前作『Norman Fucking Rockwell』で絶賛の嵐を受けたラナ・デル・レイのニュー・アルバムは、富と名声を得た自身への言及が目立つ。“White Dress”では音楽業界に対する幻滅を歌い、“Let Me Love You Like A Woman”にはまとわりつく喧騒を遠ざけたい心情が滲む。彼女の自伝的な歌詞が多く、みずからの華やかさよりも暗部に焦点を当てている。たおやかな雰囲気が際立つサウンドは、哀愁混じりの虚無感を漂わせつつ、音としての気持ち良さがある。カントリーやフォークなどの要素が顕著で、憂いと甘美さを併せ持つ彼女のヴォーカルとの相性はベストマッチ。その歌声は、ポップスターというペルソナがもたらす痛みでいっぱいだ。