タワーレコード限定のコンピレーション・アルバム『IN THE CITY - Soul Mastercuts』が2021年9月22日(水)にリリースされる。『Midnight Love - SMOOTH R&B ESSENTIALS』(2020年)やその続編『Midnight Love II - SMOOTH R&B ESSENTIALS』(2021年)など、好評を博してきたタワレコ企画盤の新たな一枚だ。テーマは、ずばり〈シティ・ポップやAORが再評価される今こそ聴くべきソウル・ミュージック〉。国分寺のミュージック・バー〈Future Flight〉のマスターである谷田部博義が〈心地よいグルーヴ〉にこだわって18曲を選曲している(谷田部による楽曲紹介を掲載した〈タワレコ販促スタッフぶろぐ〉の記事はこちら)。
この記事では、そんな本作の魅力をシティ・ポップ/AORに精通するブルー・ペパーズの福田直木が解き明かす。シティ・ポップ/AOR視点で注目すべきは、とあるプロデューサーの仕事だった。 *Mikiki編集部

AOR寄りのソウル/ソウル寄りのAORへの近道
タワーレコード限定で発売されたコンピレーションCD『IN THE CITY - Soul Mastercuts』。〈シティ・ポップやAORが再評価される今こそ聴くべきソウル・ミュージックとは?〉というテーマ通り、78〜84年のソウル・ミュージックの中から、とりわけ洗練度が高く、AORとしても楽しめる18曲がセレクトされている。
CDの解説を執筆された小渕晃氏監修による「シティ・ソウル ディスクガイド」のコンセプトにも通じるところが多いが、かつて90年代に流行したフリー・ソウル・ムーヴメントの中では敬遠されがちだった、80年代的でキラキラとしたサウンドを肯定的に捉えている点は、昨今のシティ・ポップやAORの再評価ともリンクしていると言えるだろう。
しかしながら、このようなAORとソウルの中間とも言うべきサウンドは、それ単体を指す確立されたジャンル名は浸透しておらず、お気に入りの楽曲に出会う難易度はまだまだ高いと言わざるを得ない。
そこで、本記事では『IN THE CITY - Soul Mastercuts』を入り口に、〈AOR寄りのソウル〉あるいは〈ソウル寄りのAOR〉に出会う近道として、7曲目のファーザーズ・チルドレン“Hollywood Dreaming”(79年)および14曲目のマクラリーズ“For You”(82年)をプロデュースしたウェイン・ヘンダーソンの仕事に注目してみよう。
新たなサウンドを創った重要プロデューサー、ウェイン・ヘンダーソン
クルセイダーズの結成メンバーとしてフュージョン界を黎明期から支えたトロンボーン奏者、ウェイン・ヘンダーソン。彼は76年にグループを脱退すると、自身の設立したアット・ホーム・プロダクションズを拠点に、70年代後半から80年代初頭にかけてプロデューサーとして精力的に活動。自身のソロ作やロイ・エアーズとの競演アルバムを発表する傍ら、プレジャーやサイド・エフェクトといったソウル/ファンク系のバンドや、ロニー・ロウズ、ボビー・ライルといったフュージョン系アーティストを数多く送り出した。
クルセイダーズのメンバーといえば、ジョー・サンプルやラリー・カールトンらがランディ・クロフォード、マイケル・フランクス、スティーリー・ダンらAOR系アーティストの名作にセッション・プレイヤーとして参加していることが知られているが、ウェインの主戦場はそれに比べるとソウル寄り。ジャズをルーツに持ち、フュージョンとソウルを掛け合わせて新たなサウンドを創りあげたプロデューサーとして、クインシー・ジョーンズやナラダ・マイケル・ウォルデンらと並ぶ重要人物に数えたい。
AORファンにベスト・フィットなウェイン・ヘンダーソンの仕事
以下にウェインとアット・ホーム・プロダクションズ関連の作品から優れた楽曲をいくつかピックアップしてみた。AORのファンでは、特にジョージ・ベンソンやシーウィンドあたりが好きな方の耳にベスト・フィットなサウンドだろう。
Side Effect “Finally Found Someone”(76年作『What You Need』収録曲)
Allspice “Slipped Away”(77年作『Allspice』収録曲)
Pleasure “Happiness”(78年作『Get To The Feeling』収録曲)
Roland Bautista “Steal Your Love Away”(78年作『The Heat Of The Wind』収録曲)
Ronnie Laws “Live Your Life Away”(78年作『Flame』収録曲)
The Boppers “I Believe In You”(78年作『The Boppers』収録曲)
Willie Bobo “Fairy Tales For Two”(78年作『Hell Of An Act To Follow』収録曲)
Bobby Lyle “Dream Lady”(79年作『Night Fire』収録曲)
Michael White “I Like It”(79年作『White Night』収録曲)
Hiroshima “Never, Ever”(79年作『Hiroshima』収録曲)
Wayne Henderson “Dancin’ Love Affair”(79年作『Emphasized』収録曲)
Roy Ayers & Wayne Henderson “Thank You Thank You”(80年作『Prime Time』収録曲)










ウェインのプロデュース作品はどれも洗練されたハーモニーとソウルの高揚感が同居しており、〈AOR寄りのソウル〉として楽しめるはずだ。このコンピレーションでは、サン“Dance (Do What You Wanna Do)”(78年)、ファイアワーク“Make It Last”(78年)、ジーン・ダンラップ feat. リッジウェイズ“It’s Just The Way I Feel”(81年)あたりにも似た空気感が漂っている。
また、この質感が気に入った方ならば、ジョージ・デュークやスキップ・ドリンクウォーター(〈Zembu Productions〉)などのプロデューサーや、スキップ・スカボロウやラルフ・マクドナルド(アンティシア)あたりのソングライターに着目してみるのもおすすめだ。
ディスクガイドを活用して『IN THE CITY』の世界を広げよう
どのジャンルにも共通するが、特定のプロデューサーやソングライターを軸に過去の音楽を掘り下げていくことは、自分の好みに合う音楽に出会う最短経路であり、インターネットを通じて膨大なデータベースにアクセスできる現代においても、体系的にまとまった情報を得る手段として、ディスクガイドの有用性は依然として高い。先述の「シティ・ソウル ディスクガイド」(筆者も執筆に参加)や、「ブラック・コンテンポラリー・ミュージック・ガイド」(金澤寿和、JAM、林剛 著)などは、この『IN THE CITY - Soul Mastercuts』で打ち出された〈今こそ聴くべきソウル・ミュージック〉の世界を広げる一助となるだろう。
RELEASE INFORMATION

リリース日:2021年9月22日(水)
品番:PROI-1138
価格:2,300円(税込)
最新マスタリング/SHM-CD仕様/歌詞付
TRACKLIST
1. Dayton “The Sound Of Music”
2. Windjammer “Tossing & Turning”
3. Maze feat. Frankie Beverly “Before I Let Go”
4. Sun “Dance (Do What You Wanna Do)”
5. Colorblind “Crazy”
6. Howard Johnson “Keepin’ Love New”
7. Father’s Children “Hollywood Dreaming”
8. Con Funk Shun “Loveshine”
9. A Taste Of Honey “I Love You”
10. Jermaine Jackson “You Like Me Don’t You”
11. Phyrework “Make It Last”
12. The Blackbyrds “Love Don’t Strike Twice”
13. Jr. Tucker “Mr. Telephone Man”
14. The McCrary’s “For You”
15. Cameo “We’re Goin’ Out Tonight”
16. Dazz Band “Everyday Love”
17. Gene Dunlap feat. The Ridgeways “It’s Just The Way I Feel”
18. Future Flight “Hip-Notic Lady”

