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インタビュー

WONKはSFコンセプト作『EYES』で〈レコメンド時代〉に挑む

4人が語る、異質なものと出会うことの大切さ

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異質なものを認める大切さを僕らは示していきたい

──本作の“Skit 3 - Resolution”では、先ほど話に出た〈レコメンド・エンジン〉やフィルター・バブル、エコー・チェンバーによって自分の価値観が凝り固まっていくことに対し、はっきりと警鐘を鳴らしていますよね。〈他人の価値観や新しいものの存在までをも否定し続け、結果滅んでいく世界に一体なんの意味があるのだろうか〉と。

長塚健斗(ヴォーカル)「そうですね。Skitの部分ではかなりはっきりとしたメッセージを打ち出しています」

江﨑「大切なのは、自分の心の中に違う価値観の人を許容するスペースを作ることなのかなと最近は思っていて。

コロナ禍では特にそうですが〈AなのかBなのか、はっきりしろ〉という言説が多くなっている気がするんですよね。いろんなトピックについて〈賛成か反対か〉を求められる。

でも、いわゆる〈穏健派〉と呼ばれる人たちのスタンスってすごく重要だと思っていて。〈意見がない〉のではなく〈思考し続けている〉というポジションの人たちが、そこには間違いなくいるはずなんですよね」

荒田洸(ドラムス)「〈多様性を見直そう〉と、色々なところで言われているじゃないですか。いいなと思う一方、それって無関心にもつながっている気がしているんですよね、〈そういう人がいてもいいんじゃね?〉みたいな。

それよりは、もうちょっと擦り合わせみたいなことが起きても良いのではないかと。多様な考えや文化を理解する姿勢が大切なのかなと思いますし、大切にしていきたいと思います」

井上「WONKの音楽にはいろんなジャンルが入っていて、一概にどんなジャンルだとか今作だとより分からなくなっていると思うんですよ。

自分とは全く異なるもの、音楽だったら異なる国の音楽だったり言語だったり、そういうものが混じり合ったときに面白いものが生まれるし楽しい気持ちになる。異質なもの同士が認め合うことの大切さを、僕らは示していきたい……というと大袈裟ですけど(笑)、音楽を通して訴えていくことしかできないなと思っているんです」

『EYES』収録曲“Rollin’”

──認め合えるものは認め合い、受入れ合い、もし受入れられなければある意味では〈放っておく〉スタンスも大事なのかなと(笑)。それらも含めて価値観のグラデーションに幅を持たせられる世の中になるといいなと思いますよね。そこからまた新しい価値観も生まれてくるような気がしますし、WONKの音楽性にも通じるところなのかなと。

江﨑「うん、グラデーションってとてもいい表現ですね。〈白と黒の中間あたりに面白みが集まっている〉というのは、確かに僕らが音楽で最も訴えたいことかもしれないです」

 

もっとWONKを聴いてくれ!

──アルバムでは、主人公がパラレル・ワールドである月世界へ行って自分以外の価値観と出会う様子や、そこで身につけた新たな価値観が、元のコミュニティーで受け入れられない葛藤などを“Fantasist”や“Nothing”の中で描いています。こうした物語はどこから着想を得たのでしょうか。

井上「WONKがそういう状況にあるというか……〈僕らの音楽は、そこまで浸透していかないんじゃないか?〉という不安からですかね」

一同「(笑)」

井上「さっきも話したように、WONKにはいろんな音楽の要素が詰まっているんですけど、それを自分の周りの人や、そのさらに向こう側の人たちに広げようと思った時って、やっぱり一筋縄ではいかないし、聴いてくれないことの方が多くて。その悩みが反映されていると思っていますね。

〈WONKってなんなの? ジャズ?〉〈J-Popなのかな〉〈いやシティ・ポップらしいよ?〉みたいな。もともとは便宜上用いられてきたはずのカテゴリーなのに、そこにハマらないと聴いてもらえないことへのフラストレーションは以前からありました」

荒田「〈もっとWONKを聴いてくれ!〉〈俺らの音楽、最高だぞ!〉というのが、本作の隠された裏テーマなんです(笑)」

『EYES』収録曲“Signal”

──(笑)。あくまでもそういう、個人的な思いを突き詰めた結果、人々が今抱えている普遍的なテーマに帰結しているところが本作『EYES』をリアリティーのあるものにしているのだと思います。サウンド的にはどのようなものを目指しましたか?

井上「これまでのWONKの楽曲と比べると、1曲の中で複数の音楽ジャンルを横断するような曲が増えました。序盤はロックかと思ったら途中でコンテンポラリー・ジャズっぽくなり、最後は劇伴のオーケストラみたいな展開になるとか。前もって決めたわけでもないのに、不思議とそういうアレンジになっていきました。

通常はアルバム作りとなると〈まとめる〉方向に進むのですが、今回は〈発散する〉方向を指向していましたね」

荒田「今回はロックスターになったつもりで、近年稀に見る強さでハイハットを叩いた曲が多いです(笑)」

江﨑「井上が作った曲には、非西洋的な楽器を取り入れた曲もあります。“Fantasist”の冒頭に聴こえてくるオルガンのようなサウンドは笙だったり、“In Your Own Way”ではシタールっぽい音色にしたエレキギターを入れたり。WONKの良さは、バンドでありながら色んな楽器や音色を使い分けて曲を作っていけるところだと思っていて」

井上「〈自分はベーシストだからベースだけを弾く〉みたいなスタンスではなく、楽曲に対して様々なアプローチを各々が考えています。荒田がキーボードを弾くこともあるし、文武も音色を作り込んだり、効果音を配置したりするし。そういう姿勢がWONKの音楽性にも表れていると思いますね」

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