ピュアな二人の恋物語をサントラ盤で、再び。
映画「サイレントラブ」はある出来事をきっかけに声を捨てた青年・蒼(あおい)と、不慮の事故で視力を失った音大生・美夏(みか)が運命的に出会って、静かに想いを紡いでいく姿を綴ったラヴ・ストーリー。主要な舞台は横浜(にある設定)の音楽大学で美夏がピアノ専攻のため、劇中にはリスト“愛の夢”を筆頭にベートーヴェン“悲愴”、ショパン“英雄”、ラヴェル“ソナチネ”、ドビュッシー“月の光”など誰もが耳にしたことのあるピアノの名曲が数多登場する。特にモーツァルトによる“きらきら星変奏曲”を美夏と悠真(※ピアノ科の非常勤講師で3人目の主人公)が連弾するシーンなどは見どころのひとつかもしれない。だがやはり、この透明な純愛物語をやさしく彩るのは、日本が誇る久石譲が手掛けたオリジナル楽曲たちである。
発売中のオリジナル・サウンドトラック盤には、ほぼストーリーに沿った順番で収録されているので、映画を観終わった後に(脚本も担当した内田英治監督書き下ろしのノベライズ文庫本などを片手に……)聴くと劇場での感動が鮮やかに甦るはずだ。例えば、[03]“静かな二人”……ステッキを手に独りで歩いてキャンパスに向かう美夏を、初めて蒼が静かに見守りながら密かにガードしつつ送り届ける場面の音楽、[04]“救いの音”…交差点でパニック発作に襲われ立ち尽くす美夏を、蒼がガムランボールの音色で導く場面、[05]“神の手”……美夏が両手で蒼の右手を包みこんで「私にとってあなたの手は神の手、いつもこの手が助けてくれた」と感謝の言葉を口にした時の、[07]“やさしい風の中”……3人で山中湖へドライブに行く車内で、[08]“歪み”……悠真に「君はあいつがどんな奴か知ってるのか? あいつはピアノ科の学生なんかじゃないんだぞ」と迫られ「どんな人でも関係ない、だって彼は神の手を持つ人だから……」と美夏、[09]“雨の中の激情”……美夏「待って! お願い、あおいさん待って……」、[12]“よごれた手”……警察による現場検証シーン、[13]“アクリル越しの二人”……収監場所での面会シーン、[14]“傷だらけの手”……蒼「本当の俺の手はずっと前から汚れていた……」と、どの楽曲もピアノレスなのが印象的。それだけに美夏の鼻歌をモティーフにしたピアノ演奏によるテーマ曲[18]“Silent”が鮮烈に響く。しかも演奏しているのが、今やシーンを超えて人気のピアニスト〈かてぃん〉こと角野隼斗なのも嬉しいサプライズだ。