
絶対に行かなくちゃいけない
――では、そのアルバムの話に移ります。まず『JUICYY』というタイトルの意味は?
プー「美味しくなったPIGGSをどうぞ召し上がってください、っていう意味です。Yが2つあるのは、KINCHANのメンバーカラーがイエローなので、Yが増えたっていうのがあって」
BAN-BAN「あと、〈Yes〉とか〈Yell〉とか肯定的な英単語の頭文字にYが多いらしくて、〈もっと美味しいよ〉みたいな、そういうポジティヴな意味も込められてます」
――新曲が6つ収録されているので、それぞれ紹介いただけますか。まずは“NAKED BORN NAKED DIE”から。
KIN「はい。私は9月2日のライヴのアンコールに、サプライズでこの1曲だけブタのマスクを着けて登場させていただいて。記憶がないくらい緊張したんですけど、初めてのステージでやったので凄く印象深い曲です」
プー「終わった後、泣いてたもんね」
KIN「私はダンスも何もやったことがなくて、この曲はダンスがけっこう難しくて、振入れの時から泣いちゃったりとか(笑)。いまとなっては〈そんなこともあったな〉って感じなんですけど。気持ちの面で〈私が急に1人で入って大丈夫かな〉みたいな不安もあったんですけど、歌う時は曲名にある通り、〈もうPIGGSで、裸で生まれて裸で死ぬんだ〉っていう気持ちでやりました」
――レコーディングはお披露目よりも前?
KIN「前です」
プー「加入してすぐアルバムを進めてました。レコーディングと練習を並行して」
――初めて録った曲はどれでした?
KIN「 “NAKED BORN NAKED DIE”と“NOT PIG”の2曲を最初に録りました。すっごい緊張して肩が上がって(笑)。Ryanさんに〈ここはこういうふうに歌ったらいいよ〉って教えていただきながら、どうにかやりました」
BAN-BAN「KINCHANが入る前に仮で録っていたものと聴き比べたら、色が増えた感じがあって凄く良いな~って思いました」
プー「ピュアな声がね、〈新色!〉って感じだった(笑)」
――新体制の最初にこの曲を選んだのは?
プー「タイトル通り〈裸で生まれて裸で死ぬぜ!〉っていう決意というか、〈始まり〉の曲なのでこれにしました。例えば“NOT PIG”だと〈覚悟〉の曲なんで、5人の始まりとはまた違うのかなって。Ryanもメンバーのことがさらにわかってきたし、ロマンティストなのでメンバーの心情に立って書いてくれるっていうか、マインド的にはメンバーだと思ってるんで、何なら(笑)。だからRyanの曲は歌いやすいですね」
――続く“危険ぐらいがちょうどいい”はCHIYO-Pさんのシャウトが強力に映える作りですね。
CHIYO「はい、叫びます。えっと、この曲はダンスも曲調もハードで強い感じになっていて、歌詞も攻撃的な感じでカッコイイなって思って。自分の武器としてるものを存分に出させていただけてるので、自分でも凄い好きです」
BAN-BAN「いままででいちばん高いじゃん」
CHIYO「そうかも。顔を真っ赤にしながらレコーディングしました(笑)」
――Ryanさんも求めるものが高くなってきた感じがしますね。あと“Beat Crazy”に続いて、エロティックなメタファーみたいな歌詞がRyanさんっぽいなって(笑)。
CHIYO「そう、凄い歌詞ですよね(笑)」
プー「欲求不満なのかな(笑)。でも〈その下の もっと下の そうそこにカオスをくれよ〉って笑いながら書いてそう」
SHELL「〈イイの出来た~〉って」

――そして3曲目が、さっきもお話に出た“NOT PIG”ですね。
プー「“NOT PIG”はこの10年というか、私がプー・ルイになってから生きてきたすべてが詰まっていて。別に作詞してないですけど(笑)、もう自分で書いたぐらいの思いが乗ってます。これを歌うってことは、口に出した場所に絶対に行かなくちゃいけないので、そういう意味でも気が引き締まるというか、PIGGSにしか似合わない曲だなって」
――冒頭のピアノの感じからグッときます。
プー「〈今はどんな味かな?〉ですからね。私的には〈恩仇クーデター〉って言葉が気に入ってて、意味は想像通りでいいんですけど(笑)」
――はい(笑)。
プー「私の恩返しって、別にその人にへいこらすることじゃないんで。自分がカッコ良くなって〈お前もここまで来たか〉って思わせるのが恩返しだと思うので、言い方は攻撃的ですけど、そのための決意みたいなのが入ってるなって」
――振付けも“primal.”を思わせるもので。
プー「そうです。でも、ただやるんじゃなくて、歌詞の意味にそのまま当てはまっているし、いまだからできるものですね。昔だったら〈BiSが好きだから〉〈あの頃の感じがやりたいから〉みたいな気持ちだったと思うんですけど、いまは私も振付けの(カミヤ)サキちゃんもBiSに対して整理がついたからこそやれるのかなと思って。メンバーだけじゃなくて、サキちゃんも、RyanもMETTYも、全員の気持ちが入っているっていう感じです。まあ、私と一緒にやる人たちしかできない曲ですよね(笑)。十字架を共に背負った人が(笑)」
――重みがあります。で、一転して“カッシーニ”は爽やかでポップな雰囲気で。
SHELL「いままでPIGGSになかった感じの曲で新鮮だし、振付けもみんなでやるところが多くてめっちゃ好きですね。歌詞も小さな頃から大人になったいままでの自分の気持ちを歌ってくれてると思ってて。自分は2番のサビ歌ってるんですけど、〈思いはこぼれまくって〉しまうほうなんで(笑)、気持ちをちゃんと乗せて歌えます。歌詞を特に大事にしたいって思ってる曲です」
プー「“カッシーニ”はライヴでの多幸感が凄いです。想像するのが、夕暮れ時の野音とか開放的な空間でやりたいなって」
SHELL「空があって。みんなで手を振ってね」
プー「いまはみんながライヴハウスで後ろまでサイリウムを振ってくれてて、その光景も凄くキレイだし」
――〈カッシーニ〉というのは土星探査機の名前ですよね。
プー「土星から見た地球の画を見てRyanが思いついたらしくて、いろんな悩みはあるけど、広い目で見たら小っちゃいものだし、逆に大きい地球の中でこうして出会って一緒に悩んでいけるのは素敵なことなんだよ、っていうのを書いたっていうのを言ってました」
SHELL「めっちゃいいな」
――カッシーニは地球に帰ってこれないので、そういう儚さもちょっと感じました。
BAN-BAN「切ない」
プー「うんうん、どこか切なさはあるかも。曲には」
――その優しい雰囲気は、続いての“夢を見させて”にも通じますね。
CHIYO「これもPIGGSがやってきてない曲調で、熱い曲っていうよりは、気持ちがスッて耳に入ってきて身体に浸透するみたいな優しい曲です。歌詞は〈17歳の少女が命をあきらめていた〉っていう冒頭から、ちょうど自分が病んじゃってたり、学校に通ってなかったりした時の感情とリンクするところが多くて、凄く気持ちが込めやすくて好きですね。誰しもが感じたことのある気持ちが聴きやすく曲になっているなって思います」
――CHIYO-Pさんの経験を踏まえて書かれた部分もあるのかもしれませんね。
プー「Ryanに聞いてはないですけど、そういうことやってくるやつなんで(笑)。曲はけっこう前からあって、やっとやれるって感じです」
BAN-BAN「私は“夢を見させて”の気持ちが自分の経験と重ならなくて、最初は歌に気持ちを込めにくかったんですけど、サキさんが振付けの参考にしたドラマを教えてくれて。『ユーフォリア/EUPHORIA』っていう、似たような生きづらい子たちが出会うっていう物語で、それを踏まえて聴いたら、優しくて切ないなかにも愛があって、凄く心に染みるな~って思って。そんな曲です」