──「サマー・オブ・ソウル」はとんでもない演奏だらけです。監督から見て何が際立っていてましたか。そして何を取り上げるかどうやって決めましたか?
「自宅で映像素材と暮らしていたんですよ。ぶっ飛ぶような映像に出くわした時、その都度、開いた口が塞がりませんでした。特にマヘリアとメイヴィスを観た瞬間（伝説のゴスペル歌手マヘリア・ジャクソンとメイヴィス・ステイプルが“Take My Hand, Precious Lord”を歌う強烈なデュオ）、私はつんのめってこんな有様です。『これはすごい』ってね。いわゆる〈シャンパン・ソウル〉と呼ばれているフィフス・ディメンションとか。彼らはとてもエレガントです。そしてグラディス・ナイト&ザ・ピップスの“悲しいうわさ”の演奏は、フェスの中でもっともクールな演奏の一つで、彼らは、モータウンが表現した格式と洗練を見せてくれました。しかし、私は非常に厳しい取り決めを私自身と交わしていました。つまり映画は二時間以内でなければならない、だから最終編集版に盛り込めないものがたくさんあり、そのままにするのは忍びなかったですね」
──格別に感動的な瞬間といえば?
「ジャズ・ミュージシャンのハービー・マンの演奏に感動しました。そしてソニー・シャーロックという演奏家が登場しますが、ミュージシャンシップに対する彼のアプローチの何が興味深いのかというと、当時のジャズ評論家に評判の悪かったフリージャズという彼の考えです。彼が無調になる瞬間があるのですが、それはおそらく、現在私たちがEDMとして知っていることの、その先駆にもっとも近づいた瞬間です。それはテクスチュアーやあるフィーリングなのです。ハーモニーやメロディというよりもね」
──演奏とともに、フェスに参加した人たちへのぐっとくるインタビューがあります。たとえばムサ・ジャクソンですが。彼はこの映画に何をもたらしたのでしょうか、そしてどうやって彼を見つけましたか。
「単純にソーシャルメディアを使ってフェスにいた人たちを探しましたが、ムサ・ジャクソンはドンピシャでした。彼と出会った時、彼は55歳でしたが、フェスは、4歳だった彼の最初の記憶だったと教えてくれました。フィフス・ディメンションが好きで彼らの衣装や歌、他にも細々としたことを説明してくれました。私たちが彼に映像を見せると、彼はそんなことを期待していなかったのですが、涙があふれてきたのです。というのも、彼は『ああ。こうして子供の私と再び会えるんだ』と感じていたのです。そのときでした。私が『これは単にクールなコンサートではないんだ、私たちは人々の記憶を彼らに返しているんだ』と気がついたのは」
──最後に、もし〈サマー・オブ・ソウル2021〉の出演者リストをつくるとしたら誰を⼊れますか。
「ザ・ルーツはア・トライブ・コールド・クエストと⼀緒に出るでしょう。リアーナもリストに。メーガン・ザ・スタリオンも――彼⼥は今、信じられない⼈気ぶりです。アイズレー・ブラザーズも観たいし、オーストラリアからのお気に⼊りのアーティストのひとり、ハイエイタス・カイヨーテも。そして、デイヴ・シャペルに全体の司会をしてもらい、盛り上げてもらいます」
PROFILE: アミール・“クエストラブ”・トンプソン（Ahmir “Questlove” Thompson）
世界的ドラマー、DJ、音楽プロデューサー、料理の起業家、著述家。ヒップ・ホップ・グループ、ザ・ルーツの司令塔。プロデューサーとしてもディアンジェロからJay-Zまでと多彩なアーティストを手掛けており、延べ5度のグラミー賞を受賞。現在、スライ・ストーンを描く新作長編ドキュメンタリーの監督を手掛けている。
CINEMA INFORMATION
「サマー・オブ・ソウル（あるいは、革命がテレビ放映されなかった時）」
原題：Summer of Soul (…Or, When The Revolution Could Not Be Televised)
監督：アミール・“クエストラブ”・トンプソン
出演：スティーヴィー・ワンダー／B.B.キング／フィフス・ディメンション／ステイプル・シンガーズ／マヘリア・ジャクソン／ハービー・マン／デイヴィッド・ラフィン／グラディス・ナイト&ザ・ピップス／スライ&ザ・ファミリー・ストーン／モンゴ・サンタマリア／ソニー・シャーロック／アビー・リンカーン／マックス・ローチ／ヒュー・マセケラ／ニーナ・シモン／ほか
配給：ウォルト・ディズニー・ジャパン（2021年 アメリカ 118分）
2021年8月27日（金）TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開!
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.
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