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コラム

テレックスのテクノ革命よ、もう一度。細野晴臣が敬愛するシンセ・ポップ・トリオに『This Is Telex』で再入門

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軽妙さと抑制が絶妙なシンセ・ポップ、知性と諧謔性に満ちたカヴァー

最大のヒットにして代表曲の“Moskow Diskow”(79年)を聴いてみれば、彼ら特有の魅力にたちまち気づくだろう。クラフトワーク“Trans Europe Express”(77年)へのアンサー・ソングとも言えそうな汽車ポッポ系シンセ・ポップの傑作で、汽笛や機関の律動を模したシンセサイザーのサウンドと〈ロボ声〉の融合が愉しい。その実トラック全体としてはなかなかにミニマルである種のストイシズムも目立つ。

『This Is Telex』収録曲“Moskow Diskow”

こうした軽妙さと抑制の絶妙なバランス感は、80年のシングル“Euro-Vision”を聴いてみてもわかる。タイトル通りこの曲は、ヨーロッパで長年開催されている同名の権威的ポピュラー・ソング・コンテストにテレックスがベルギー代表として何故か出場すること(ハメ?)になった時に書かれたもので、大仰なコンテストのバカバカしさを歌詞と音で揶揄しており、そうした空気を色濃く反映した冷めたポップネスが頼もしい(コンテストでは1位かビリを狙っていたというが、下から数えて4位という微妙な結果に終わった)。

また、カヴァー曲のチョイスとアレンジの妙も彼らの金看板の1つ。今回のベスト盤でも、未発表の2曲(ソニー&シェールの“The Beat Goes On”、ビートルズの“Dear Prudence”)を始め、フランスのロックンロール・バンド、レ・シャ・ソヴァージュの“Twist À Saint Tropez”、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの“Dance To The Music”、リッチー・ヴァレンスの“La Bamba”が収録されており、どれもがオリジナルを大幅に改変しつつも、見落とされがちな原曲のユーモラスなエッセンスを見事前景化したような出来栄えとなっている。このあたり、隣国ドイツのノイエ・ドイチェ・ヴェレ系アーティストとも共振する知性と諧謔性を感じる。

『This Is Telex』収録曲“Dear Prudence”

 

ダンス・ミュージックを先取りした感性、細野晴臣ら日本勢との蜜月

今作をじっくり味わうと、冒頭に述べたような他ジャンルのエレクトロニック・ミュージックに与えた影響の大きさと共振も改めて見えてくる。シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノに通じるクールな電子音の処理、ニュー・ビートやエレクトロ・クラッシュを思わせるキッチュな即物性、ニュー・ディスコやフレンチ・エレクトロにおける醒めた享楽性、そうした要素がテレックスの作り出したトラックには先駆的要素として胚胎している様がわかる。再評価の盛り上がった98年にはカール・クレイグらが参加したリミックス盤『I Don’t Like Music』シリーズ(元々は88年の楽曲名だが、それにしてもスゴいタイトルだ)がリリースされており、後年のフロアと彼らの音楽の繫がりは思いの外強い。

98年作『I Don’t Like Music』収録曲“Moskow Diskow (Carl Craig Mix)”

また、ここ日本のアーティストで彼らを敬愛する者も多い。彼らと同じテクノ・ポップ第一世代の細野晴臣は、自らがプロデューサーを務めたコシミハルのアルバム『TUTU』(83年)において、“L’Amour Toujours”の日本語カヴァーを現地ブリュッセルのスタジオでメンバーを交えながら制作している。両者とも、三日間のセッションにおいてほとんど共通の言語で言葉を交わさずとも完璧な音楽的意思疎通ができたというのだから、そのセンス/手法においても深く通じ合うものがあったのだろう。加えて 、94年には日本オンリーのリミックス盤『Is Release A Humour? ~We Love Telex~』もリリースされており、リミキサーとして参加した小西康陽、砂原良徳、戸田誠司、ヤン富田、松前公高らがそれぞれ愛情あふれる仕事を聴かせている。

コシミハルの83年作『TUTU』収録曲“L’Amour Toujours”。『TUTU』は    
2021年6月12日(土)、〈RECORD STORE DAY〉にアナログが再発される
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