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コラム

ラン・ザ・ジュエルズ(Run The Jewels)の言葉がBlack Lives Matterの時代に持つ力

新作『RTJ4』のリリックを池城美菜子が解説

Photo by Tim Saccenti

2020年5月25日に起きた白人警察官によるジョージ・フロイドの暴行死をきっかけに、全米ではブラック・ライヴズ・マター(Black Lives Matter)運動が再燃、これまでにない規模に広がっている。これを受け、〈世界はでたらめなことで溢れかえっている〉と新作を前倒しでリリースしたのがラン・ザ・ジュエルズ。今回、その『RTJ4』がCD/LP/カセットテープでリリースされた。

キラー・マイクとエル・Pによるラン・ザ・ジュエルズは、エル・Pがプロデュースしたキラー・マイクの『R.A.P. Music』、キラー・マイクが参加したエル・Pの『Cancer 4 Cure』(いずれも2012年)という互いのアルバム制作を機にスタート。それぞれソロ・キャリアはあったものの、RTJとしてのブレイクで現在のシーンを代表する存在になっている。

その先鋭的なヒップホップ・サウンドと巧みなラップはもちろん、権力やシステムの不正に抗う政治的なリリックも強烈な個性となっているRTJ。『RTJ4』の歌詞対訳を担当したライターの池城美菜子が、彼らのリリックとブラック・ライヴズ・マターとの関係性について解説する。 *Mikiki編集部

 

ラン・ザ・ジュエルズ結成はブラック・ライヴズ・マターが生まれた2013年

〈ラン・ザ・ジュエルズ〉とは、高価な物を盗む、つまり強盗を意味するスラングだ。ブルックリン子のエル・Pとアトランタ代表のキラー・マイクによるヒップホップ・デュオは、2013年に結成された。奇しくも、延々と続く警察権力による黒人へのハラスメントへの抗議運動に、〈ブラック・ライヴズ・マター(以下、BLM)〉との名前がついた年だ。

本国では、シーンのもっとも濃いファン層――チャートの動向は無視して、ヒップホップ・ブログから情報を得るタイプの――に強烈に支持されている。エル・Pとキラー・マイクは1975年生まれの45才なのだが、2010年代に結成したせいか若いファンが多く、加えて〈あ、カンパニー・フロウのエル・Pね〉とか、〈キラー・マイクって、アウトキャストのダンジョン・ファミリー出身だよね〉とパッと出てくる年代も聴いているのが強みだ。

カンパニー・フロウの97年作『Funcrusher Plus』収録曲“8 Steps To Perfection”

アウトキャストの2001年作『Big Boi and Dre Present... Outkast』“The Whole World (Feat. Killer Mike)”

 

地元ではなくシステムを燃やそう――キャラ立ちラッパー/活動家のキラー・マイク

ラン・ザ・ジュエルズの、どこが優れているか。エル・Pが作る、サンプリング重視の凝りまくった金属的なビートと正統派のラップに、キラー・マイクのエモーショナルながらこれまた技巧派のラップががっつり絡み、まったく聴き飽きないのがひとつ。それから、社会意識が高く、ときに政治批判、ときに自分の不甲斐なさをさらして、骨のあるリリックを紡ぐことがふたつ。

キラー・マイクは、非常にキャラが立ったラッパーである。Netflixで「キラー・マイクのきわどいニュース」というぶっ飛んだ番組があるほどに。今回、彼がアトランタ市長の要請で、5月29日に抗議運動の暴動化を食い止めようと「地元を焼き尽くすのをやめよう、このシステム自体を燃やそう」と涙ながらに訴えたスピーチがヴァイラルになり、ヒップホップ・コミュニティー外にも届いたのは記憶に新しいだろう。

キラー・マイクが2020年5月29日にアトランタ市長ケイシャ・ランス・ボトムズの記者会見で行ったスピーチ

〈活動家〉とだけ紹介され、本業を無視されたのは、いちファンとしてとても悔しかった。そこはやはりヴェテラン、盛り上がりを見て4作目『RTJ4』のリリースを急遽、2日ほど早め、アルバムの内容ががっちりBLMにつながっていて、さらに話題に。 

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