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物語を書きたくなった

――その“浪漫”と“へなちょこ”では初めて作曲も担当されていますね。曲まで書いて提出したのは今回が初めてですか?

「初めてです。10曲くらいワンコーラス作曲して提出して、SCRAMBLESで編曲してもらったりしながら、私とPEDROチームで話し合って選んだのがその2曲でした」

――どんな感じで作曲していくんですか。

「ベースラインとメロディーを入れて、曲によってはギターとドラムの打ち込みも入れて、って感じでしたね。いまは勉強してもう少しDTMを理解しつつあるんですけど、これを作ってたのが2月とかで、その当時はホントにDTM始めたばかりで、コード進行とかスケールもまったく理解できてない状態だったんですよ。初期衝動みたいな、自分から出たものだけで作ってたので、松隈(ケンタ:サウンド・プロデューサー)さん的にはおかしなサウンドだったと思うんですけど、〈ここをもっとこうしたい〉って意見を出しながら直してもらったりとかしたので、そんな完璧に自分一人で出来た曲ではないかもしれないです」

――逆に言うと、現在はもっと習熟されているということですね。

「う~ん、勉強はしてます(笑)」

――そのなかでタイトル曲の“浪漫”は、曲調自体もいままでのPEDROとは全然違う感じになっています。

「これは〈こういう曲にしたい〉とか、〈あのバンドの曲にインスピレーションを受けて〉とか、っていう作り方を一切できてなくて、それこそ自分が思い立ったままに出た言葉とメロディーで作ってたので、正直言うと〈結果的にこうなった〉っていう印象が大きくて。最終的にどういう曲になるか自分でも想像できてなかったんですけど、曲の雰囲気もリズムもいままでのPEDROにあんまりなかった、凄く温度感のある曲になって、想定外というか、自分の想定できる範囲ではない曲が出来たので満足してます」

――曲の原型はどういうものでしたか?

「いちばん最初はベースラインから入れましたね。ベースラインから入れて、そこにメロをはめて。で、そのベースのリズムに合うようなメロを、自分で作ってた別の曲から持ってきたりして、とりあえず言葉を詰め込んだ曲にしてみたいと思って」

――こういう揺れる感じの曲調でフロウするイメージは最初からあったんですね。

「はい。PEDROって疾走感のあるタテ揺れの曲が多いし、自分もそれが好きなんですけど、ヨコ揺れの心地良いサウンドもあったらいいなと思って。それは考えてましたね」

――この言葉数の多い歌詞自体も、いままでとは違う世界ですね。

「PEDROでいろんな歌詞の書き方をしていくなかで、創造欲みたいなのが自分の中で高まったというか。前は自分に起こった出来事とか自分の感情とか、自分の人生の話しかできなくて、自分の名刺みたいな歌詞しか書けなかったんですけど、いろんな書き方をしてみたいと思ってやっていくなかで、ひとつの小説、ひとつの物語、映画みたいなものを書きたい欲が大きくなって。現実離れしすぎた話を書くのが苦手だって気付いて、そんなブッ飛んだ書き方じゃなくても、おもしろい物語が書けるんじゃないかと思って」

――歌詞から浮かぶ光景はEPの“生活革命”に通じるものというか、1対1の関係を描いた歌詞が増えたなと思いました。

「確かにそうですね。“浪漫”は自分で作った話に浸って書いたというか、まるで現実の自分もそうであるかのように書いてみたら、おもしろいくらいすらすら書き進んだ感じでしたね」