Clairo “Pretty Girl”（2018年）
クレイロの“Pretty Girl”は、まさにベッドルーム・ポップを象徴する一曲。ローファイすぎる簡素なサウンド、素朴で自然体な歌と歌詞（〈私はかわいい女の子になれるはず〉と繰り返される。ちなみに、クレイロはバイセクシュアル）、そして手作り感に満ちあふれたキュートなビデオ……。
“Pretty Girl”はYouTubeのアルゴリズムによって多くのユーザーにサジェストされ、2020年7月現在、実に5,200万回以上再生されている。DIYのささやかなポップソングでも大きな成功を収めることができる、と“Pretty Girl”は証明した。
その後、クレイロは元ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタム・バトマングリと共にデビュー・アルバム『Immunity』（2019年）を制作して、高い評価を受けた。ブラッシュアップされたプロダクションのもと（しかしベッドルーム感やパーソナルな質感は失われていない）、優れたシンガー・ソングライターとしての才能を『Immunity』は伝えている。
boy pablo “Everytime”（2017年）
ボーイ・パブロことニコラス・ムニョス（Nicolas Muñoz）は、チリ系ノルウェー人で、ベルゲン出身。この曲のビデオからもわかるように、ボーイ・パブロはバンドでもあり、同時にムニョスのソロ・プロジェクトでもある。
“Everytime”はこれまたベッドルーム・ポップの潮流を象徴する一曲で、ハンドメイドなビデオと共にじわじわと広がっていった。ビデオではピンクのフーディーに短パン姿でミント・グリーンのVOX Mark IIIを抱えたボーイ・パブロの姿がかわいらしく、なんともまぶしい。
ギターのサウンドなどは、あきらかにマック・デマルコのフォロワー。ただ、彼の音楽はドリーム・ポップの要素が多分に含まれていて、特に今年発表された“hey girl”や“honey”といった曲を聴けば、その独特のセンスがよくわかるはず。
10月23日（金）には、ついにデビュー・アルバム『Wachito Rico』をリリースする予定。
Still Woozy “Goodie Bag”（2017年）
米オークランドのSSW、スヴェン・ガムスキー（Sven Gamsky）aka スティル・ウージー。彼は、もともとフィード・ミー・ジャック（Feed Me Jack）というバンドに所属していた。
「ブロックハンプトやリル・ベイビーも聴けば、ニール・ヤングも聴いていた」と語っているように、スティル・ウージーの音楽は実に折衷的。後述するスティーヴ・レイシーやオマー・アポロのように、特にソウル、ファンク、ヒップホップからの影響が色濃く出ていて、ベースラインが強調されたこの曲からは、その個性がよくわかるはず。
Rex Orange County “Sunflower”（2017年）
アルバム『Apricot Princess』（2017年）がロング・セラーとなり、ここ日本では〈SUMMER SONIC 2018〉に出演したことも記憶に新しい、英ハンプシャー出身のレックス・オレンジ・カウンティ。タイラー・ザ・クリエイターのお気に入りで、彼のアルバム『Flower Boy』（2017年）への参加も話題になった。ピーター・コットンテイルの“Forever Always”（2018年）でチャンス・ザ・ラッパーやダニエル・シーザーと共演しており、アメリカのラップやR&Bのシーンで愛される存在でもある。
レックスは職人的なソングライターであり、優れたメロディーメイカーだ。それこそ、彼にとって憧れの存在であり、共演もしたランディ・ニューマンやベニー・シングスを受け継ぐ才能だろう。それは、この出世曲“Sunflower”を聴けばよくわかるはず。
2019年には『Pony』でメジャー・デビュー。今年5月に来日公演を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止に。多くのファンを悲しませた……。
Gus Dapperton “Prune, You Talk Funny”（2017年）
坊ちゃん刈りのようなヘア・スタイルやファッションが特徴的で、アイコン感が抜群、かつジェンダーレスな佇まいのガス・ダパートン。この曲で聴けるように、80sシンセ・ポップを思わせる、なんともノスタルジックなインディー・ポップの作り手だ。以前はNYで活動していたが、現在はニュージャージーで両親と暮らしているのだとか。
2019年にファースト・アルバム『Where Polly People Go To Read』を発表したあと、ベニー（BENEE）との“Supalonely”がTikTok経由で大ヒットし、さらなる成功を手にした。今年の9月18日（金）にはセカンド・アルバム『Orca』をリリースする予定で、注目が集まっている。
