(左から)リンカーン・バレット、ルイ・オブライエン、アーシャ・ローレンツ、マルコ・ピニ、キャンベル・バウム

サウス・ロンドンのベニュー、ウィンドミルを中心としたシーンの中で一目置かれ、常に周りに影響を与えてきたUKノース・ロンドン出身の5人組バンド、ソーリー。そのメンバーは個性的で本当に面白い。14歳の頃からSoundCloudに曲をアップし、どちらが友達からの評価を得られるのか競い合って来たアーシャ・ローレンツ(ボーカル/ギター) とルイ・オブライエン(ボーカル/ギター) の2人。キャンベル・バウム(ベース)は〈Broadside Hacks〉というトラディショナルフォークのレーベルを運営することでUKのミュージシャンの別の顔を見出し、それらを繋げている。後から正式メンバーになったシンセ奏者のマルコ・ピニはアートイベント企画を行う〈Slow Dance〉を学生時代に立ち上げた(ソーリー改名前のバンド、フィッシュの初ライブも彼が企画したボートの上でのものだった)。ドラマーのリンカーン・バレットについては、ゴート・ガールのファーストアルバムの中の1曲“A Swamp Dog’s Tale”で物語を朗々と読み上げる声を聴くことが出来る。メンバーの活動や興味は多岐にわたっているのだ。

そんなソーリーのメンバーに選盤をお願いしてみたら、いったいどんなレコードを選ぶのか。来日した5人にタワーレコード渋谷店のTOWER VINYL SHIBUYAでそれぞれレコードを一枚ずつ選んでもらい、そのレコードについて語ってもらった。企画の説明を受けた後に5人は思い思いにレコード棚に向かい、顎に手を当てて考え、すれ違い様に会話を交わす。ステージの上とはまた違った魅力のソーリーの姿がそこにあったように思えた。


 

レコードは今の時代の一番ピュアな音楽の聴き方

――みなさんは普段どんな感じでレコードを聴いているんですか? レコードを集めたりしていますか?

キャンベル・バウム 「18歳とかそのあたりからレコードショップで働いていて、レコードはずっと集めてるんだ。その店で買うと社割が効くのもあって、かなりマメに買っているよ(笑)」

マルコ・ピニ「僕はDJをやっているから、レコードは当然集めているよ。レコードには独特の手触りとか感触があるから、レコードでDJをやる方が僕は好きだな」

リンカーン・バレット「僕はクラブロックのサウンドスケープが好きなんだよね。この前新しいサンプラーを手に入れたから、それで何かできないかなって。今はそういうのに使えそうなクラブロックのレコードを探してる」

アーシャ・ローレンツ「私がレコードを探すのは、チャリティーショップが多いかな。ほとんどがジャケ買い。どんな音楽か全然わかんない状態で買う感じ(笑)。で、買って帰って〈こんな音楽なんだ〉って思って聴いて、家でサンプリングしたり。

チャリティーショップにあるものって一期一会っていうか偶然の出会いって感じだから、Spotifyで音楽を探したりするのとはまた違った変な感じの曲を知れたりするし」

ルイ・オブライエン「レコードは今の時代の一番ピュアな音楽の聴き方って感じがするよね。スマホで音楽を聴いてると他に色んな情報が入って来て、それが邪魔になって集中できなかったりするけど、レコードだとそういうことがないから、ゆっくり音楽を聴ける感じがする」

 

『Anywhere But Here』制作前にカーリー・サイモンをよく聞いていた

――それでは、先程店内で5人が選んだレコードを教えてください。まずはアーシャから。

アーシャ「私が選んだのはカーリー・サイモンのレコード(72年作『No Secrets』)。これを選んだのはセカンドアルバムの『Anywhere But Here』(2022年)を作る前によく聞いていたから。

CARLY SIMON 『No Secrets』 Elektra(1972)

SORRY 『Anywhere But Here』 Domino/BEAT(2022)

カーリー・サイモンは歌のハーモニーが凄くいいし、歌詞も時代を先取りしていた感じがして、そこも良くて。しかもそれをチーキー(生意気)ないたずらっぽい言い回しで表現しているのが素敵なんだよね。

中でも好きな曲はタイトルになっている曲でもあるけど“We Have No Secrets”。この曲はやっぱりメロディとハーモニーが素晴らしくて。あとは”You’re So Vain”も好き」

――キャンベルが選んだレコードはどんなレコードなんですか?

キャンベル「僕はフォークソングが好きなんだけど、今回選んだのもトラディショナルフォークのアルバム。サム・ラーナーのレコード(74年作『A Garland For Sam』)だよ。

SAM LARNER 『A Garland For Sam』 Topic(1974)

サム・ラーナーは19世紀後半にイングランドのノーフォークで生まれたフォークシンガーであり、フィッシャーマン(漁師)でもあった。彼は当時のポピュラー音楽として親しまれていた曲をレコーディングして残したんだけど、その中には20世紀以前に作られた曲もたくさんあって、それらが失われてしまう前に記録したんだ。これは彼の死後にそうやって残された曲を集めて出されたレコードなんだ」

――そんな古い時代から歌い継がれてきた曲が入ったアルバムなんですね。キャンベルは〈Broadside Hacks〉というトラディショナルフォークを再解釈するようなレーベルを作って活動しているじゃないですか。〈Broadside Hacks〉には元ゴート・ガールのネイマ・ボックやケイティ・J・ピアソンなどUKのミュージシャンがたくさん参加しています。そういうコミュニティがあることで、ある種の流れが出来ているところがあるんじゃないかと思っているんです。そもそもキャンベルがトラディショナルフォークに興味を持ったのはどんなきっかけだったんですか?

キャンベル 「トラディショナルフォークを聴き始めたのは18歳とか19歳の頃かな。その頃に60年代や70年代の音楽に出会って、その中にはブリティッシュのものやそうじゃないものもあったんだけど。まぁとにかく60年代や70年代のフォークのレコードの空気が好きで聴いていて。

最初は名前も聞いたことないし、どんな人なのか全然わかっていなかった人でも、その人のことを調べて、その周辺の音楽をどんどん発見してっていうのを繰り返していくうちに、当時の音楽に影響を与えていたさらに昔の音楽を自然と掘っていくって感じになったんだよね※」

※編集部注 キャンペルは取材後、「そのレコード、買いたいから取っておいて」と言い、サム・ラーナー『A Garland For Sam』を購入した

 

エイミー・ワインハウスは僕らの世代の声を代弁してくれた

――ドラマーのリンカーンはトニー・アレンのレコードを選びました。

リンカーン「うん。僕はトニー・アレンのアルバム『There Is No End』(2021年)を選んだんだ。

TONY ALLEN 『There Is No End』 Blue Note/ユニバーサル(2021)

トニー・アレンは僕のフェイバリットのドラマーの一人だから。マジで超凄いドラマーだよね。フェラ・クティのアフロビートの発明にしても彼の存在がやっぱり大きいわけだし、でもってそこから色んなジャンルに発展したり影響を与えたりしたわけで……。

このアルバムはグライムMCのスケプタや、友達のラヴァ・ラ・ルーが参加しているんだけど、それがまた新たな挑戦としてクールな要素を付け加えていると思うんだ」

――ルイはエイミー・ワインハウスのアルバムを選んだんですね。

ルイ「そう。僕が選んだのはエイミー・ワインハウスの『Frank』(2003年)だよ。

AMY WINEHOUSE 『Frank』 Island(2003)

エイミー・ワインハウスは僕らの世代の声を代弁してくれた本当に素晴らしいリリシストであり、優れたソングライターだって感じているんだ。知性的で本当に正直で、それと同時にファニーな顔も持っているような歌詞を書く人で。このアルバムはそういう自分に向き合ったような部分が出ていて、凄くいいアルバムだと思う。

なんていうのかな、彼女は常に演じていたところがあったっていうか、自分自身を過剰に飾り立てて本当の自分を見せていなかったって風にとらえられがちだけど、その実、本当の自分っていうものをしっかり曲の中に込めていた人だったんじゃないかって思うんだよ。このアルバムは、まさにそんなアルバムだと思う」

 

スーパーカー“Strobolights”がお気に入り

――では最後にマルコ。マルコが選んだのはアニマル・コレクティヴのパンダ・ベアのソロのレコードですね。『Person Pitch』は2007年にリリースされたソロとして3枚目のアルバムです。

PANDA BEAR 『Person Pitch』 Paw Tracks(2007)

マルコ「うん。このアルバムは凄くいいアルバムなのはもちろんだけど、ヒップホップのレコードじゃないアルバムの中で最もサンプリングの使い方が面白いというか、興味深い使い方をしているアルバムなんじゃないかって思うんだ。パンダ・ベアがここでやっていることって基本的にはポップソングのメロディなんかのサウンドを抜き取って作ったテクスチャーをめちゃくちゃメロディックなソングライティングに落とし込んでいるってことだと思うけど、そのやり方が超面白いなって。オリジナルのトラックにサイケな部分を見出してさ。

ボーカルにしても超クールだし。このアルバムのボーカルパートってある種の教会音楽を思わせるところがあったりするよね。そういうところも本当にユニークなレコードだと思う。

レコードのジャケットもめちゃくちゃ良いし。ジャケと中身の音楽との組み合わせって考え方だとこのアルバムが一番かもってくらい最高だよ。色んなところからサンプリングして集めたものが合わさって形を作っているっていう、そういう表現になっててさ。凄くいいよ」

――これはパンダ・ベアのレコードとは関係ない質問なのですが、マルコもキャンベルと同じようにアートイベントを行うコレクティブであり、音楽レーベルでもある〈Slow Dance〉を主宰しているじゃないですか。それで昨日(2023年10月9日)の夜、ソーリーのライブに先駆けてイベント〈Slow Dance Records Night〉がありましたよね。その時の話なんですけど……。

マルコ「あっ、来てくれたんだ。ありがとう!」

――そのイベントで〈GG Skips〉としてマルコがDJしていた時にスーパーカーの“Strobolights”が流れて来て、めちゃくちゃびっくりしたんですよね。全然予想していなかったというか、ここでスーパーカーが来るのかって驚いて。マルコは普段から日本の音楽を聴いているんですか?

「うん。けっこう日本の音楽聴いているよ! ロンドンに〈Honest Jon’s Records〉っていうレコードショップがあって、そこで僕は働いてたんだけど、その時の上司に〈DJ Japan Blues〉って呼ばれている人がいて。あっ、そんな名前だけど、その人はイングランド人ね(笑)。でも本当に日本の音楽に詳しい人で、その人に色々日本の音楽を教わったんだ。日本のトラディショナルミュージックとかテクノとか色々。

だけどスーパーカーに関しては友達のユウ(Yu Igarashi)に教えてもらったんだ。それで、DJで使ってみようってなって。昨日の夜はスーパーカーもかけられたし、めちゃくちゃ楽しかったよ※」

※スーパーカーの“Strobolights”は、この取材後に行われたソーリーのライブ本編でも最初に一人で出てきたマルコがSEとして使っており、メンバーを呼び込む出囃子な使われ方をしていた

 


RELEASE INFORMATION

SORRY 『Anywhere But Here』 Domino/BEAT(2022)

リリース日:2022年10月7日

■国内盤CD
品番:BRC712
価格:2,420円(税込)
解説書・歌詞対訳付き/ボーナストラック追加収録

■輸入盤CD 
品番:WIGCD493
価格:2,490円(税込)

■輸入盤LP
品番:WIGLP493
価格:4,090円(税込)

■輸入盤カセットテープ(数量限定)
品番:WIGMC493
価格:2,090円(税込)

■輸入盤LP(数量限定)
品番:WIGLP493X
価格:4,590円(税込)
クリアボトルグリーンヴァイナル仕様/Indie Exclusive

■輸入盤LP(数量限定)
品番:WIGLP493BR
価格:4,890円(税込)
クリアボトルグリーンヴァイナル仕様/日本語帯付き/解説書封入

TRACKLIST
1. Let The Lights On
2. Tell Me
3. Key To The City
4. Willow Tree
5. There’s So Many People That Want To Be Loved
6. I Miss The Fool
7. Step
8. Closer
9. Baltimore
10. Hem Of The Fray
11. Quit While You’re Ahead
12. Screaming In The Rain
13. Again
14. It’s Gone West (Bonus Track)