©Nick Rutter

久石譲のミニマル・ミュージックがここに。

 ポピュラー音楽からクラシック音楽にベースを戻し、ミニマル・ミュージックの系譜を紡ぎ続ける作曲家、久石譲。新曲の発表はもちろん、独自の目線でミニマリストたちの楽曲を取り上げるコンサート・シリーズ〈MUSIC FUTURE〉、名門レーベルであるドイツ・グラモフォンとの独占契約など、その活躍から目が離せない人も多いだろう。

 そんな久石の奥深さと幅広さを堪能できるコンサート、〈ジャパニーズ・ミニマル・ミュージック ~オール・久石譲・プログラム~〉が、2024年秋に開催される。2台のマリンバのための“揺れ動く不安と夢の球体”(2014)、そして、アルバム『ヴィオリストを撃て』(2000)と『フェルメール&エッシャー』(2012)から抜粋された楽曲群──ミニマリスト・久石譲の魅力がぎゅっと詰まった選曲だ!

 2台のマリンバのための“揺れ動く不安と夢の球体”は、2本のギターのために書かれた同名作品が原曲。絶えず躍動するリズムが癖になる一方、突然の休符や転がり落ちる音階が、リスナーの予想を裏切ってくれる。アルバム『ヴィオリストを撃て』は、〈久石譲とはどんな作曲家なのか?〉を自ら打ち立てた、重要な1枚。鋭いリズムとメロディはもちろん、弦楽器とピアノ、打楽器といった各楽器の対比も鮮やかで印象的だ。本公演ではどんな演奏になるのだろうか? 『フェルメール&エッシャー』の収録曲は、展示〈フェルメール 光の王国展〉の楽曲提供をきっかけに生まれた。シンプルな旋律の裏で、リピートする音型。そのリピートの微妙なズレもまた、新たな旋律に聴こえてくる。視覚的にもワクワクする体験になるはずだ。

 クラシック~現代音楽の名プレイヤーが集う今回、お馴染みの“Summer”や“Kids Return”といった定番曲が、どうアレンジされるのかも気になるところ。アンサンブル・ノマドの活躍で知られ、オペラ「浜辺のアインシュタイン」音楽監督を務めたことも記憶に新しい中川賢一(ピアノ/音楽監督)。そして石上真由子(ヴァイオリン)、大石将紀(サックス)、畑中明香(パーカッション)らといった、総勢10名の名手たち。精緻なコントロールとアンサンブルが要求されるだろう久石の作品、その緊張感が楽しめるステージになりそうだ。

 今回のプログラムからは、久石譲という作曲家の奥行きが窺えるはず。彼のファンはもちろん、クラシックや現代音楽ファンの人々も、ぜひ足を運んでみてほしい。

 


LIVE INFORMATION
ジャパニーズ・ミニマル・ミュージック ~オール・久石譲・プログラム~

2024年10月12日(土)あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
開演:15:00
https://phoenixhall.jp/performance/2024/10/12/21846/

2024年11月10日(日)彩の国さいたま芸術劇場
開演:15:00
https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/100382/

■曲目
第1部
揺れ動く不安と夢の球体(two marimbas)
<アルバム「フェルメール&エッシャー」より> 
Muse-um(piano solo)Circus(piano trio)/Vertical lateral thinking(piano trio)/Sense of the light(piano quintet)/Encounter(piano quintet)

第2部
<アルバム「ヴィオリストを撃て」より>
794BDH/Kids Return/MKWAJU/LEMORE/TIRA-RIN/DA・MA・SHI・絵/Summer
*第2部はPAを使用した10名編成での演奏になります。

出演:中川賢一(ピアノ/音楽監督)/石上真由子、森岡聡(以上ヴァイオリン)/安達真理(ヴィオラ)/鈴木皓矢(チェロ)/長谷川順子(コントラバス)/大石将紀、井上ハルカ(以上サックス)/畑中明香、宮本妥子(以上打楽器)
*本公演に久石譲氏は出演いたしません
企画:あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール