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『How Long Do You Think It’s Gonna Last?』の参加アーティストたち
Collage by Graham Tolbert

様々な人々が交差する〈コミュニティー・ミュージック〉

──ニュー・アルバム『How Long Do You Think It’s Gonna Last?』は、あなたやジャスティンの個別の活動、あるいは〈PEOPLEでの活動……すなわち〈コミュニティー・ミュージック〉という思想、アイデアが全て地続きになっていることを改めて証明しうる作品だと思いました。ある意味で、このアルバムはあなたとジャスティンのこの15~20年もの活動の集大成ではないかと。

※編集部注 〈37d03d〉とも。ジャスティン・ヴァーノンとアーロン&ブライス・デスナーが主導するコレクティヴ/プロジェクト/レーベルで、フェスティヴァルを主催するとともに、音楽や映像などのコンテンツを配信するプラットフォームも運営。2020年8月にレーベルとしてのコンピレーション・アルバム『37d03d MixTape01』をリリース

「このアルバムを、これまでのコラボレーションや探求、友情と結びつけているのは、本質を突いていると思う。このアルバムは、楽曲と同じくらい、コミュニティーや友情を象徴している。長い間、築き上げてきたものが実を結んだと言える。

ビッグ・レッド・マシーンの1作目も、今作のようなものを作ろうとしていたんだ。様々な声のコミュニティーであり、キャラクターは異なるけど、共通したテーマがある、という。でも、前作はジャスティンがほとんどの曲を歌っている。それに対して今回のほうがよりコミュニティー作品という感じがするし、このプロジェクトで自分たちが思い描いていたものに近い。

これはいつも言うことなんだけど、これまでやってきた全てのことがあったからこそ、この作品が生まれた。テイラー・スウィフトとの仕事もそう。あの前にやってきたことがあったからこそ、できたと思っている」

『How Long Do You Think It’s Gonna Last?』収録曲“Renegade (Feat. Taylor Swift)”

──今回のアルバムの作業はコロナ禍以前の2019年からスタートしているそうですね。どのようなきっかけから始まり、どのように進んでいったのか教えてください。最初は、このセカンド・アルバムに対してどのようなヴィジョンを描いていたのでしょうか?

「ビッグ・レッド・マシーンは本当に楽しいプロジェクトで、1作目を作って、演奏をして、多くの刺激をもらった。その勢いのまま僕自身、音楽を作り続けていて、ビッグ・レッド・マシーンの曲がまだまだ自分から出てくると感じたんだ。

2018年5月にジャスティンとブラッド・クックとドラマーのJT・ベイツがNY北部にある僕のスタジオに来てくれて、そこで彼らに新しいアイデアを聴かせて、みんなで即興で肉付けした。ジャスティンがいろいろ歌ってくれてね。それが今作の種蒔きの瞬間だ。そこから完成するまでには長い時間がかかった。で、コロナ禍になる直前にジャスティンとテキサスで会って、そこで多くの曲の構想が出来上がった。それによって、完成させるまでに必要な勢いが生まれた。

テイラーには、出来た曲を聴いてもらって、感想と励ましを山のようにもらったよ。そのあたりから、いろんな友達が、僕が完成に近づきつつある楽曲群に取り組んでいることを感知して、ロビン・ペックノールドやアナイス・ミッチェルといった友人たちが仲間に入ってきて、アイデアを出してくれて、歌を提供してくれた。自然な成り行きだったよ。そうしているうちに、〈出来たかも〉ってなって(笑)。信じられなかったし、凄くワクワクした」

『How Long Do You Think It’s Gonna Last?』収録曲“Latter Days (Feat. Anaïs Mitchell)”

──曲はあなたとジャスティンとの共作が軸にはなっていますが、少しずつ異なる組み合わせで作られています。様々なアーティストと一つのアルバムで共作するのは作業上も大変だったかと思いますが、どのように進めていったのでしょうか? 最初からそれを想定していたのでしょうか?

「様々なアーティストとの共作は最初から念頭にあって、それを形にすることができて良かった。制作の初期段階は、僕とジャスティンで進めて、その後しばらく僕が一人で取り組んで、次第に人とも作業を共有するようになった、という流れだった。正直、一人での作業もかなり長い間あったけど、いろんな人とのコラボレーションという、このプロジェクトの指針となっているところに最終的に行き着くことができた。多くの友人たちが、大事なアイデアを出してくれたよ」

──フリート・フォクシーズのロビン(“Phoenix”)、ベン・ハワードとディス・イズ・ザ・キット(“June’s A River”)、シャロン・ヴァン・エッテンとリサ・ハニガンとマイ・ブライテスト・ダイヤモンド(“Hutch”)、そしてテイラー・スウィフト(“Birch”と“Renegade”)……。このアルバムには本当に多彩なゲストが参加していて、あなた方がさながら人間交差点のように多くのアーティストとつながっていることに改めて気付かされます。

「ああ。以前にも仕事をしたことがある人たちばかりで、お互い慣れ親しんだ者同士で会話ができて、自分の音楽頭脳の一部というか、家族の一員の人たちなんだ。例えばリサはこれまでにも多くの作品を一緒に作ってきた。シャロンはナショナル以外で初めて僕を信頼してプロデューサーに起用してくれたんだ。テイラーも今となっては、何でもお願いできるような人の一人で、いつも熱意でもって応えてくれる。ロビンはずっと前から一緒にやりたいと思っていた人で、彼に関しては今回初めて声をかける形になった。

『How Long Do You Think It’s Gonna Last?』収録曲“Phoenix (Feat. Fleet Foxes & Anaïs Mitchell)”

正直、物凄く考え抜いて選ぶわけではなく、出来た曲にもよるんだ。例えばアルバムには複数のドラマーが参加してくれていて、それぞれスキルが違う。だから大抵は、どんな曲かで〈これはJTにお願いしよう〉〈これはビッグ・シーフのジェイムズ(・クリヴチェニア)だ〉って決めてお願いをする。大掛かりなマスタープランがあるわけじゃなくて、自然な形でつながった家族のようなものなんだよ」