15年目を迎えようと余計な気負いはなし! ただ単純にかっこいい4人の鳴らす、ただ純粋にかっこいいロックンロールが、今年も最高のアルバムに実を結んだ!
いつもの通りにかっこいい
ザ・クロマニヨンズの〈出現〉から今年でちょうど15年目になる、らしい。なにせ、アニヴァーサリーにはまるで興味のなさそうな甲本ヒロト(ヴォーカル)と真島昌利(ギター)なので、外野が勝手に盛り上げるしかないが、15年というのは凄いことだ。ブルーハーツとハイロウズの活動が10年間だったことを考えると、小林勝(ベース)と桐田勝治(ドラムス)を交えた現在のラインナップがよほど肌に合っているのだろう。ほぼ毎年必ずアルバムを出してツアーを回り、悪いうわさもまったく聞こえてこない。実にめでたい15年目である。
そんな彼らの新作といえば、〈いつもの通りにかっこいい〉と書いておけば大体間違いはない。のだが、やはりアルバムごとに微妙な変化はあって、ファンはそこを愛でてきた。音楽性の基本は、パンク・ロックのスピリットを持って奏でるロックンロール、ブルース、ブギ、オールディーズ。そこに加わるスパイスとして、11作目『ラッキー&ヘブン』(2017年)はミッドテンポ中心の実にグルーヴィーな仕上がりだったし、2019年の前作『PUNCH』では“リリイ”などアコースティック・ギターの柔らかい音色がとりわけ耳に残り、“長い赤信号”のヒロト&マーシーの味わい深いハモリにじんときた。ロックの神様は細部に宿る。誰かに「ザ・クロマニヨンズはずっと変わらないね」と言われるたび、「そうだね」と答えつつ、「でも今回はここが違うな」と胸の内でつぶやきながら、ファンはより深く強くザ・クロマニヨンズの世界にハマってきたのだ。
2020年はコロナ禍の影響でツアーが中断され、アルバム制作も危ぶまれたが、無事リリースが決まったことをまず喜びたい。ザ・クロマニヨンズ、丸14年で14作目のニューアルバム『MUD SHAKES』が完成。その前には先行シングル“暴動チャイル(BO CHILE)”もリリース済みだ。曲名だけ見ればジミ・ヘンドリックス“Voodoo Chile”のもじりのように思えるが、〈BO CHILE〉が示唆するようにボ・ディドリー風のジャングル・ビートに乗せたご機嫌なアップ・ナンバーに仕上がっている。なお、そのカップリングに収録された“東京ブキズキ”はタンバリンとクラップの響きが楽しい明朗ロックンロールで、アルバム未収録なのでぜひシングルでチェックしてほしい。