山内マリコの同名小説を岨手由貴子が映画化した「あのこは貴族」が、〈階層〉の異なる二人の女性(門脇麦と水原希子が演じていて素晴らしい)の新時代シスターフッド映画として評判を呼んでいる。劇伴を手掛けたのは渡邊琢磨。劇中で石橋静河演じるヴァイオリニストが演奏するカルテットのメイン・テーマが、主人公たちの人生に寄り添いながら変奏される。透明感と包容力のある音色が聴く者の心の襞にそっと触れてくる。音盤で聴いて驚いたのは、映画のシーンを思い出すこと以上に、この現実世界のどこかに生きている(と信じてます!)主人公たちに思いを馳せてしまうことだ。心の支えともなる1枚である。