クラウド・ラップ以降を感じさせる歌い口とコラージュ感覚に満ちたトラックメイクが魅力のシンガー・ソングライター、Mom。ポップでシニカル、ストレンジだけど妙に人懐こい個性は、メジャーからの初作となる本アルバムでも変わることなく、むしろ強烈さを増している。キャッチーなメロと皮肉な歌詞が同居する“アンチタイムトラベル”、苛立ちと衝動の先に仮初の愛が待つ“カルトボーイ”など、いっそう居心地が悪くなっていく世界を笑い飛ばしながら抗うような、こじれた気骨が感じられて頼もしい。時おり挿まれるフォーク要素もユニークで(ちなみに昨年の配信作品『赤羽ピンクムーン』は全曲アコギの弾き語りだった)、孤独な本音が垣間見られる宅録風の“(openmic)”で締めるのも彼らしい。