初来日1981年から愛され続け、今年の来日を記念したアルバムが2種リリース!

 ヨーヨー・マほど日本の聴衆に愛され続けているチェロ奏者はいないだろう。初来日が26歳の1981年。当時からトレードマークの眼鏡と人柄が滲むような柔らかな微笑み、そして何より卓越した音楽性とチェロの美音、自在な演奏技巧により音楽ファンを魅了していた。30年来のデュオ・パートナー、キャスリン・ストットとの二人による来日も、2023年10月で14回になるというから驚きである。

YO-YO MA 『バッハ:無伴奏チェロ組曲全集(1983年作品)』 Sony Classical(2023)

 来日に合わせてヨーヨー・マの記念盤が2つ発売される。一つは彼が「毎朝練習するほど大事な曲」と呼んだチェロ音楽の“聖典”、バッハの無伴奏チェロ組曲全集の1983年第1回録音盤の40周年アニバーサリー企画である。彼は〈全集〉を20代、40代、60代の計3回録音しており、発売の度に大きな話題を提供してきたが、この第1回録音はLPとCDの切り替え時期に両フォーマットで発売され、同全集の代表的名盤として広く親しまれた。今回はLPの新装丁での復活と、日本独自企画でSACDハイブリッド盤(2023 年最新DSDマスタリング音源使用)をリリースするもの。筆者も久しぶりに聴き直し、瑞々しい感性が匂うような清新な音楽性、チェロ本来の魅力を謳歌するような美しい音色とイントネーション、難所を難所と感じさせない天衣無縫のテクニックに改めて感じ入った。知情意の高いレベルでの完璧なバランスは彼がジュリアード音楽院のあと、ハーバード大学で幅広い教養を学んだ賜物なのだろう。

YO-YO MA 『ベスト・オブ・ヨーヨー・マ』 Sony Classical(2023)

 もう一つは来日記念の『ベスト・オブ・ヨーヨー・マ』(日本独自企画)。これは、これから彼の芸術に触れる方にとって絶好の入門盤である。音楽史的にはバッハに始まり公演曲目のフランクまで、20世紀以降はクラシックだけでなくピアソラのタンゴ、アメリカーナ、モリコーネやJ.ウィリアムズの映画音楽まで15曲が近年の録音を含めて収められているからだ。日常生活の潤いに何かチェロのCDをほしい、という方にも真っ先にお薦めしたい魅力あふれる1枚だ。

 


LIVE INFORMATION
ヨーヨー・マ&キャサリン・ストット デュオリサイタル2023

2023年10月25日(水)愛知県芸術劇場コンサートホール
開演:18:45

2023年10月27日(金)東寺 金堂前(屋外)
開演:18:30

2023年10月28日(土)所沢市民文化センター ミューズ アークホール
開演:19:00

2023年10月29日(日)サントリーホール 大ホール
開演:19:00

2023年10月31日(火)福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)
開演:19:00

https://www.yo-yo-ma-japantour.jp/