長年デュオを組んでいるマとアックスによる40年振りのベートーヴェン再録音。二つの録音を聴き比べて感じるのは、二人の表現力と音色の多彩さの驚くほどの〈深化〉であり、それを圧倒的に〈進化〉したデジタル録音が最大漏らさず捉えきっていることである。例えば第1番序奏部、新盤は実にゆったりした演奏に聴こえるが、実際には旧盤よりも演奏時間は短い。その理由は表現の情報量が圧倒的に増えたからに他ならない。そして、快速調の部分は概して旧盤より演奏時間が長いが、音楽はより躍動しているように聴こえる。過度の対照が避けられたことで音楽は一層自然に流れている。二人のヴェテランの至芸がここにある。