エレクトロ・プロデューサーとの交流から生まれたダンス・ミュージック

その後のソロ・アルバムは原点回帰的なアフロビート作が多いが、コラボやセッションは〈(ジャンルとしての)アフロビートを演奏するため〉ではなく〈アフロビートのドラムを操る達人〉として呼ばれることが増えていく。特に注目したいのが、エレクトロのプロデューサーたちとの交流だ。

セオ・パリッシュとのコラボやリカルド・ヴィラロボスのリミックス、モーリッツ・フォン・オズワルド・トリオへの加入など多数の活動があるが、どのプロデューサーもトニー・アレンのドラムの細かなニュアンスに注目し、アフロビートのドラムの複雑さとダンサブルな側面を強調した作品となっている。

セオ・パリッシュ、トニー・アレン、エスカ&アンドリュー・アションと2013年のシングル“Day Like This (Rework)”

その中でも異色作がジェフ・ミルズとの共演作『Tomorrow Comes The Harvest』(2018年)だ。共に基本的にはリズム・パートである(ジェフ・ミルズはリズムマシンのTR-909)両者のコラボは、アフロビートのドラムがリズムの土台としてだけではなく、リード楽器としても活躍することを証明した。

TONY ALLEN, JEFF MILLS 『Tomorrow Comes The Harvest』 Blue Note(2018)

トニー・アレン&ジェフ・ミルズの2018年作『Tomorrow Comes The Harvest』のドキュメンタリー

 

トニー・アレンの偉業は今後より重要になる

トニー・アレンのドラムを通してアフロビートは、リズムを追求するビート・ミュージックやエレクトロとも共振したし、即興性と同時にダンサブルであることを志向している現行UKジャズの源泉の一つにもなった。〈ドラムを刻み続けることで音楽になる〉という意味では、ネイト・スミスのドラム・ソロ作『Pocket Change』(2018年)にも影響を与えているかもしれない(同作には“Ghost Thud (For Mr. Allen)”という曲が収録されている)。

可能性を広げ続けたトニー・アレンの演奏の魅力は、今後より重要になっていくだろう。たくさんの素晴らしい演奏をありがとうございました。