Page 3 / 4 1ページ目から読む

次の世代を良い方向に導かないといけない

――そのようなテーマは、いまのあなたにとって以前よりも自分自身に近いトピックになっていると思いますか?

「私は54歳なんだけど、この歳になると自分の視点というものが少し変わってくるんですよね。自分が死に近づいていくことがわかってくるし、自分の人生があと数十年だということを知っている。

それに自分が直面すると、世界の変化についてより考えるようになるし、そして自分が世界に何を残せるかをもっと意識するようになると思う。少なくとも私は、自分自身が動揺した状態でこの世を去りたくはない。私は、自分が生きているうちに誰かがより良い生活を楽しめる手助けをしたと実感したいと思う。自分の人生を価値のあるものにするためには、自分の次の世代を良い方向に導かないといけない。それができたとき、私は自分の人生に価値を見出せると思うんです」

――冒頭で私は、今作を聴いて希望を感じたと話しました。あなた自身は、これからの時代、そしてこれからの世代に対してどんな期待を抱いていますか? 今作についてすでに様々な声が寄せられていると思いますが、今作のリリースがもたらす波及的な効果について所感をお聞かせ願えますか?

「人種差別や性差別といった問題に言葉を与えると、それはそれらの問題を非難することに役立つと思う。そしてそれが、タブーとされてきた箱を開けることに繋がる。だから私は、それらに言葉を与えて語るということはとても重要なことだと思っています。

若い世代が私たちの後ろ姿、足跡を辿っている。彼らは、私たちよりも遥かに多くの情報へのアクセスを持っていますよね。だから彼らは、私たちの何倍も物事を理解できるし、これまで以上にいまの世の中を心配すべきだということを知ることができる。そういったトピックの多くが彼らの幸福と将来に関係しているのだから、私たちの世代に培ってしまったナンセンスが若い世代に今後容認されないよう、それについて話すことで、私たちを追ってくる新世代のアーティストがそれに気づく手助けができるんじゃないかな。

彼らは素晴らしいし、率直にものを言う。そして私たちの世代が地球を破壊しようとしているのを阻止しようとしてくれている存在だと思う。それはすごくエキサイティングだし、私は彼らに感謝しているんです。それを感じている彼らは、これからさまざまな変化を私たちに強いるのだろうと思う。

私は、それに対して政府が新しい答えを考える時代が来たことをうれしく思っているし、すごく楽しみにしている。いま私たちは、20年前とはまったく異なる世界に住んでいるんだから」

 

オリヴィア・ロドリゴやリナ・サワヤマ、新世代への思い

――3年前、アリス・バッグの“77”のミュージック・ビデオで彼女やキャスリーン・ハンナと共演されたことが大きな話題になりました。先駆者とも言える彼女たちとの共演は特別な体験だったと思います。一方で、チャーチズのローレン・メイベリーやサヴェージズのジェニー・ベスをはじめ、最近ではオリヴィア・ロドリゴやリナ・サワヤマも自身の作品に与えた影響を公言するなど、あなたの存在をロール・モデルとして挙げる若い世代のアーティストが絶えません。そうした声をあなた自身どう受け止めていますか? 

「本当に心打たれるし、心から光栄に思う。彼女たちの寛大さにも感謝ですね。みんな元気と才能でいっぱいのアーティストだし、彼女たちのような若者たちにバトンが渡せたことをうれしく思う」

アリス・バッグの2018年作『Blueprint』収録曲“77”。ミュージック・ビデオにシャーリー・マンソン、キャスリーン・ハンナ(ビキニ・キル)、アリソン・ウルフ(ブラットモービル)、セス・ボガートが出演

――彼女たちのような若い世代をどのように見つめているのか、ぜひ聞かせてください。

「私は、進化論という概念を深く信じているんだけれど、彼女たちのような若いアーティストたちを見ていると、私たちの世代よりも断然早い段階で進化を遂げていると感じる。それはすごくエキサイティングなことだと思う。人類が変化し、私たちをこの大惨事から救ってくれるという大きな信念を持たせてくれますね」

――若手のバンド、スタークローラーとも近いみたいですね?

「アロウ(・デ・ワイルド)のことは、彼女がオムツをしていたときから知っていて。彼女の母親と仕事をしたことがあって、彼女と友達だから、よく会いにいっていたんです。アロウの学校の発表会に行ったりもしていた。

アロウのことは大好き。心から愛している。天使みたいな子。ステージではワイルドだけど、すごく可愛いし、本当に人々を興奮させる素晴らしいパフォーマーでありミュージシャンだと思う。才能ある彼女の今後の行く末がすごく楽しみ」