[緊急ワイド]発掘!洋楽隠れ名盤
知る人ぞ知る名盤の復刻シリーズから、タワレコ・スタッフが推しの一枚をチョイス!

 ソニーの洋楽部門が、60~70年代に発表されたロック/シンガー・ソングライター/ソウル/ファンクのアルバムを中心に、隠れた名盤や現在入手が困難になっている定番作を廉価でリイシューするシリーズ〈発掘!洋楽隠れ名盤 Hidden Gems in 60/70s〉をスタート! 3月12日に、第1弾としてビリー・ジョエル、アルバート・ハモンド、アイズレー・ブラザーズ、MFSBなどの全39作が店頭に並びました。アレックス・チルトンがビッグ・スター以前に在籍していたことで知られるボックス・トップスのファースト・アルバム『The Letter / Neon Rainbow』(67年)、ブルースを基調にアフリカやカリブなどさまざまな音楽を混ぜるタジ・マハールの71年作『Happy Just To Be Like I Am』、フィラデルフィアのヴォーカル・グループであるデルフォニックスの70年作『The Delfonics』など、日本初CD化の5タイトルも含んでいます。

 今回は、タワーレコードのスタッフ12名が、39作から推しの一枚を選んで、コメントを寄稿。読んで、試聴して……あなたの〈宝石〉の如きアルバムもきっと見つかるはず!! *bounce編集部


 

THE BYRDS 『Fifth Dimension』 Columbia/ソニー(1966)

出会いは90年、ニューエスト・モデルの8cmシングル“雑種天国”のジャケットにおける元ネタというので気になって手にした一枚。穏やかなフォーク・ロックの表題曲から始まり、カントリー・ロックの原型“Mr. Spaceman”、ソリッドで荒々しいギター・ソロから始まる“Eight Miles High”はこのアルバムを印象付ける名曲。メイン・ソングライターであったジーン・クラークが脱退、前作まで数曲含まれていたボブ・ディランの曲も一切なしという、バンドとして転換期にあたる作品であり、サイケデリック・ムーヴメントに放たれた実験的なサウンドは、後のロック・バンドに多大な影響を与えることになる。 *神戸店・寺本将巳

 

THE INNOCENCE 『The Innocence』 Kama Sutra/ソニー(1967)

フィル・スペクター門下だったピーター・アンダース&ヴィニ・ポンシアは60年代アメリカで数多くの素晴らしいポップス作品を生み出し、山下達郎氏も虜にしています。そんな彼らがカーマ・スートラの社長アーティ・リップと組んだイノセンス名義での唯一の作品。ほんわかポップス“There’s Got To Be A Word (Beyond The Meaning Of Love)”から名曲“All I Ask”、“Do You Believe In Magic”のカヴァーまでドリーミーなソフト・ロック/バブルガム・ポップの超名盤! 2人の作品では、トレイドウィンズの『Excursions』(67年)や『Anders & Poncia Album』(69年)と並んで外せない名作! *町田店・岩谷隼人

 

CAPTAIN BEEFHEART & HIS MAGIC BAND 『Safe As Milk』 Buddah/ソニー(1967)

アヴァンギャルド・ロックの大教典『Trout Mask Replica』(69年)で知られるビーフハート隊長のデビュー作。13thフロア・エレヴェーターズ〜初期のゆらゆら帝国味も感じるガレージ・サイケ“Zig Zag Wanderer”、特濃ファズが効きまくったギター・リフが印象的な“Dropout Boogie”、ライ・クーダーがギターで参加した“Abba Zaba”、美しきソウル・バラード“I’m Glad”など、多様な音楽センスと確かなソングライティングが奇才を構成していたことに感服! ルーツであるブルースをベースに、ジャズやR&Bの要素も盛り込んだ隊長の原点は、すでに別格で破格でした。 *オンライン事業統括部・巻本拓也

 

THE DELFONICS 『La La Means I Love You』 Philly Groove/ソニー(1968)

特大ヒットとなった表題曲で知られるフィリー・ソウルの名盤が日本初CD化! 個人的な出会いは山下達郎のライヴ盤『JOY -TATSURO YAMASHITA LIVE-』。〈このフィラデルフィアの名曲を~〉というトークのあとに始まるサウンドに一気に虜に。その後オリジナルを聴き、オーケストレーションの豊かさにさらに虜に。そこから作曲家トム・ベルの存在を知り、曲を聴き……とタツローさんを起点に自分の音楽体験が広がる原点になった作品。アップテンポな“Hurt So Bad”“Losing You”、甘い“Alfie”、表題曲への流れが特にツボ。かつてあった豊かな時代に想いを馳せ、心躍らせる名盤です! *横浜ビブレ店・松本創太

 

SLY & THE FAMILY STONE 『Stand!』 Epic/ソニー(1969)

ジャケから伝わるサイケデリックな雰囲気と迸る熱気。冒頭を飾る表題曲からキャッチーなメロディーとコーラス、ホーンが炸裂し、渾然一体となって迫る! メッセージ性の強い“Don’t Call Me Nigger, Whitey”、ウッドストックでのステージも伝説的な“I Want To Take You Higher”、平和と平等を歌った“Everyday People”など聴きどころたっぷり。ヴォーカルが次々と替わることも、楽曲をより立体的に、そして個性的に輝かせている。まさにスライの天才性と人種・性別混合グループのなせる業か……。常に時代を先取りしてきたジャズの帝王マイルス・デイヴィスにまで影響を与えたのも納得。 *久留米店・山本祐介

 

AL KOOPER, SHUGGIE OTIS 『Kooper Session 』 Columbia/ソニー(1969)

ディランの〈追憶のハイウェイ61〉から5年後。風格も出てきたアル・クーパーの横でジャケに写る、幼さを残した少年が本作の主人公、シュギー・オーティスだ。当時弱冠15歳。アルとマイク・ブルームフィールドとの共演から生まれた名作『Super Session』(68年)の続編で、マイクの後任として指名された天才少年の名に相応しいブルース・ギターを奏でている。“Bury My Body”の後半のギターもいいが、やっぱり“Shuggie’s Old Time Dee-Di-Lee-Di-Leet-Deet Slide Boogie”と“Shuggie’s Shuffle”。若さと玄人さが同居するようなプレイが最高です。ギター好きの未体験の方はぜひ。 *東浦店・熊谷 祥