Christian McBride, Warren Wolf, Steve Wilson, Peter Martin, Carl Allen
©David Salafia

ヴィレッジ・ヴァンガードの奇跡を記録した、新たな名作

 現代のグルーヴ・マスター、クリスチャン・マクブライド(ベース)は、2009年からニューヨーク・ジャズの殿堂のジャズ・クラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードで毎年12月に、2週間のレジデント・ギグを務めている。2014年に前半の1週間は、当時のメイン・バンドだったトリオで出演、ライヴ録音を敢行しアルバム『Live At The Village Vanguard』を2015年にリリース、グラミー賞に輝いた。この年最後の1週間は、クインテット〈Inside Straight〉で出演。このギグも実は録音されており、7年の時を経て、その全貌が明らかになったのが本作だ。

CHRISTIAN McBRIDE & INSIDE STRAIGHT 『Live At The Village Vanguard』 Mack Avenue/キングインターナショナル(2021)

 〈Inside Straight〉は、2007年にマクブライドが、アコースティック・ジャズへの回帰として結成。2000年に彼が教鞭をとったジャズ・キャンプで、出会った才能豊かなヴィボラフォン・プレイヤー、ウォーレン・ウルフをフィーチャーし、信頼する旧友のカール・アレン(ドラムス)、スティーヴ・ウィルソン(アルトサックス)、エリック・リード(ピアノ)を召集して、ヴァンガードで〈Inside Straight〉の最初のギグを行う。2008年から本格的にワーキング・バンドとして始動し、9月にスタジオに入りレコーディング。マクブライドのマック・アヴェニュー移籍第1作として『Kind Of Brown』が、発表された。2013年にはピアノをピーター・マーティンにスイッチし、第2作『People Music』をリリース。ツアーを巡りレパートリーを熟成させ、録音された第3作が、このアルバムだ。セットリストは、1、2作からとウォーレン・ウルフのデビュー・アルバムからセレクトされ、どの曲も、オリジナルよりもかなり長い白熱のインタープレイが展開される。まさに、幾多のライヴの名作の舞台となった、ヴィレッジ・ヴァンガードの奇跡、ステージと観客が一体となって起きる瞬間が克明にドキュメントされている。21世紀も『Live At The Village Vanguard』のマジックは、輝き続けている。