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ライブ演奏の勢いと肉体性を追い求めた『We Are the Sun!』

――『We Are the Sun!』はいつごろから作り始めたんですか?

高橋アフィ(ドラムス/マニピュレート)「デモ自体は前のアルバム『Modernluv』を作り終わってからすぐに作り始めたんですけど、曲の形が見え始めたのは今年の2月くらいですね。3月上旬くらいに録音したので、自粛期間にギリギリ入ってないタイミングでした」

――その時期はまだスタジオは開いてたんですね?

Kuro(ヴォーカル/トランペット/シンセサイザー)「開いてましたね。でも、自分たちが録音・ミックス作業で使用した数日後に閉まりました。以後はスタジオ側が立ち会い作業をNGに切り替えてたと思います」

――ということは、ギリギリのタイミングではあるけど、これまでのアルバムと同じような感じでなんとか制作できたと。とはいえ、前作と作り方がかなり違いますよね?

Kuro「2月末に自主企画のライブ(〈TAMTAM presents FINEVIEW Vol.3〉)があって、そこでアルバムに入れた曲の半分くらいを披露しました。そのライブの雰囲気をパッケージングしたいと思っていたので、録音も、なるべくバンドで〈せーの〉で演奏するのに近い状態でやりたかったというのはありました」

アフィ「『Modernluv』では全員バラバラに録ったんです。僕はクリックだけを聞いてドラムを叩いて、みたいな感じ。

今回は、録音ブースは分かれているんですけど、バンドで〈せーの〉で録りました。あと、あまりポスト・プロダクションはしないで、エフェクトによる加工もできる限りしないって目標はありました。各自のプレイヤーの音に任せようっていうのはありましたね」

『We Are the Sun!』収録曲“Worksong! feat.鎮座DOPENESS”

――なぜそうしようと思ったんですか?

Kuro「今のメンバーになったことは理由の1つですね。特に新しく入ったベースの石垣陽菜さんと、サポート・ギターのYuta Fukaiくんと演奏していたら、バンドが肉体的になっていると感じていたので、前作と差をつけるならライブ的な演奏の勢いとアグレッシヴさを録音に残すことかなと。

最近のライブ演奏でも、セッション感覚で毎回違うアプローチができていたのも良い点で、そのフレッシュさをそのまま盤に出来たらいいなと思ってました」

――『Modernluv』はかなりポスト・プロダクションをやったアルバムで、その後に出たKuroさんのソロ・アルバム『JUST SAYING HI』(2019年)はプロダクション寄りのアルバムでした。僕は前作を聴いて、このままいくと高橋アフィさんが一人で作り込む感じになって、ゆらゆら帝国の『空洞です』みたいにバンド名義だけど、バンド的な要素から少し離れた感じになるかなと思ってました。でも、そこから一気に生々しいバンド・サウンドに戻ってきて驚きました。

アフィ「前作ではフレーズや音色を細かく指定したんですよ。すごく細かく話し合いながら決めていったので、極端に言えば僕が知らない音は鳴ってないという音像を作ったんです。

でも、今回は固定フレーズを弾いてもらうより、新しいベーシストもサポートのギタリストとキーボーディストもプレイヤー気質な人たちなので、〈コードとかこういう感じなので楽しく弾いてください〉って言って弾いてもらったんですよ。

ソロに関しても〈こういうのかっこいいと思うんだけどどう?〉って感じでYouTubeのリンクだけを送ると何かしら返ってくる感じだったので、それぞれに任せた要素がかなり大きいです」

Kuro「〈ここだけは必要〉ってフレーズはデモに入れてお願いするんですけど、理想は大喜利みたいな状態で、〈その心は!〉って訊いたら、マナーはありつつもそれぞれ予想を裏切るものが返ってくるほうが、バンドでやっている意味があるというか。

私はソロ名義でのリリースを経て逆にそういったバンドならではの楽しさを自覚した部分もあって、前作よりできるだけ正解を決めきらずにプレイヤーに任せたので、私個人の負担は前作よりかなり減りましたね。メンバーのスキルやセンスに信頼もあったのでスムーズにいきましたし」