岡田拓郎とduennという、年齢も出自も異なる音楽家2人が、2016年の初作『mujo』に続いて、約3年半ぶりとなるセカンド・コラボレーション作を配信限定アルバムとしてリリースした。

バンド〈森は生きている〉時代から、ポップソング・クラフトの傍ら即興演奏等のエクスペリメンタル・ミュージックに深く関わってきた岡田と、サウンド・アーティストとして国内外で活動し、先だっては3RENSA(Merzbow、duenn、Nyantora)として伝説的音響デザイナー・大野松雄とのコラボレーション作『space_echo by HardcoreAmbience』を発表したばかりのduenn。今回2人が取り組んだのは、昨今国内外において様々な文脈で再び音楽リスナーから注目を集めるアンビエント/環境音楽だ。

〈都市の音楽〉という、このジャンルの先駆者でもある故・吉村弘の著作名とも重なり合うコンセプトによって作り上げられた本作『都市計画(Urban Planning)』は、環境音楽というひとつのジャンルが、今現在の都市あるいは社会において、どのような聴取のされ方をされうるのかということについても、興味深い問いを投げかけてくれる。今アンビエントとは、聴くものが一瞬の安らぎを吸引するためだけでなく、ましてやこの現実から避難するためでなく、現実とそれを構成する環境、あるいは(都市的)環境に包摂された我々の音楽観を精密に解きほぐしてくれる手段として、静かに立ち上がってきているのではないだろうか。

片や東京、片や福岡という、それぞれの都市に住む2人をビデオ通話でつなぎながら、この〈ポップな〉アンビエント作について、じっくりと話を訊いた。

Okada Takuro, duenn 『都市計画(Urban Planning)』 NEWHERE MUSIC(2020)

 

コロナ禍における岡田拓郎とduenn

――この間の外出自粛期間中、お2人はどんな風に過ごしていましたか?

duenn「僕は昼間、福祉関係の仕事をしていてその合間に音楽活動をやっているんです。リモート・ワークができないから仕事にはほとんど影響がなかったですね。一方で音楽制作の時間はすごく増えました。今も6枚ぐらい同時進行でアルバムを作っています(笑)」

岡田拓郎「すごい(笑)」

――岡田さんにとってはどんな期間でしたか? 

岡田「しばらくはぜんぜん音楽を作る気にならなかったし、ずっと布団の中で〈マリカー〉して過ごしてるみたいな感じでした(笑)。どんどんライブの予定が飛んでいく中で、今後どうなっていくのか見えないところもあったし……。音楽を作ろうと思って機材のスイッチを入れても、結局周りのことが気になって集中することができなくて。でも、いろんなミュージシャンと連絡を取って話を訊くと、気持ちを切り替えてどんどん音楽を作ろうっていう感じになっている人も多くて。

そういうことに刺激を受けつつ、僕もなんとか切り替えることができて、最近は録音したりミックスしたリマスタリングしたり、普段よりも忙しいくらいですね。まあ、これがお金に繋がっていくかどうかはわからないから不安はありますけど……」

――そもそも、2016年の前作『mujo』を制作するきっかけというか、お2人の出会いはどんな形だったんでしょうか?

duenn「たしか一番最初は、2015年頃、どこかのライブ会場でたまたま会ったんですよ。岡田くんは特に会場内の誰ともしゃべる感じじゃなくて、一人でぽつんと座ってて(笑)。森は生きているのことを含めもちろん彼の存在は知っていたから、そこで色々と音楽の話をして意気投合した感じですね」

岡田「そうそう。僕も当時からMeditations(サイケデリック・ロックや実験音楽を中心に取り扱う京都のレコード・ショップ)の新入荷を常にチェックしてたので(笑)、ああ、こんな面白そうな作品をカセットで出してる人がいるんだって思ってました。で、実際に会ってみて〈現実に存在する人物なんだ〉って思った覚えがあります(笑)。

その後、渋谷WWWでのduennさん企画のライブ(〈Duenn presents ex tokyo limited 250〉)の開催にあたって、会場販売のコンピ盤に1曲参加してくれないかっていう連絡をくれたんですよね」