避けて通れない人たち

 HAIIROのデビューに手を貸したEccyを久々に3曲の制作に起用したのも、いわば初心に返る試みに見えるが、2人の再会はふとしたことから実現したという。

 「Eccy君が音楽をやめたって聞いて、〈Eccy君のセカンドを久しぶりに聴いたら超やばかった〉みたいなことをTwitterで書いたら、俺も7、8年連絡取ってなかったんですけどリプライが来て。それが夜中の3時ぐらいだったんですけど、その時になんか書いときたいなと思って4小節だけ書いて、次の日よく考えて、一緒に曲をやらないかって話をしたんですよ。そしたら〈新しいビートはもう作れないけど、使ってほしい昔のトラックだったらある〉みたいな話で、そのなかから“forte pt.2”っていうタイトルで一日で書いてすぐ録った。他の2曲はその後でEccy君が復活して新しく作ってくれたビートですね」。

 制作の始まりこそ、ドナルド・バードの同名曲をモチーフに現代ネット社会の在り方を問う“Think Twice”だったそうだが、ラッパーとしてあるべきスタンスとの葛藤が時に向かわせた激しさや苦悩は影を潜め、HAIIROのペンはここでよりフラットに素の自分へと近づく。かねてから念願のCHIYORIとの共演が実現した“Mood”。これまた〈避けて通れない人の筆頭〉というDJ Mitsu the Beatsの叙情的なピアノが誘うビートで、生まれくる愛娘に送った“Flower”。さらには憧れだったというZZ PRODUCTIONからSTERUSSのcrime6を迎え、自身の歩みにファンへの感謝を重ねる“My Fan”――〈強くなりたくて始めたMusic/今は優しくありたくてPlay The Music〉という“forte pt.2”のラインを地で行く、愛満ちる作風は、今後同世代のキーマンになるとHAIIROが評する1Co.INRのビートに泉まくらを迎えたラヴソング“二人の秘密”などにも結実している。その“二人の秘密”でのコラボに加え、お世話になった街の人と喫茶店に宛てた“春を目指して”でも全編の語りを託した彼女との曲作りは、とりわけ忘れられないものになったそう。

 「泉まくらとは面識もなかったんですけど、お互いシンパシーを感じてたのを後々知って。で、いざ曲作ろうってなった時に俺の歌詞と彼女の歌詞の最初の一小節がほぼ一緒で、それを同時に書いてたっていうのにも驚いたんですよね。それが“二人の秘密”なんですけど、登場人物がどういう奴かまでLINEでやりとりしたし、お互いを思って書いた。だから俺は彼女の歌詞に救われたし、彼女も俺の歌詞に救われていたらいいなと思う」。