自分のなかの父性
その独自のアングルは歌詞にも及ぶ。語り部のように物語を饒舌に歌い綴るceroに対して、この作品では第三者的な視点から切り取った断片的なイメージをスケッチするように描いており、そこでは光と闇、生と死、あるいは聖と俗といった対極的な要素を共存させることで、聴き手の想像力を掻き立てる。
「作品のテーマでもあるアルバム・タイトル『Triptych』(3枚続きの絵画)は、アメリカの作家、マディソン・スマート・ベルの同名の短編小説から取りました。僕は外国文学やつげ義春のような漫画家が好きなんですけど、マディソン・スマート・ベルを含め、その多くは自分の父親に教えてもらったものなんです。これまで自分がやってきた音楽は、どこか母親に向けているようなところがあったのに対して、今回の歌詞がハードボイルドな男の世界になったのは、ソロの楽曲制作を通じて自分を見つめるなかで、父親と自分の関係であったり、自分にも子どもが生まれて父親になったことも含め、自分のなかの父性を掘り下げたくなったんだと思います。そして、全9曲が3つのセクションで構成されているんですけど、物語性に則っているceroに対して、ここには始まりも終わりもなく、そのセクションを夕暮れや朝焼けが象徴する混じり合った時間の色味で3枚の絵のように描きました。しかも、僕が表現したかったイメージやムードは、アメリカだったり、違う土地や国から借りてきたものではなく、例えば、つげ義春の諸作品がそうであるように、日本の原風景、日本のマジックリアリズムであるべきだなと思ったんです」。
ファースト・アルバムにして音楽に対する独自のアングルを見い出したShohei Takagi Parallela Botanica。髙城の視界のその先にはどんな風景が広がっているのか。
「高校生の頃と変わらない探究心、好奇心で今後も冒険を続けていくceroに対して、Parallela Botanicaは年を重ねながら、求道的に一本の幹を伸ばしていく活動をめざしています。そして、今回のように作品で表現する色合い、そのヴァリエーションを今後どんどん増やしていくことを楽しみたいですね」。
ceroの近作を紹介。
『Triptych』に参加したアーティストの関連作品。