
Photo by Marisa Gesualdi
ディアハンターやビッグ・シーフは次世代をインスパイアしている
――カヴァーする側・される側、両方に名前があるのがブリーダーズ。計3組が彼女たちの曲を選んでいます。4ADに長く所属しているという点もさることながら、どういったことがブリーダーズを重要な存在にしていると思いますか?
「彼女たち自身の作品はもちろん、ピクシーズからブリーダーズへの流れもそうだし、フロントパーソンのキム・ディールは世代を代表する天才だと思う。最新アルバム『All Nerve』(2018年)も前を向いた力強い作品だった。
決して安全牌でいくのではなく、未だに挑戦をし続け、それでいてしっかりと素晴らしい作品を作り上げるのが彼女たちなんだよ。いつでもなんでも自分たちが好きなことができる、というポジションを自分たちで確立したのがブリーダーズ。それが出来るのは、しっかりクォリティー・コントロールができるバンドだからだと思う」
――参加者の中には、4ADと契約して間もないマリア・サマーヴィルやスペンサー(Spencer.)の名前もあります。このような若い世代にとって、レーベルのレガシーはどれくらい重みを持っていると感じますか?
「かなりの重みを持っていると思う。若いアーティストたちは、古典的な作品を少しずつ見つけ出しているからね。あと、4ADのアーティストに限らず、20代くらいの若いアーティストたちに誰が好きかと訊くと、コクトー・ツインズやブリーダーズ、レーベルは違うけどスロウダイヴなんかの名前が出てくる。〈なぜ君たちがそれを知っているんだ?〉と思うけど、ある意味、彼らはトレンドでもあるんだろう。
トレンドとして扱って欲しくないという気持ちもあるよ。でも、だからこそ全ての世代の人々と繋がることが出来ているんだと思う。デヴィッド・ボウイ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、カン、クラフトワークなんかもそう。音楽に関わっていく上で通る道なんだ。
今ではディアハンターやビッグ・シーフもそういう存在になり、次の世代にインスピレーションを与えるようになったと感じる。例えば2010~2020年代に現れたアーティストの中には、ディアハンターのブラッドフォード・コックスにハマっている人も多い。そしてブラッドフォードのようなアーティストは、一昔前の世代のバンドやアーティストにハマっていたわけだし、彼らがハマっていた音楽として若い世代がそのサウンドを知る。そうやってレガシーが引き継がれているんだと思うよ。
現役時代にそこまでビッグにならなかったアーティストも、次世代をインスパイアできる素晴らしさを持っていたら、それは受け継がれていくんじゃないかな」
オリジナルが完璧過ぎて、傷つけてしまう危険を伴う曲だってあった
――アルバム・タイトルはコクトー・ツインズの曲“Cherry-Coloured Funk”(90年)の歌詞に因んでいます。これも無数の候補があったと思いますが、なぜこのフレーズを選んだのですか?
「みんなでランダムに歌詞を選んで、タイトルのアイデアを出し合ったんだけど、僕がそれをランダムに選んだだけ。これといった特別な理由はないんだ(笑)」
――では、この作品をコンパイルしてみて、レーベルについて浮き彫りにされたこと、何か改めて気付いたことはありましたか?
「気付いたのは、このインタビューもそうだし、自分が思った以上に多くの人がこの作品について語りたいと思ってくれていること。この作品はシンプルで小規模なちょっとしたエクササイズみたいな感覚だったからね。〈これぞ4AD!〉とか〈4ADのベストはこれだ!〉みたいな作品は作りたくなかった。本当に、ランダムで流れに任せた作品を試しに作ってみただけなんだ。だから想像以上に注目されていることに、いい意味で驚いているんだよ。
そして、正直僕には悲観的な部分があって、このコンピレーションがここまで素晴らしいものに仕上がるなんて思っていなかった。だからこそ本当にハッピーなサプライズになったんだ。中には、オリジナルの出来が完璧過ぎて、カヴァーをするとそれを傷つけてしまう危険を伴う曲だってあった。〈なぜあえてカヴァーさせるのか?〉と思われる心配も抱いていたんだ。でもいい意味でその心配をアーティストが裏切り、驚かせてくれたんだよ。
もちろん、いいカヴァーに仕上がるだろうと初めから期待ができたケースもあったけど、何が起こるかまったく見当がつかないものも幾つかあった。例えばオルダス・ハーディングによるディアハンターのカヴァーとかね。〈まさかこうくるとは〉というサプライズは、本当にいいものだよ」



