10年ぶりのフル・アルバムとなる本作でまず顕著なのが、ブラック・ミュージックへの接近だ。以前からその要素はあったが、ブギーなトラック上でラップと般若心経を呟く冒頭曲や、ブラコン調の“銀河民”などを聴くと、これまでの楽曲を最高品質の素材でアヴァンに仕立てたハイファッションとするなら、今回はそこにリュクスでシルキーな風合いが加わったような印象だ。エレガントでタフなバンドの演奏も当然素晴らしく、ニューウェイヴ・ファンクな“黄金比”、人力ドラムンベース“紫電”でのクールな肉体性もたまらない。今回もメンバーが持ち寄った曲に椎名林檎が詞を付ける方式で、社会の閉塞と混迷を鋭く射貫く言葉が並ぶ。聴き手と連帯せんとする“緑酒”はとりわけ芸術的だ。