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脱退の悲しみとバンドで音を出せる喜びと

――前作はゲスト・ヴォーカルが4人も参加したり、ストリングス・カルテットが加わったりして外の世界との交流が音楽に反映されていましたが、新作はバンドの一体感を強く感じさせるサウンドですね。

「静まり返った東京で自分と向き合いながら曲を作っていたこともあって、不純物を無くしたシンプルな曲を作る、ということは意識していましたね。サウンド・プロダクションの段階で結構いろんな音を入れたけど、曲の原型はシンプルなんです。その一方で、最新のテクノロジーを導入して、人間が楽器を弾いた時に生まれるエネルギーと最新のシンセじゃないと出せない音をいかにハイブリッドさせるか、ということも大切にしていて。生のドラムの音とドラムマシーンの音をどうやって混ぜていくか、とか、そういうバランスをとる作業をすごく丁寧にやりましたね」

――ドラムといえば、中原君が脱退したことは、やはり音作りに影響を与えました?

「もちろん影響はあります。中原ならこう叩くだろうな、という予測をしながら作曲していたところもあるので。でも、その制約がなくなったことで、結果的に新しいロットをみんなに見せることができたんじゃないかと思います。リズムに関しては、これまでより自由に作っていきましたね」

工藤明(ドラムス)
at DUTCH MAMA STUDIO
 

――コロナ、そして、中原君の脱退と、逆風の中のレコーディングでしたね。

「もう、すべてがカオスでしたね。明日のレコーディングがキャンセルになってしまうかもしれない、というエマージェンシーな状態でアルバムを作っていたので、自分が悲しみにくれると作れなくなってしまうと思って、悲しみは箱に入れてあるんです。そのうち、箱の蓋をあける日が来ると思うけど。とにかく、ずっと熱湯に浸かっているような状態で感覚が狂ってるんですよ(笑)。コロナはカオスだし、脱退の悲しみもあるし、でも、スタジオでは音を出せる喜びが満ち溢れていて」

――混沌の中から生まれた作品なんですね。前作はロットの第1章の完結編だと思いましたが、今回は新しい章の始まりというか、新しく生まれ変わったロットの産声のような気がしました。力強くて、真っ直ぐで、生命力に満ち溢れている。

「シングルでリリースした“NEVER FORGET”が新作のために最初に書いた曲なんですけど、この曲をスタジオでレコーディングした時に、自分が新しい扉を開いた気がして。その新しい感覚を、みんなに聴いてほしいと思ったんです。〈これがいまのロットです!〉って。そして、この曲が新作の核になる予感がしたんですよね。毎回、アルバムを作る時にはそういう曲があるんですけど」

『極彩色の祝祭』収録曲“NEVER FORGET”