バンドの進化と変わらない核

――サード・アルバム『Mordechai』の完成おめでとうございます。世界中が待ちわびていたリリースですが、制作に取り掛かった時点では新型コロナウイルスをめぐるこのような状況に巻き込まれるとは予想していませんでしたよね?

ドナルド“DJ”ジョンソン(ドラムス)「もちろん予想していなかったよ。この状況にはかなり驚かされている。アルバムをリリースするってタイミングと同時にこの状況が始まったからね。

いつもだったらアルバムをリリースしたらそれと一緒にツアーに出て世界中でライブをしていたけど、この状況下ではそれができないのがとても残念だ。はやくライブができるような状況に戻ってくれることを祈っているよ」

『Mordechai』収録曲“Pelota”

――セカンド・アルバム『Con Todo El Mundo』をリリースした2018年から2019年にかけてのクルアンビンの世界的な成功は、バンドの環境や個人的な心境の変化を少なからずもたらしたと思うのですが、具体的にどう感じていましたか?

DJ「世界中の人たちが僕たちの音楽を聴いてくれていることにはとても感謝している。いつも僕たちはありのままの自分に忠実に、そしてバンドを始めたときの自分たちを失わずにいたいって思っているんだ。

確かに僕たちはいつも進化しているけど、自分たちの核の部分では、いままで成長してきた過程で好きになった人やアーティストは変わっていないと気づいたんだ。自分たちの真の姿でい続ける為に一番いい方法は、外から受ける影響を自分たちが作るアートに直接的に反映させるのではなくて、もっとその影響に対して〈こんなこともできるかも、あんなこともできるかも〉って考えることだと思うね」

 

〈FUJI ROCK〉は素晴らしい体験だった

――去年、僕は東京での3月の初来日公演、7月の〈FUJI ROCK FESTIVAL〉、そして10月にカリフォルニアで開催された〈Desert Daze〉と何度かクルアンビンのライブを観たのですが、そのわずかな期間でも3人の演奏の完成度やステージ上の振る舞いがどんどん自信に満ちてオープンなものになっていくのを感じました。そうした変化やバンドの成長については、どう感じていましたか?

ローラ・リー(ベース)「コロナウイルスの影響でステージに立っていないから過去の振り返りになってしまうんだけど、この4年間は1年間に150公演をこなしていたし、当然上達はしたと思う。

パフォーマンスをするということはただ演奏をするよりもっと大きなこと。ただ楽器をうまく弾けばいいとか曲を演奏すればいいということではなくて、オーディエンスと交流してその瞬間を作り上げる。ステージ上で経験を積めば積むほど自信がつくし、よりステージに立てば立つほどオーディエンスとのつながりが強くなるよね」

クルアンビンの2018年のライブ映像

――とりわけ、〈FUJI ROCK〉では〈FIELD OF HEAVEN〉で最終日のヘッドライナーを務めました。その体験について感じたところを聞かせてください。

DJ「〈FUJI ROCK〉は素晴らしい体験だった。僕たちが演奏した時間はすごく雨が降っていたんだけど、オーディエンスのみんなが最高だったよ。

日本のオーディエンスのために演奏するときはいつもすごく楽しいんだ。すごく感謝してる。なかでも〈FUJI ROCK〉は特に楽しかったな。昨年は本当にたくさんのショーをしたんだけど、自分にとってあの夜は今後もいい思い出として振り返るような一番のお気に入りだよ」

 

リオン・ブリッジズとの素晴らしいケミストリー『Texas Sun』

――デッド・オーシャンズに移籍してのファースト・リリースは、昨年末のリオン・ブリッジズとのコラボレーションEP『Texas Sun』でした。2018年にクルアンビンはリオンの全米ツアーでフロント・アクトを務めていました。同じテキサス出身ということもあり、以前からリオンとは交流はあったのでしょうか? それともアルバムでの共演はツアーから発展したアイデアだったのですか?

ローラ「ある意味そう。リオンとはツアーに出るまでは交流はなかった。ツアー中に私たちが書いた曲をリオンに送ったら、彼がそれに歌詞を乗せてくれてね。

テキサスで1週間休みがあったから、その曲をレコーディングしてみたらもっと一緒にできることがあるかもって気づいて、より大きなプロジェクトに発展していった感じ」

クルアンビン&リオン・ブリッジズの2020年作『Texas Sun』収録曲“Texas Sun”

――『Texas Sun』で実現した、リオンの歌とクルアンビンの演奏の融合は素晴らしいものでした。あの試みは、あなたたちにとっても新しい発見だったのでしょうか?

ローラ「うん、『Texas Sun』の制作だけに限らず曲を書くということや全ての経験から学ぶことは必ずあると思う。

私たちがヴォーカリストを使うことは多くないから、『Texas Sun』のレコーディング・セッションは、自分たちが確信を持ってやっているいつものやり方とは違っていた。ヴォーカルがある楽曲を書いたこともなかったしね。だけどあの過程は、確実に今回のアルバムにつながる大切なポイントだった」

DJ「『Texas Sun』は僕たちにとっては他のアーティストとコラボレーションする初めての機会だったけど、他の人と働くときはそれぞれが必要としていることやワークフロウをすり合わせないといけないでしょ。それがあのときはうまく出来たと思う。

リオンとは素晴らしいケミストリーもあったし、あのプロジェクトの仕上がりにはとても満足してるよ。リリースされたときの結果に対する期待もあった。いい作品が出来たとはわかっていたけど、自分たちが心血を注いで作ったものを世の中に出してそれがポジティヴに受け取られるのはとてもうれしいよね」