コロナという災禍は作曲家と演奏者の仲も引き裂いている。今回の新作に対する藤倉大の姿勢はその災禍に真っ向立ち向かうものだ。2枚組という大ボリュームもさる事ながら、大オーケストラからエレキギター、リコーダー、ホルン、琴、三味線、尺八などなど……様々な楽器を用いているだけでなく、奏者とZoomなどのオンライン・システムを活用し綿密なコミュニケーションをとり続け、新たな音を導き出している。それは伝統的な楽器からまったく新しい響きを引き出したものであり、邦楽に、そして現代音楽に新たな可能性を付与するものに他ならない。コロナ禍でも進化を止めない作曲家の軌跡がここにある。