アイドル映画からスタートし、自伝的な青春映画群で世界から注目された台湾の侯孝賢が、歴史と正面から対峙したこの一大叙事詩でヴェネツィア映画祭グランプリを獲得、名実ともに巨匠となった89年の代表作。日本統治時代の終わりから中華民国が台北へ遷都するまでの4年間のとある船問屋一家の物語。大陸側の人間によって何万人もの台湾側の人が殺害されるという“ニ・二八事件”というタブーを正面から描いたことで話題となったが、映画はセンセーショナルな描写を避け、ただその時代に生きた人間を少し遠くから見つめ続ける。家族が悲劇に襲われた後も、黙々と食事をする長老(李天禄)の姿が感動的。