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大切な曲なので、じっくり温めていた

――そんな中、先日4作目の配信シングル“グッバイ来世でまた会おう”がリリースされました。もともとはカモシタさんのソロ時代の曲だったんですよね。〈大切にしている曲です〉とツイートされていましたが、この曲はどういう曲なんですか?

「作ったのが3年前のちょうど今日(※取材日の3月30日)で、その時は高2から高3にかけての春だったんですけど、当時、死に対する恐怖がすごくあって〈絶対死にたくない〉と思っていたんですね。〈死ぬとはどういうことなんだ?〉っていろいろ調べていて、その結果、自分が導き出した納得できるような考え方が、〈死んでも死んでない〉っていうことだった。〈いつまでも忘れなければまた会えるかもしれない〉っていう考え方があるのを知れて、そういう人生の指針になった考え方の曲です」

――なぜ当時、死にたくないと強く思っていたんでしょう。

「今はそこまでそんなこと思わないんですけど、当時は死んで消えてしまうことが怖かったんですね。死んじゃったら100年後に覚えてくれてる人なんていないだろうし、だとしたらそれまで生きてた人生にも意味があったんだろうか?って思うだろうし。自分が忘れられるだけじゃなく、自分がいろんな人のことを忘れちゃうのも嫌だし。そういうことを考えていて、死ぬのが怖かったんです」

――それは精神的に落ちていてそう思ったのか、逆に人生が楽しいから死にたくないと思ったのか、それとも何か別の原因があったのか、どうでしょう?

「その時は楽しかったんだと思います。楽しくて素敵な日々が無くなるのが嫌だった。でも、その後には〈どうせ死ぬなら楽しいまま死にたい〉っていう気持ちにもなったんですけどね(笑)」

――例えば誰かを亡くした経験がこの曲を作るきっかけになっているのでしょうか?

「この歌を作る直接のきっかけではないんですけど、死についてずっと考えるようになったのは、中3の時に祖母が亡くなってからだと思います。死というものは身近にもあって、いつか自分にもその順番が回って来るんだろうなって。そういう考えはこの曲にも生きてますね」

――なるほど。〈これを録るために4人は集まった〉というツイートもされてたんですが、これはどういう意味ですか?

「この曲は初めてソロのライブをやった時からある曲で、ずっと歌い続けてきた曲でもあって、初めてバンドで録音しようってなった時も、この曲だったんですね。この曲を録るためにメンバーを集めて、私が宅録で打ち込んだものをみんなに送って録音することにしたんです」

――そういう意味だったんですね。でも、配信シングルとしては4作目ですよね。それはなぜですか?

「EP(『片手に花束を』)に入れる話もあったんですけど、大切な曲なので、もっとじっくり温めて出そうという話になって」

――今がその時だったっていうことですね。

「そうですね。時は来た……っぽいです(笑)」

 

猫になりたいな

――自分はこの曲を聴いて、死生観や宗教のことを考えたんですね。宗教と言っても胡散臭いものではなく、もともと宗教というのは〈死〉とか〈老い〉、〈病〉といった人の不安を解消するために起こったもので、その中でも絶対誰にでも起こる一番大きな不安というのが〈死〉である。だから〈極楽〉とか〈輪廻転生〉などの考えが生まれた、と。だから、“グッバイ来世でまた会おう”というのも、〈死〉に対して不安だと感じなくするための一種の宗教観なんじゃないかなって思ったんです。こういう点についてはどう考えていますか?

「まさにそうですね。この時は自分が不安で、自分が納得いく答えを出したかったので、自分のための信じるものみたいになっているところはあると思います。自分にとっては、輪廻転生というか、生まれ変わりがあってほしいなっていう考え方が一番納得いくものでした」

――でも、そこで生まれ変わったのが猫、というのがこの曲の面白いところですよね。人ではなくて。

「そうですね。人もいいけど……猫がいいですね(笑)。家で2匹猫を飼っていて、私は人間なんですけど……〈私は人間なんですけど〉だって(笑)。私は人間として生きていて、例えば悩んで家に帰ってくることもあるんですけど、寝ている猫の顔を見ると幸せそうで、けがれもないし、誰にも傷付けられずに平和に生きていて、ああ、猫になりたいなって思っちゃうんですよね」

――猫になりたいと言えば、スピッツの“猫になりたい”という偉大な先輩の猫ソングもありますけど、やっぱり犬とか他の動物ではなくて猫なんですね。

「スピッツの曲は最近Kaitoに教わりました(笑)。人間は喋れるし、いろんなことを考えることもできるし、嬉しい・悲しいって言葉にできるのは素敵なことだなって思う時もあるんですけど、もっと本能のままに、けがれのない、戦争のない世界で生きてられる猫がいいなって思んですよね。人間はちょっともう疲れちゃって(笑)。でも、その時々によって私の考え方も変わるんですけどね(笑)」

――この時はそう思ってた、と。

「この時は、一刻も早く人間を辞めたかったです(笑)」

――(笑)。この曲はどうやって出来たんですか? 詞が先とか、曲が先とかありますけど。

「あ! それは本当に両方同時なんです。どこかからの帰り道、そういうことを考えながら歩いてたら、歌詞とメロディーが一緒に出てきました」

――〈グッバイ来世でまた会おう〉というワンフレーズだけで、綺麗にハマってますもんね。

「え! たしかに! 4・4・5ですね」

――(笑)。そのフレーズにどうやって伴奏を付けたんですか?

「帰って急いでギターを弾きながら録りました。バンド・サウンドにしたいっていう気持ちが元からあったので、ギターとベースは自分で弾いて、ドラムはパソコンに打ち込んで。メンバーに、録ったデモとコードと、〈やりたいアレンジを加えていただければ〉って感じの文を送りました」

――ストイックな人も、変わってる人もいるのに、それだけで出来ちゃうんですね。

「そうです、みんなすごいので(笑)。でもどこかで自分のルーツは入れたいという気持ちはあるみたいで、例えばKaitoはその時ハマってたラウド(・ロック)みたいなフィルを入れたり、激しめにしてみたり、みんなちょっとずつ自分らしさを入れてるみたいです。今回は新たに録り直したんですけど、当時と比べてそういう部分はちょっと柔らかくなったかもしれないですね。バンドとしてどういう音にしたいかを考えるようになったから、以前よりまとまりがあるサウンドになったと思います」

――〈バンドとしてどういう音にしたいか〉というのは具体的にどういう音にしたかったんですか?

「みんな、歌を聴かせたいとは言ってくれてます。でも私はもっとみんなの音を聴かせたいんですけど(笑)」

――やっぱり意見が割れてるじゃないですか(笑)。

「(笑)。でもそれがうまいこと合致するバランスというのがどこかにあって、その結果、うまく丸くなったんじゃないかなと思います」

 

今後の目標

――ライブ活動の制限がまだまだある中で、インナージャーニーは今後どのような活動をしていきますか?

「音源もいっぱい作りたいですし、ゆくゆくは……どこだろう……デカい会場で、お客さんがぎゅうぎゅうになれる状態でライブをやりたいです」

――リリースの予定は?

「今年の夏とかにはEPを出して、来年にはアルバムを出したいなという気持ちはあります」

――曲のストックはありますか?

「ちょっと増えてきたかな……という感じです。それとフェスに出たいというのはみんなで言っていることですね。〈FUJI ROCK(FESTIVAL)〉とか〈RISING SUN(ROCK FESTIVAL)〉とか〈サマソニ(サマーソニック)〉とか、大きなフェスに出たいです」

――バンドでもそういう目標は共有してますか?

「いや、あんまりしてないです。でもバンドをやり始めた時にKaitoが〈このバンドが(横浜)アリーナにいるのが想像できるんだよね〉みたいなことを言っていたし、デッカい会場でやりたいというのはみんな思ってることだと思います」

――じゃあ、目標に向かってやることはたくさんありそうですね。

「そうなんです。たくさんあります(笑)」

 


LIVE INFORMATION
インナージャーニー初ワンマン・ライブ「インナージャーニーといっしょ」
2021年5月21日(金)東京・渋谷WWW
開場/開演:18:00/18:30
料金:3,000円(税込)+1ドリンク600円
チケット:https://eplus.jp/sf/detail/3407280002-P0030001?P6=001&P1=0402&P59=1