ、そのリリックでは彼女の飾らない日常を描き出している。

 「小学生の頃から仲の良かった友達が結婚することになり、私が今も暮らす地元の逗子から離れて新生活を始めたんですけど、彼女の結婚式が私のツアーと被って参加できなくなってしまったんです。だから、彼女に曲を贈りたいなと思って“COME BACK TO MY CITY”を書きました。タイトルそのままなんですけど、私は私で変わらずやってるから、たまには地元に帰っておいでって」。

 そして、SIRUPを擁する大阪のアーティスト・コレクティヴ、SOULFLEX所属のMori Zentaroを迎えた本作のラスト・ソング“Best life”では、心地良いビートのループと肩の力を抜いたゆるやかなメロディーと共に何でもない日常の幸せが歌い綴られる。

 「今回の作品を聴いてみて、自分にとって一番居心地のいい場所はどこなんだろうと考えると、“24-25”や“Sparkle”“Runaway”のようなパンチの利いた歌い方の曲が表向きの自分だとしたら、テンポがゆったりしていて、優しく温かい“Best Life”のような曲がもともとの自分なのかなって。振り返ると、昔、弾き語りで歌ってた頃は、音数が少ないから力んで歌わなくても声が通っていたんですよね。でも、トラックがあると低音で声が持っていかれるんで、知らず知らずのうちに、力んで歌うことが多くなり、いつの間にか、以前とは声のニュアンスや聴こえ方が変わっていたことに気付かされたんです。だから、もっと心地良く歌いたいなと思って、曲によっては家でデモ用の歌を録ってるときのように、座って歌ってみたりもして。ただ、よそ行きの歌と飾らない歌はどちらも私の歌であることには変わりませんし、どちらがいいということではないんですけどね」。

 2016年のデビュー作『Groove it』から4年。アルバム『Sparkle』が放つクリエイティヴな輝きのなかで、iriはみずからを余すところなく投影した音楽を放ちはじめたばかりだ。

 「ギターの弾き語りに始まり、トラックメイカーからもらったビートに歌を乗せるようになったことで、歌詞が少しずつ変化していったり、当初は苦戦していた速いビートも徐々に乗りこなせるようになっていって。そうした試行錯誤のなかで、どうやったら自分のアイデアや思いを形にできるかがわかってきて。今回のアルバムはさらに一歩進んで、これまで自分がやってこなかったジャンルをミックスしたり、自分発信の実験的なアイデアを具現化していったことで、今の私は音楽がますます楽しくなっていってるんです」。

 

『Sparkle』に参加したアーティストの関連作品。

 

iriの作品。

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